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観測者に見守られる屋敷で生きることにした ~静は世界を支配しない~  作者: 灯乃しんわ
第三章 導かれし者たちの出会い

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第六話 静謐なる館と祈りの行き先

その人物は穏やかな声で話しかけてきた。

「こんにちは、こちらに何か御用でしょうか?」


腰まで届くほどの黒髪が柔らかく風に揺れている。

遠目には誰もが「綺麗な女性」だと思った。

整った顔立ち、柔らかな雰囲気、そして静かな佇まい。


だが――声を聞いて印象が変わる。

線の細い、少し幼さの残る男性の声


互いに一瞬、視線が交わされる。

驚きと、少しの戸惑い


そんな中、一歩前に出たのは

冒険者パーティ《ルミナ・ヴェール》のリーダーだった。


「冒険者パーティ《ルミナ・ヴェール》のアリアと申します」

背筋を伸ばし、丁寧に頭を下げる。


「私たちは依頼を受け、この空白地帯の探索を行っておりました。

 その途中でこちらのお屋敷を見つけ……

 差し支えなければ、少しお話を伺えればと」


それに続き他の面々も簡単に名乗る。


フィアはにこやかに手を振り

リーナとミレイアは静かに一礼し

セリナは胸元で祈るように手を組み、控えめに頭を下げた。


(……この方……)


セリナは視線を上げた瞬間、言葉を失いかけた


(この方から……それに、足元の子猫からも……

 神聖な気配が……?どういう事なの……?)


疑問は確信に近い違和感を伴って胸に残る。

教会で長年過ごしてきたセリナにはわかる。

この気配は、ただの人間のものではない。


その視線に気づいたわけでもなく

黒髪の青年――

静は少し考えるように頷いた。


「なるほど……そのようなご用件でしたか」


そして、柔らかく微笑む。


「立ち話もなんですし

 どうぞ、中へお入りください」


◆◆◆


屋敷の分厚い扉が、内側へと静かに開いた瞬間

五人は、揃って足を止めた。


外観は彼女たちがよく知る貴族の館と変わらない。

石造りの壁、重厚な扉、威圧感すら漂う佇まい。


――中もきっと同じだと思っていた。


しかし最初に告げられたのは、奇妙な言葉だった。


「ここで靴を脱いでください。代わりの履き物を用意しています」


何でもないことのように言われ、床を見る。

石でも木でもない、柔らかさのある不思議な感触。

しかも驚くほど清潔だった。

塵一つ落ちていない。


戸惑いながらも靴を脱ぎ、室内履きに履き替える。


――その時点で、予想は静かに崩れ始めていた。


一歩、屋内へ

まず、広さに息を呑む

派手さはどこにもない

豪奢な装飾も、金の彫刻もない


しかし、照明は柔らかく、空気は澄み

室内は落ち着いた色合いで整えられていた。


生活のしやすさと洗練が自然に共存している空間。


「……落ち着く、わね」

ミレイアがゆっくりと周囲を見回す


「貴族の館とは……作りが違う?」


「ええ、でも……長居したくなるわね」

リーナは、無意識に肩の力を抜いて

緊張が自然と解けていく


「なんだか居心地いいね♪」

フィアは尻尾を小さく揺らす


「不思議ね……警戒しろと言われたら、逆に緩んでしまいそう」

アリアも、戸惑ったように苦笑する


ただ一人、セリナだけは呟いていた。

「……教会よりも、清浄な雰囲気……

 神気が満ちている……ここは、聖域……?」


静はその反応に

どこか納得したように微笑んだ。


この館は威圧するためでも、誇示するためでもない。

ただ――

快適に穏やかに住むための場所だ。


◆◆◆


リビングに案内され、席に着く。


「まずはお疲れでしょうから」

そう言って差し出されたのは、見慣れない飲み物と焼き菓子


「お茶でも飲んで、ゆっくりしましょう」


「……すごく、いい匂い」

フィアが身を乗り出す。


「おいしそう……!」


ツキはいつの間にか彼女の足元へ行き

おやつを分けてもらって機嫌よく喉を鳴らしていた。

フィアが撫でると、嬉しそうに目を細める。


場が落ち着いた頃、アリアが静かに口を開く。

「実は……この地を訪れた理由ですが」


機密依頼

本来は伏せるつもりだった内容


しかし、この場の空気、静の纏う気配に触れ、考えを改めた。

この人なら、信頼できる。


「……私たちは、この空白地帯に関わる『異変』を調査しています」

詳しい内容が語られる。


支配エリアコアの再出現、教会と王国の警戒

そしてこの場所への派遣


リーナ、ミレイア、フィアは一瞬驚くが――

すぐに、内心で納得していた。


この場所なら

この人なら


セリナもまた、初めて聞く話に驚きながら思う。

(……私も神託に導かれて……ここへ来た)


静は話を聞きながら、内心で首を傾げていた。


(えっと……知らないところで、なんだか大事になってる?)

(まあ……別に、誰かに迷惑かけてるわけでもないしなぁ……)


そんな中――


セリナは、深く息を吸い、立ち上がった。


「……静様」

その声には、迷いがなかった。


聖女見習いとして、神託を受けられなかったこと。

ただ一つだけ聞こえた言葉を信じ、ここまで来たこと。


「この場所に足を踏み入れた時……

私は、確かに"祈りが届く感覚"を覚えました」


胸に手を当て続ける。


「ここは……私にとって、教会のような場所です」


そして、静を見つめ――

「静様……私を……

 ここに置いていただけませんか?」


「私に出来ることは、何でもします。

 どうか……お願いします」


祈りは静かに差し出された。


静は、少し驚いたように目を瞬かせる。

予想していなかった申し出だった。


その答えは――まだ、語られない。

だが、セリナの目には、確かな決意が宿っていた。


世界は――また少しだけ、動き始めている。

静かに、だが確実に。


この出会いが、何をもたらすのか

まだ誰も知らない。


だが、確かなことが一つある。

この場所は――

一人だけの場所ではなくなろうとしている。

イメージソングを作成してみました。

もし興味を持って頂けましたら、曲を聴きながら読んでくれたら嬉しいです。

物語の方も順調に書き進めていますので宜しくお願い致します。

https://suno.com/@10monoshin8


カクコムでも先行掲載しています。

もし続きが気になって読んでいただける方が居たら下記のページでお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/822139842423376578

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