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観測者に見守られる屋敷で生きることにした ~静は世界を支配しない~  作者: 灯乃しんわ
第三章 導かれし者たちの出会い

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第五話 導かれし運命の邂逅

霞を抜けた先に一本の道が現れた。


踏み固められた土の感触

迷いなく続くその道は、誰かが意図して整えたものだと一目で分かる。

雑草も生えておらず、定期的に手入れされている証拠だ。


「……道、だね」


フィアが少しだけ声を潜める。

「空白地帯に、こんなはっきりした道……」


「警戒した方がいいな」


アリアはそう言いながらも、剣を抜くことはしなかった。

周囲に満ちる空気があまりにも穏やかだったからだ。

殺気も、悪意も、何も感じられない。


道沿いに進むにつれ、視界の先に塀が見えてきた。

その内側には果実をたわわに実らせた木々、枝の一部は堀を越え、外へと伸びている。

熟した果実の香りが、風に乗って届いてくる。


「……ねえ、あれ見て」


フィアが指をさす。

「完全に『住んでる』よね? この感じ」


「魔力が、整えられています」

リーナが静かに告げる。


「人為的だけど、無理がない。土地と調和している……そんな流れです」


「空気が……澄んでいますね」


ミレイアが小さく息を吸い、驚いたように目を瞬かせた。

「私のいたエルフの森よりも……深く、静か」


やがて塀の切れ目に大きな門が現れた。その奥には三階建てほどの屋敷。

畑や倉庫らしき建物が、生活の気配を伴って並んでいる。

どれも手入れが行き届いており、放棄された場所ではないことがわかる。


そして――屋敷の入り口付近に人影があった。


「……人?」

思わず、誰かが呟いた。


◆◆◆


その少し前

静は屋敷の中で、テーブルの上を整えていた。


「……初めてだしな」


小さく呟き、ステータスを操作する。

《再購入》

アイテムボックスの中から果実や野菜が光と共に消え

代わりに現れたのは、見慣れた日本のジュースとクッキー


「この仕組みほんと助かるよな……」


異世界の収穫物がこうして別の形で戻ってくる。

とても不思議な、当たり前の循環。

経済的な仕組みはよくわからないが、便利なことに変わりはない。


足元ではツキが尻尾を揺らしながら、そわそわしていた。


「もうすぐ来るって分かってるの?」


ツキは耳をぴくりと動かし――


「にゃぁ」

と、楽しそうに鳴く。


怖がっている様子はない。むしろ期待しているような――

そんな気配


静は苦笑しマップを確認した。

光点は、もうすぐそこまで来ている。


「この世界に来て、初めて会う人達だもんな」


「……ちょっと緊張するよな」

ツキに話しかけると――


「にゃぁ?」

首を傾げるその仕草に、肩の力が抜けた。

そうだ、ツキは楽しみにしている。

なら自分も楽しみにすればいい。


「よし」

静は深呼吸し扉へ向かう。


「屋敷の前で、待とうか」


そして、入り口前。近づいてくるのは、五人組。

静は無意識のうちに、一人一人を目で追っていた。


背の高い、男装の麗人風剣士。凛とした佇まいで、剣を携えている。


軽装で三角の耳と尻尾を揺らす人懐っこそうな獣人の女性。

動きが軽やかで、斥候だろうか。


銀髪に小麦色の肌、軽装のローブを纏ったダークエルフ。

魔法使いの雰囲気がある。


緑髪で若草色のローブを着こむ柔らかな雰囲気を纏うエルフ。回復役だろうか。


そして――

金色の髪を陽光に輝かせる、清浄な雰囲気の女性。

どこか、神聖な印象を受ける。


「……女性五人での旅人?」

それとも冒険者か


「久しぶりの、人だな……」


足元のツキを見る。

「な、ツキ?」


「にゃ、にゃ、にゃ~」

楽しそうな鳴き声に、静は小さく笑った。


◆◆◆


セリナ達の側でも視線が交わされていた。


「屋敷前に居る人……若い女の人?」

フィアが首を傾げる。


「遠目だと、完全に女性に見えるんだけど」


「……不思議だな」

アリアが眉をひそめる。


「敵意がないのは分かる。けど……」


「魔力の感じが、人間のそれと少し違います」

リーナが静かに続けた。


「濁りがない……澄みすぎている、というか」


「ええ」

ミレイアも頷く


「人の気配なのに、森や聖域に近い」


セリナは、屋敷と――

その人物から目を離さなかった。


「……神聖な気配が、はっきりと感じられます」


静かな確信を込めて言う。

「私のいた教会よりも……ずっと、深い」


それは、まだ名も知らぬ観測者――

女神ルーナフィリスの気配だった。

屋敷全体にその加護が満ちている。


距離が静かに交わる。

静は一歩前に出て、柔らかく頭を下げた。


「こんにちは」

穏やかな声でそう告げる。


「こちらに何か御用でしょうか?」

その声は、優しく、そして少し緊張を含んでいた。


セリナは、その瞬間、確信した。

――この人だ


自分が探していた答えが、ここにある。

運命は音もなく重なり合った。


――導かれし邂逅は確かに始まった。


世界は――また少しだけ動き始めている。


静かに、だが確実に

これから何が起きるのか、まだ誰も知らない。


確かなことが一つある。

この出会いは――

きっと、何かを変える。

イメージソングを作成してみました。

もし興味を持って頂けましたら、曲を聴きながら読んでくれたら嬉しいです。

物語の方も順調に書き進めていますので宜しくお願い致します。

https://suno.com/@10monoshin8


カクコムでも先行掲載しています。

もし続きが気になって読んでいただける方が居たら下記のページでお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/822139842423376578

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