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閑話 関係者達の思いと静かな真実

【教会中央監察局・ルミエール王国サイド】


重苦しい空気が、会議室を満たしていた。

教会中央監察局、ルミエール王国

そして一部の王立研究機関から選ばれた関係者たちが集い

緊急の報告に耳を傾けている。


石造りの会議室は広く、天井も高い。

今はその広さが逆に

沈黙の重さを際立たせていた。


本来、空白地帯とは――

数百年前、神々の禁忌に触れた王国が滅ぼされ

その痕跡ごと封じられた土地である。


そこに存在していた数々の支配エリアコアは、すべて消滅したと考えられてきた。

それが常識だった。

歴史書にもそう記されており、誰もそれを疑わなかった。


だが――


「観測結果を更新します」

一人の監察官が緊張した声で告げる。

彼の手は、わずかに震えている。


「消滅したとされていた支配エリアコアが、再出現しています。

 確認された数は……複数」


室内がざわめいた。


映し出された大陸地図

その中央にある薄雲に覆われた空白地帯の中に

あり得ない光点が浮かび上がっている。


一つ、二つ、三つ……数えるごとに、驚きの声が漏れる。


「さらに問題なのは、その接続先です」

光点のいくつかは、一本の太い線で結ばれていた。

まるで何かに統べられているかのように。


「すべてが、同一の上位支配エリアコアへと接続されています」


――未確認勢力

――観測者案件


静かに、だが確実に勢力を広げる支配エリア

その中心には特異な反応を示す

"上位支配エリアコア"が存在していた。


「攻撃性は?」

年配の司祭が問う。


「確認されていません。支配エリアの性質は……中立」


誰かが息を呑む。

本来、支配エリアの拡張は周囲への干渉を伴う。

他の勢力を排除し、自らの領域を主張する。

それが通常のプロセスだ。


だが、この未確認勢力は

まるで"拒まない"かのように領域を広げていた。

侵略でも征服でもなく、ただ静かに存在している。


「……加えて」

別の監察官が続ける。


「空白地帯内部には、グレーアウトした支配エリアコアが多数存在しています。

 状態は『停止中』」


消えたはずの遺産

眠り続けるコア

それらを束ねるかのように現れた未知の中心


「正確な位置は?」


「把握できていません。停止中のため、表示は大雑把です。

上位コアに接続されていても、コアそのものの座標は秘匿されています」


沈黙が落ちた。


誰もが理解していた。これは偶然ではない。

何か、大きな意図が働いている。


「……南部」

地図の端を指し示し、誰かが呟く。


「未確認勢力の支配エリアが、海へ向かって伸びています」

ざわめきが一層強まる。


空白地帯と海

その接続はこれまで想定されていなかった。

もし、海へと到達すれば、交易路に影響が出る可能性もある。


「冒険者パーティーには、どう伝える?」


「現状維持。探索と観測のみ。深入りは禁止」


「だが、もし接触した場合は?」


「……状況に応じて判断を委ねる」


関係者たちは、終わりの見えない議論へと再び沈み込んでいった。


◆◆◆


【静サイド】

朝食後に食器を片付け終えた静は、足元にいるツキを見下ろして微笑んだ。

「ツキ、今日も散歩に行こうか」


昨日、新たに接続した支配エリアコア

そこを経由すれば、さらに南へと足を延ばせる。


地図を確認したところ、海まではまだ距離があるが、少しずつ近づいている。


「無理はしないで、行けるところまで。

 お腹が空いたら、すぐ戻ろう」


「にゃ〜」

応えるように、ツキが小さく鳴く。

その尾は楽しそうに揺れていた。


転移

視界が切り替わり、深い森の中へと足を踏み入れる。

湿り気を帯びた空気。

深緑の葉と土が混じった、静かな森の香りが頬を撫でた。

鳥のさえずりも聞こえ、どこか懐かしい雰囲気がある。


「……今日も、静かだね」

オートマッピングを確認しながら、静は首を傾げる。


「遠くには反応があるのに、近くには何もいない?」


本来であれば、空白地帯には魔獣が跋扈しているはずだった。

だが、この周辺だけは不自然なほど穏やかだ。

まるで、何かに守られているかのように……


――理由は……ある


観測者の加護が宿る屋敷

その中で暮らし続けた影響により、ツキは幼体でありながら

すでに成体並みの神獣としての"格"を備え始めていた。


魔獣たちは本能的にそれを察知し、近づかない。

上位の存在を前に、下位の存在は自然と距離を取る。

それが、自然の摂理だ。


その理由を、ひとりと一匹は知らない。


「海まで行けたらさ」

静は、何気ない調子で言った。

「美味しい魚、食べさせてあげたいんだ」


「にゃぁ」

ツキは嬉しそうに鳴き、先へ先へと歩き出す。

尻尾を立てて、誇らしげに。


世界の均衡が揺らぎ、各地で警戒が強まっていることも

教会や王国が、頭を悩ませ続けていることも

彼らはまったく自覚がないまま、楽しそうである。


ただ穏やかに

ただ、ささやかな願いを胸に


その歩みが、やがて多くの運命と交差することを――

誰も知らなかった。


世界は――また少しだけ動き始めている。


静かに、だが確実に

出会いは、もうすぐそこまで来ている。

カクコムでも先行掲載しています。


もし続きが気になって読んでいただける方が居たら下記のページでお願いします。


https://kakuyomu.jp/works/822139842423376578

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