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一章 2話 アストラ

エアコンで風邪をひきました……みなさんも夏は気を付けてください……



『わたしのこえを とりもどしてください』



地面には小さく可愛い丸文字でそう書かれていた。



「……ん?」



助けた少女に手を取られ、温かく柔らかい手の感触に一瞬心が躍ったのもつかの間、地面に書かれた字の意図を推し量る。



声を取り戻す、つまり、この少女はきっと声が出ないのだ。先天性か後天性かはわからないが――おそらく”とりもどして”というからには後天性なのだろうが――失声症を患っているのだろう。

失声症の原因は病気やストレスだと聞くが、俺は医者でもカウンセラーでもなんでもない。



だから、どうすることもできないのだが……



「えっと……悪いんだけど……俺ただの冒険者で……君の病気はお医者さんに見てもらった方がいいと思うんだ。あぁ、街までなら送っていくよ。」



ついでにさっき倒した銀閃蛇(レイピアスネーク)も、ギルドに討伐報告して報酬を貰おう、エンカウントできたのはこの子のおかげだし、医者にかかる料金は少しくらい出してあげなきゃな。あとはちょっと奮発して美味しいものを……



そんな風に報酬の使い道について思案してると、彼女は怒ったように俺の服の裾を掴み、頬を膨らませていた。



そのまま、彼女の手から魔力が沸き上がるのを感じる。



あれ、そういえばこの子、喋れないなら詠唱も使わずにどうやって魔法を……



瞬間、突風が吹き、体が浮き上がるのを感じる。



「へ、うわ、わぁぁぁぁ!」



無詠唱魔法、聞いたことはあるが実際に使い手を目にしたのは初めてだった。


魔法自体は俺でも少しなら扱える。

この世界では詠唱さえ行うことができれば簡単な魔法であればだれでも扱うことができるのだ。

といっても戦闘に仕えるようなレベルではなく、火種をつくったり


なんでも、かなり魔法を極めたものにしか扱えないとかで、始まりの街周辺をウロチョロしてるだけの俺には到底縁のない話だった。



なんでこの年齢で無詠唱魔法を、とか、どうしてこんな街の周辺に、とかは置いといてこのレベルの魔法使いを怒らせるのはまずい!!



「わ、わかった!ごめん、手伝うから!!声取り戻そう!だから降ろして!!!!」



そう応えると少女はパァっと顔を輝かせて魔法を解除する。



上空に浮き上がった体はそのまま背中から落下し、地面に強めに打ち付ける。



「いっ……えぇと、とりあえず……俺の名前はイオ。剣士ジョブのイオ。君は?」



少女はさっきの枝をもう一度拾い上げ、地面に『アストラ』と書く。



「アストラ……えっと、声を取り戻すって言ったって、俺には何にもできないと思うんだけ……いや、あの、できるだけ頑張るよ!」



途中まで言葉を紡いだところで少女がもう一度手を前に突き出してきたため、慌てて取り繕う。



アストラはその様子を見て満足そうに頷き、更に文字を書き足す。



『これは のろいによるもの』

『かいじゅを てつだってほしい』



呪い。あまり有名ではないが聞いたことがある。



都市伝説程度でしかないが、この世界には呪術師というジョブもあるらしい。

形態は様々だが、呪術書の詠唱を使うほかに、呪具を用いるものや幽霊(アストラル)を意図的に利用したり、するものもあるらしい。



そいつらが用いるのが”呪い”魔法との違いは魔法が魔力を元とするのに対し、呪術は発動者の生命力や強い念なんかを利用する……だとか。



俺が知ってるのはそれくらいだ。それくらい、呪いについてはまだわかっていないことが多いらしい。



勿論、解呪の方法なんて簡単にわかるはずもなくて……



「……もしかして、」



もしかしてだけど、これって、かなり面倒くさいことに首を突っ込んでしまったのでは……??



アストラは「よろしくね」とでも言うようににっこりと笑った。

【キャラクター設定(一部)】


イオ

・黒髪黒目18歳(童顔なので15歳くらいに見られがち) 身長174cm

・ボロボロの薄いプレートアーマー+緑の薄汚れたマント+革靴

・職業:剣士(ランクE) 特殊スキル:未習得


アストラ

・銀髪碧眼??歳(12歳程度に見える) 身長149cm

・白い大きなローブ+白い大きな魔女帽+エナメルの茶色いロングブーツ

・職業:魔法使い(ランク?) 特殊スキル:???

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