プロローグ 星降る花畑で
始めまして、花咲響です。
長編が書いてみたくなって、自己満で上げていくことにしました。
読んでくださる方が一人でもいてくださったら嬉しいです(^▽^)
息を吸う。
そして、目を開く。
大きく息を吐いて、眼前に広がる星空に手を伸ばす。
週に一回だけ許される、自分だけの特別な時間。
青い、星の菫の花畑で、満天の星空を見上げる至福のひととき。
幼いころに家族を失い、天涯孤独の身となってから、うまく村のみんなと馴染むことができず、週に一度こうして一人での時間を過ごしているのだ。
そのまま思い切って仰向けに倒れこみ、鼻を掠める柔らかな匂いを目一杯吸い込む。
「ん、ふふ。」
頬に触れる花びらがくすぐったく、つい声が漏れてしまう。
星を掴もうとして、伸ばした手を握ったり、開いたりしてみる。
しばらくそうしていたら、手の向こうにある星がキラリと輝いた。
気のせいかな、なんて思って目をこすって再度星空を見上げる。
それは見間違いなんかじゃなくて、周りの星までもが光を強めていた。
その光はそのまま流れ星のように、まっすぐ尾を引いて少しづつ大きくなっていき、周りの星も、それぞれ違った色で夜空に薄く線を引いていく。
大量の流れ星、流星群とでもいえばいいのだろうか。暗い空を埋め尽くすような星の集まり。枝垂れるように流れている星々は今まで見たどんな星空より魅力的だった。
――あぁ、なんて綺麗なんだろう。
刹那、強い光が視界を覆いつくした。
衝撃。轟音。熱。体の痛み。
体の右側が痛い、強い光でクラクラする。
動かない体を無理やり動かして、ふらふらと立ち上がる。右肩から出血している。
青い花畑はいつの間にか赤く変わっていた。
周囲には大小さまざまなクレーターがたくさんできていて、花畑は見る影もなく、クレーターの周りには炎が立ち昇っている。
「……え?」
何が起こったのかわからなかった。星が、降ってきた?地上に?どうして?
とりあえず、村の方に向かって駆け出す。
ここから村まではそう遠くない。なら、村に戻れば肩の傷も治療してもらえるかもしれない。
炎の中を突っ切って最短ルートで村まで戻る。
森の中で聞こえたのは、動物たちの悲鳴。
村に近づくにつれて、その中に明らかに人の声が混ざっていく。
「…すけて、」
「……だれか、…つい」
「……あついよ、助けて!」
森を抜けると、そこは地獄だった。
花畑の比にならないくらいの、炎の海。
家は燃える前に溶けていて、瓦礫に押しつぶされた人の血と混ざりあってドロドロになっている。
ほぼすべての人が四肢のどこかを欠損し、胴体が泣き別れになっている人もいる。
生きている人も少なく、全員出血量が酷くてもう助からないことが一目で分かった。
「なんだ、これ」
地獄としかいいようがなかった。
迫りくる炎に挑むような馬鹿な真似はせずに、来た道を引き返して逃げる、逃げる。
走りながら服を破いて肩に強く巻き付け、軽く止血する。
「……痛い、けど」
きっと俺はおかしかった。
――だって、あんなにショッキングな光景を見た後だというのに頭にこびりついて離れないのは、星が降る、あの空だったのだから。