一 僕の友達
ケンタは僕の同級生だ。入学してからずっと同じクラス。
頭がよくて、いくら僕が勉強しても全くかなわない。
ただ、テストが近くなると、だいたいケンタの顔や腕には、青紫のあざがあってとても心配になった。
「顔、痛くないの?」
どちらかと言えば、色白のハンサムだから、余計にあざが目立った。
「別に平気だよ」
ケンタは算数の教科書を読みながら返事をする。
その素っ気ないケンタにもやっとして、その教科書を取り上げた。
「誰かに叩かれたの?」
「俺が悪いんだ。ほっといてくれよ」
早く返せと僕をあおった。
「先生に話したほうがいいんじゃない?」
教科書を返しつつ、説得してみた。
「俺は将来、医者になりたいんだ。そのために、忙しいお母さんがいろいろと協力してくれている。だから、怠けた俺をお母さんが怒るのもしょうがないさ」
「でもやりすぎじゃない?」
「そんな心配している暇があったらお前も勉強しろ」
「うっ」
ケンタに軽く横っ腹をつつかれた。
ちょうどそのとき授業開始のチャイムが鳴った。
僕は自分の席に戻ったけど、やっぱりケンタのことが気がかりで、先生が教室に入ってくるまで、何かいい方法はないかと考えていた。