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サラシ屋  作者: 雨宮 瑞樹


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大波と解放

 それから、一週間後。

 到底騒ぎはまだまだ続くだろうと思っていたが、意外にも早く落ち着くことになり、私と灰本と玄関で向き合い、頭を下げる形となっていた。

「お世話になりました」

「もう来るなよ」

 相変わらず素直じゃない挨拶が返ってくるが、もう慣れている。顔を上げて、さらりと受け流しながら、急転直下この状況に至ったモヤモヤが立ち込めていた。

 

 それは、三日前の突然起きた大きな波。日本中を駆け巡った、既婚有名アイドルの三股スキャンダル。

 とんでもなくくだらないどうでもいいニュースが、あれだけの社会的大問題が、簡単に埋もれてしまっていた。

 私は茫然とその状況を眺めていたが、灰本は何の驚きもないという。

「早く世間の話題から消し去りたい事件は、大きな事件で覆い隠す。それが鉄則だ。政治絡みの案件は、特に」

「それって……情報操作と同じじゃないですか!」

 沸々とわいてくる怒りを握りしめていうと、灰本は大きくため息をついた。

「情報を出すタイミングの問題で、操作とはいない。それが、あいつらの正当化理由だ。マスコミなんてそうんなもんさ。公正に政治が執り行われているかどうかを国民へ情報提供するための大事な役割があるといわれているのが、実態はこれだ。マスコミは、政治家の犬に成り下がっている。それは、警察もしかり。ご機嫌を損ねぬようにしなかれば、抹殺されるのはこちら側。いかに忖度するかが肝要だ」

「信じられない。 そんなこと許されるのか。そんなことをやっているから、世の中はおかしくなるのだ。世の中腐ってる」

 ギリギリ奥歯で怒りをかみしめていると、灰本は淡々といった。

 そうさ。腐ってるんだよ、と。

 もう見飽きて、怒りなんて忘れたさと、付け加えていた。

「まぁ、そうはいっても大久保はただじゃすまない。お前の本来の目的は達成されたことには変わりはない。今回は、それで納得するしかない。というか、納得しろ」

 これ以上の深追いは、厳禁だ。灰本は私を射貫くような瞳をよこしてくる。

 たしかにそうかもしれない。今回の私の目的は、友人たちを苦しめた犯人へ鉄槌を下すこと。それが、一応は遂げられたのだ。灰本が言う通りだ。唇を噛んで頷く選択肢以外残されていなかった。

 

 その記憶を追い払いながら思う。大久保の件について警察が動くと聞いたときは、これで目の前に立ち込めていた煙は流されて、視界良好になると思っていた。しかし、またすぐに違う場所から出火して、色々な場所から煙が立ち込めてくる。

 私の性格は、白か黒か、はっきりさせたい質だ。故に、諦めず行動し、努力さえしていれば、何かしら答えは出てくれるものだと信じていた。けれど、今回の件で、思い知らされた。

 世の中はっきりとした答えが出て、心がすっきりするような問題は、実はほとんどないのかもしれない、と。

 らしくない答えだと思う。でも、それが現実のような気がする。

 私はそんな思いを追い払うように灰本へ微笑んだ。

「報酬の支払い、後日きっちりさせていただきますので」

 灰本はぎゅっと眉を寄せていた。

「報酬はいらん。貧乏学生に集るほど、金に困っていない。それに」

 灰本は言いかけて、口を閉じてしまう。視線も、徐々に落ちていく。私は首を傾げて、視線の先にある場所を辿る。私の腕に向かっているようだった。

 私は、気づかれない程度に溜息をつく。口は非常に悪いが、なんだかんだ言って気にしているのだろう。

 そんな必要なんて、全くないというのに。

 灰本は、本当は優しい。時折、感じていたことが、ここで世話になって確かになったことだ。

 私は、荷物を抱えてほほ笑む。

「ともかく、また連絡します。こういうことは、きっちりしておかないと。では」

 向けられてくる変な気遣いを断ち切るように、部屋から出た。


 


 

 



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