89話
「この辺りのはずなんだけど…」
「剛志さーん!こっちですよー!」
愛菜さん達について行くと、体育館近くの渡り廊下辺りで父さんの声が聞こえた。
「あ、いたいた、場所取りありがとうございます」
「いえいえ」
2つの家族が座るため、なかなか広い範囲でレジャーシートが引かれていた。
「直樹も明里ちゃんもお疲れ様、いっぱい食べて昼からも頑張ってね」
「ありがとうございます!」
「うん」
ウチの両親と明里さんの両親が向かい合うように座り、俺と明里さんが隣同士に座った。
「直樹くんも翔子さんも浩史さんも遠慮なく食べて下さいね」
そう言ってレジャーシートにお弁当を広げる愛菜さん。「ありがとうございます!」「良かったらウチのもどうぞ」「では失礼して」
前は中華料理を食べさせてもらったけど、今回はザ運動会って感じの内容だった。
唐揚げや卵焼き、ウインナーにスパゲッティ。ラップで個包装されたおにぎり。別の容器にフルーツまである。
実に美味しそうだ…
「口に合うか分からないけれど、明里ちゃんも良かったら食べてみてね」
そう言ってウチの母さんもレジャーシートにお弁当を広げたけど、こっちもザ運動会な内容だった。
唐揚げ、卵焼き、アスパラベーコン、ウインナー
「いいんですか!?ぜひいただきます!」
「では!いただきます!」
母さんの音頭で始まった合同のお弁当会。
お腹が減っていた俺はひとまず母さんが作った唐揚げを食べることにした。
明里さんもまずはウチの唐揚げを食べてみるみたいだ。
「!美味しいです!」
「よかったわー、ふふ、いっぱい食べてね」
…口にあったみたいで良かった。自分が作ったわけじゃないけど、ちょっとドキドキしてしまった。
俺も愛菜さんのお弁当食べてみよう。
ここはやっぱり唐揚げからだと思い、「いただきます」と言って1つ唐揚げを取った。
冷めているけどべちゃついてない。味付けもウチのとは違う味でこれはこれで凄く美味しい。
「どうかな?」
「凄く美味しいです」
「よかったわ、その唐揚げ昔から明里の好物なのよ」
ウチのとは違って甘めの味付けでいくらでも食べれそうだ。
「ちょっと!ママ!あんまり直樹に変な事言わないでよ!」
「あら別に良いじゃないの」
「女の子が唐揚げが好きなんてなんか恥ずかしいし…」
親子でワイワイしているので、卵焼きもいただいてみる。
一口食べるとふわふわした食感とダシの感じが強く感じる…うわぁ…うんま!
「ど、どうかな?」
なにやら心配そうな様子で明里さんが聞いて来た。
「めちゃくちゃ美味しいよ、この味好きだな」
「えへへ、よかった!」
俺の返事を聞いた明里さんは心配そうな顔から嬉しそうに照れた顔になっていた。
「良かったわね明里!朝早くから頑張った甲斐があったじゃない」
ニヤニヤしている愛菜さん。
…もしかして…
「明里さんが作ったの?」
「う、うん、良かったら直樹に食べて欲しいなぁと思って…」
くぅ…可愛い…この可愛さたまりませんよ!
「あらー、直樹愛されてるわねー、ね?浩史さん」
「うんうん、微笑ましいね、私も1つもらおうかな……」
父さんも卵焼きを1つ取り口に運んだ。
「とても美味しいよ、普段から料理してるのかい?」
「は、はい!ママに教えてもらいながら一緒に」
「良い娘さんですね」
「自慢の娘ですからね」
そう言って笑い合っている親達。
その後も和やかな雰囲気でお昼ご飯を食べ終わった。
昼ごはんを食べ終わってゆっくりしていると、話題は借り物競走の話になっていた。
「明里このあと借り物競走だったわよね?」
愛菜さんと明里さんが話している。
「そうだよ」
「変わったものが多いとは聞いてるけど、どんなお題が出るの?」
「えっと、去年は確か…2000円札、身長2メートル以上の人、双子…こんな感じの絶妙に見つからない感じのお題だった気がする」
…なんだったっけ?特に覚えてないなぁ。
「はは、これはゴールまで時間がかかるね」
明里さん達の話を聞いていた父さんが混ざった。
「そうなんです、一応制限時間もあって、時間内にゴールできなかったらそこで終わりなんです。だから借り物競走って出れるの3年生だけなんですよ!」
「ゴールまで行ける子はそこそこいるのかい?」
「1人3つお題があって、去年は全部クリアできた人はほとんどいなかったと思います」
「3つ!?はは、そりゃ頑張らないとね」
「はい!なんとか頑張ってゴールまで行きたいです!」
「…明里、直樹くん、たしか昼休憩1時20分までだったよな?時間大丈夫かい?」
剛志さんが腕時計を明里さんに見せて、俺たちにそう聞いて来た。
「え!もうこんな時間!?テント戻らなきゃ!」
「あと5分だね」
そう言って立ち上がる俺たち。
「お昼ご飯ありがとうございます、おいしかったです」
愛菜さんにお礼を言い頭を下げる。
「いえいえ、一緒に食べれて良かったわ、明里、直樹くん昼からも頑張ってね!」
「楽しんでらっしゃいよ2人とも」
「いってらっしゃい」
「…頑張れよ」
「「いってきます!」」
4人に見送られて俺と明里さんはテントへと向かった。




