82話
「頑張れよー!」
「行けー!」
「コケるなー!」
今年で最後というのは他のクラスも同じな訳で、各クラス声を出して応援している。
「いいねいいね!なんかテンション上がってくるよな!頑張れよーー!!!」
俺の前に座っている瑛太が、周りの熱気に当てられたのかギラギラとした目で大きな声援を送っている。
そうこうしているうちに涼也がスタートラインに着いた。
「行けー涼也ー!」
「頑張れよー」
〝パン“
スタートの合図と同時に走り出した涼也。
いい感じの走り出しで加速していき、他のクラスの人達との差がどんどん離れていく。
速いな…さすがサッカー部。
1、2年のテントの前を走っている時、「キャーキャー」と黄色い歓声も飛び交っていた。
…涼也って何気にイケメンだからね。
そして涼也は差をキープしたまま1位でゴールした。
「よーしよしよし!さすが涼也だ!」
「はは、瑛太も頑張らないとね」
そろそろ瑛太の番になるから応援しておく。
「おうよ!涼也に続くぜ!」
順調に進んでいき、瑛太がスタートラインに並んだ。
次は俺の番か、緊張してきた…
〝パン“
瑛太もなかなかのスタートを切ったのだが、他のクラスの人達も速い。
終盤にまで僅差で2位だった瑛太が、ゴールギリギリで抜き1位でゴールした。
…2人とも1位かー、やばい、緊張がやばい、やばい。
俺の番になってスタートラインに立つと、ドキドキとうるさいぐらいに心臓が脈を打っている。
「頑張れよー」
「頼んだぞー」
涼也と瑛太の声が遠く聞こえた。
〝位置について…よーい…パン“
まずい!出遅れた!
緊張からかスタートが遅れて、最下位になってしまった。
焦って追いつこうとするけど、上手くスピードが乗らない。
「頑張ってー」
その時、明里さんの声が聞こえた気がした。
…こんなんじゃダメだ!このまま明里さんにかっこ悪い所を見せる訳にはいかない!
焦っていた頭の中が、霧が晴れるようにクリアになった。
いつも通りに走れば勝てる!
落ち着けば一気にトップスピードまで上げる。
2人を追い抜き、3年の中ではそこそこ速いであろう1位にもあっという間に追いついた。
保護者用テント、生徒達がいるテントからのどよめきが耳に入る。
追いつかれたことに気づいた1位の人もさらにスピードを上げたようだけど、軽く追い抜いた。
そのままゴールテープを切った俺は1位になった。
膝に手を着き、息を整えているとグラウンド全体に響く歓声が上がってびっくりした。
〝最下位からのぶっちぎり1位ー!!“と実況が興奮している。
…意識してた訳じゃないけど、シュチュエーション的には最高な結果になっちゃったな。
走り終わった人が並ぶ場所に行くと涼也や瑛太、他のクラスメイトたちも興奮したように集まってきた。
「出だし焦ったけどさすが直樹!」
「速過ぎだろ!」
「クソほどかっけーじゃん!」
「俺も最初焦っちゃって、とりあえず勝ててよかったよ」
「いやいや、とりあえずなんてもんじゃ無いって!」
「ヤバすぎ!」
「おーい!まだ競技中だぞー!大人しく座っとけー!」
いつまでもワイワイしていたため先生に怒られてしまった。
「「「「「「はーい」」」」」」
元の場所に皆んな戻って行ったとき、最後の男子グループが走り終わり、女子が走る番になった。
1番目から伊勢さんが走る。
「頑張れよ伊勢ー!」「はーい、任せてー」
涼也の声に応えた伊勢さんは、最初から危なげなく1位をキープし、そのままゴールした。
「よし!」
「楽勝って感じだったな」
伊勢さんの後にすぐに柳さんの番だったけど、2位に圧倒的な差をつけて1位でゴール。
…さすが2組女子最速だな。
そこから順調に進んで…そろそろ明里さんの番だな、と姿を探していると、スタートラインに並び出した女子の中に明里さんを見つけた。
なんだか俺が緊張してきた。
ドキドキしながら明里さんを見ていると明里さんも俺を見た。
大きな声を出すのが恥ずかしかったから、頑張れの気持ちを込めてグッとガッツポーズをした。
そのポーズに気付いたのか明里さんもガッツポーズを返してくれた。
〝位置について…よーい…パン!“
一斉に走り出した4人。
スタートは良かったのだが、明里さんの順位は3位。
皆んな同じぐらいのスピードで、明里さんにもまだチャンスはありそうな感じはする。
…頑張れ!
3位で最終コーナーを抜けてラストの直線。ラストスパートをかける。
2位と並ぶ明里さん、そのままゴールラインを通過した。
「直樹、西條どっちだとおもう?」
「めちゃくちゃ際どい…ここからは同着に見えたけど…」
ゴールラインにいた先生が他の先生や体育委員と相談しているのが見える。
明里さんの順位が確定しないみたいだ。
なかなか話し合いが終わらずザワザワしていると、相談が終わったのか、先生が実況席に行き「えー、ただいまの記録は…2位4組、3位2組!」とマイクを使って宣言した。
順位が確定し、3位の列に並ぶ明里さんの表情はなにやら嬉しそうに見えた。
「惜しかったなぁ!」
「うん、でも走るの苦手って言ってたけど、3位になれて嬉しそうだよ」
瑛太と話していると、椎名さんが走る番になった。
「千晴ー!頑張れよー!!」
周りのことなど気にも止めずに大きな声で声援を送れる瑛太のことが羨ましかった。




