77話
料理が来るまでの間に各自ドリンクバーで自分の飲み物を調達している。
俺は混ぜる派じゃないので、コーラを注ぎすぐに席に戻ったけど、瑛太と椎名さんはまたドリンクバーのところでワイワイ盛り上がってた。
隣に座った明里さんもジュースを混ぜる派ではないようですぐに戻ってきた。
「とうとう明日だね!」
「うん、天気も良さそうでよかったよ」
今年はどうやら空梅雨みたいで、6月だけども雨が少なくてすごく助かっている。
「そういや明日直樹のところは家の人来るの?」
「たぶん来るんじゃないかな?最後だし来るみたいな事言ってたよ、明里の所は?」
…流石に弟の体育祭に姉ちゃんは来ないだろうけど。
「うちも来るって言ってたよ!パパが動画撮るって張り切ってた!」
はは、なんだか想像できてしまう。
「俺ん家も来るって言ってたわ、別に来なくてもいいんだけどなー」
戻ってきた涼也がそういうと
「まぁ中学最後だしー、親はみんな見たいでしょー」
と伊勢さんが返していた。
「高校生になったら親は来ないだろうしな!」
「そんなイメージだよねー」
「…そうそう」
混ぜジュース組みも帰ってきた。柳さんも意外とそっち派だったのか。
「まぁ高校ってなるとちょっと恥ずかしさが出るよね!」
うんうん、分かる。でもこの歳でもちょっと恥ずかしいけどね。
「明日は頑張らないとなー」
「おうよ!走る系のはうちのクラス優秀だからな!」
「今年の借り物競走もなかなか変なの多そうだよねー」
「…去年も変なのばっかりだった」
そうなのだ、うちの学校の借り物競走は毎年、変わったお題が多くてなかなかゴールすることが難しい。
明里さんは大丈夫だろうか…
隣に座っている明里さんを見ると、特に気負った感もなく「楽しみだなぁー!」と笑顔だった。
ワイワイと話をしていると
「お待たせしましたー」
と続々と頼んだ料理が運ばれてきた。
「きたきた!」
「腹減ってたんだよなー」
「私もー」
気づくと時刻は1時になっていた。流石にお腹ぺこぺこだわ。
料理が揃った所で「では!明日の勝利に!いただきまーす!」
「「「「「「いただきまーす」」」」」」
今日の集まりの言い出しっぺである涼也の掛け声で食べ始めた俺たちだった。
ある程度食べ進めると「直樹、普通のカツもひと口食べる?」と明里さんが聞いてきた。
「いいの?貰うよ」と育ち盛りの俺からしたら貰えるなら嬉しいので了承すると「じゃあ、はい!あーん」
と迫ってきた。
「ち、ちょ!明里!?」
「どうしたの?」
「流石にここでそれは」
皆んないるし、すごいバカップルみたいに思われるって!
「…すご…あの明里ちゃんが男子にそんなことしてる…」
「そうなのよー凄いでしょ」
「恋は人を変えるってね」
女子達の声が聞こえてきてかなり恥ずかしいんですけど…
「直樹?食べないの?」
そんな声は全く気にしてない明里さん。
ええい!なら俺も気にしないようにしよう!
俺は差し出されたカツをパクリと食べた。
「ふふ、美味しい?」
「う、うん」
正直な話、周りの目が気になって味なんて分からんよ…
「良かったら直樹のもひと口ちょうだい?」
「い、いいよ」
丼からひと口分スプーンで取ってアーンと口を開けている明里さんに食べさせた。
「うん、おいしいね!」
涼也達の生暖かい視線が気になる。
「もっと食べる?」
「い、いや、もういいよ、ありがとう」と、まだ進めてくる明里さんに断りを入れ、照れ隠しに自分のカツ丼をガツガツと食べる俺。
「いいなぁ…彼氏…」
と聞こえてきた柳さんの声にますます恥ずかしさが込み上げてきて、「ゴホッゴホッ」っと思わずむせてしまった。
「大丈夫?」
「ごほ、う、うん」
心配してくれるのはありがたいんだけど、原因はあなたですからね!
コップに残っていたコーラを一気に飲み、なんとか落ち着いた。
そんなやり取りがあったけども皆んな自分の料理を食べ終わり、話題は明日の体育祭のことになった。
「ウチ思うんだけどさー、体育祭にダンスって必要ー?」
「そうそう!特に点数に加算されるわけでもないし、なんで女子だけ?」
「…覚えるの大変だった」
「えーわたし踊るの楽しいよ?」
明里さん以外は不評みたいだな…
「あれじゃね?雰囲気作り的な?」
「青春の1ページ的なやつだろ?それに男子が踊っても見栄えがなー、はは、直樹は楽しみだろ?」
近くに座っている涼也が絡んで来た。
「な、なんでそう思うんだよ」
…踊ってる明里さん可愛いから楽しみだけど。
「西條のダンス見たいだろ?」
「…そりゃ見たいさ」
「おうおう!いいよなぁ彼女持ちは!」
涼也も瑛太もやけに絡んでくるじゃないか。
「直樹!私頑張るね!あっ、動画撮る?」
と隣でなにやら気合を入れている明里さん。…動画撮っていいの?
「はいはい、とりあえず惚気はこの辺にしてー、そろそろ解散するよー」
伊勢さんの言葉に時間を確認すると、そこそこな時間居座ってたみたいだ。
「そうだなぼちぼち解散しますか」
「了解!」
「はーい」
と、ゾロゾロと席を立った。
会計を済まして店を出て、各々帰る方向が同じ人達で分かれた。
「じゃあ明日頑張ろうぜ」
「おう!じゃあな!」「またねー」「じゃあね!」
涼也、瑛太、伊勢さん、椎名さんのグループと
「頑張ろうね!」「また明日」「…ばいばい」
俺、明里さん、柳さんのグループに分かれて帰路についた。
「うるはちゃんもこっちなんだ!」
「…うん、もう着く…すぐそこ」
明里さんと柳さんが並んで歩く後ろをついていく俺。
「家この辺なんだ!私はもうちょっと先だよ!」
楽しそうに話す明里さんとは対照的にクールな感じの柳さん。
「…いつも朝三津島くんと一緒に登校してるけど、家近いの?」
「直樹の通学路に私の家があるからね!私が直樹の家に迎えに行く日もあるよ!」
「……ラブラブだね」
「へへ、照れるなぁー!」
そうモジモジしながら話す明里さん。ラブラブって言われて嬉しそうな顔してるなぁ…
「…じゃ、私の家そこだから」
ファミレスから少し歩いたところで、一棟のマンションを指差す柳さん。
「ホントにすぐそこだったんだね!」
「…また明日、頑張ろうね」
「また明日ね!バイバイ!」
「じゃあね柳さん」
「…バイバイ」
そう言ってマンションへと入っていく柳さんを見送り、2人並んで歩き出した俺たちは自然と手を繋いでいた。
「明日楽しみだね!」
「明日が本番って思うと緊張するよ、リレーのアンカー」
「ちゃんと練習したし、直樹なら大丈夫!緊張が解けるおまじないしてあげようか?」
そんなのあるんだ。やって貰おうかな。
「えっと、お願いしようかな」
「いいよ!」
そう言って周りを見渡した後、繋いでいた手を離していきなり正面から抱きついてきた。
今は辺りに人がいないけど、いつ人が来るか分からない状況に少しテンパった。
「どう?緊張とけた?」
身長差から上目遣いになっている明里さん。
「…違う意味で緊張してる、かな、これホントにおまじない?」
「ふふ、ただ私が抱きつきたかっただけでーす!」
はぁ…可愛い…これが俺の彼女です。最高でしょ?
と、脳内で自慢してみた。
俺がそんなことを思っているとは知らずに「よし!満足!」と言って離れた明里さんは、手を繋ぎ直してまた歩き出した。
しばらくして「そういや、月曜日どこ行くの?」と明里さんが聞いてきた。




