75話
しばらく動画を見ながらイチャイチャしているとトイレに行きたくなってきた。バーベキューでお茶飲みすぎたかな。
「明里、トイレ貸してもらえる?」
「案内するね!」
そう言って俺の股の間から立ち上がり、部屋を出る明里さんに続いて廊下に出た。
「ここだよ!私部屋戻っとくけど大丈夫?」
廊下の突き当たりにあるドアの前で立ち止まった。
「うん、ありがとう」
トイレに入って用を足している時にふと思った。
…そういえば体育祭が終わったら付き合って1ヶ月だけど…やっぱ1ヶ月記念とか、何かした方がいいのかな…
するとしても何したらいいんだろう…
そんなことを考えながら手を洗ってトイレを出て、明里さんの待つ部屋へと向かった。
ドアを開けると明里さんがベッドにもたれて座っていた。
「おかえり!直樹ちょっとこっち来て」
「どうしたの?」
そう言って近づくと、明里さんは俺がさっきまでしていた格好になり、足を広げてラグをポンポンと叩いた。ちなみに今日の明里さんはショートパンツを履いている。
…すらっと輝く長い足が眩しい。
「そこに座れってことかな?」
「正解!今度は後ろの感じを体験しようかなって思って、ほら、早く座る座る!」
「う、うん」
なるべく足に触れないよう慎重に座った。
…自分がするのは良いけどされるのは恥ずかしいな。
俺と明里さんの身長差からだろう、お腹に腕を回すのがやっとの感じだ。
「おっきいなぁ」
「ま、まぁ身長高いからね」
お腹をサワサワ触られてかなりくすぐったい。
「うーん…私は前の方が好きだなぁ……交代!」
そう言ってするりと俺とベッドの間から抜け出し、また前に座り、俺の腕を取り自分のお腹に回すと
「うん!やっぱりこっちだね!」と楽しそうに身体を揺らしている。
…まぁ俺もこっちの方が色々とイイな…
そんなことを思っていると「はぁ…」と明里さんがため息を吐いていた。
楽しそうだったのに急にどうしたんだろう。
「明里?」
「…直樹と一緒にいるとあっという間に時間が過ぎるよね…」
「はは、それは俺も思う、気分的にはちょっと前に明里の家に来たぐらいだよ」
「1日があっという間に終わっちゃう…」
そう言って前を向いていた身体を捻り、俺の胸に顔を当て、抱きついてくる明里さん。
「まだまだ一緒に居たいのになぁー」
…なんだこの可愛い彼女は…どれだけ俺をドキドキさせるんだろう。
「そうだ!晩御飯も食べてく?パパの服があるからお風呂も入れるよ!」
名案じゃない?!みたいな表情の明里さんだけど、それはダメだろう…
「はは、愛菜さんも剛志さんもそこまでは流石に許してくれないよ」
「…そうだよね…でもいつかはお泊まりもしたいよ」
「と、泊まり!?」
「うん!朝起きたら直樹が居るなんてめちゃくちゃ嬉しいもん!あ、でも寝起き見られるのはちょっと恥ずかしいかも」
へへへと照れている明里さん。
まぁ、いつかはそういう姿を見たい気持ちもあるのはあるけども、流石に俺たちにそれはまだまだ早いと思うけど。
そんなことを考えていると「あぁーもう夕方だよー…」と寂しそうな声が聞こえた。
視線を窓に送ると、外が少しオレンジ色に染まってきているのが見えた。
「ほんとだ…早いね」
「うん、直樹が帰っちゃう…」
「あ、明里が良いならだけどまたお邪魔させてもらうよ」
「ほんと!?私は大歓迎だよ!また来てくれる?」
「もちろん、次はなにか遊べるものでも準備しよう」
「そうだね!ふふ、何しよっかなー!」
…よかった、なんとか元気になったみたいだ。…そうだ。
「あとさ、体育祭の次の日って振替休みになるよね?その日って予定空いてる?」
1ヶ月記念のことはとりあえず言わないでおこう。
「ちょっと待ってね!」
明里さんはそう言ってスマホを確認し出した。
「えっと………うん!空いてるよ?どうしたの?」
不思議そうな明里さん。よし、俺から誘おう。
「よかったらさ、あの、で、デートしたい…な」
ちょっと詰まってしまったけど、誘えた!
「デート……行く!絶対行くよ!どこ行くの??」
「直樹からの誘いなんて断る訳ないよ!」
「い、いやぁ、まだどこに行くとかは決めてなかったんだけど…よかったありがとう」
「こちらこそ誘ってくれてありがとうだよ!」
そう言ってまたしてもガバッと抱きつかれた。
「はは、時間と場所はおいおい決めよう…今日の所はそろそろ帰るよ」
抱きしめ返してそう告げる。
俺だって本当はまだまだ一緒に居たいけどね!!!
「うん、今日はこれで我慢する!」
背中に回されていた腕が解かれ、明里さんが立ち上がったので俺も立ち上がる。
「剛志さん達に挨拶して帰るよ」
「流石にもう家の中に居ると思うから下行こっか!」
明里さんと部屋を出て、一階のリビングへと向かった。
リビングに着くとパパさんと愛菜さんは、ソファに座ってテレビを見ていた。
テレビからは笑点が流れていて、あぁ…日曜日が終わるんだなぁと少し寂しくなった。
「お邪魔しました!お昼ご馳走になってありがとうございました。」
ソファに座っていた愛菜さんが立ち上がり、俺たちの方に来て
「もう帰るの?晩ご飯も食べていけばいいのに」
と明里さんと同じことを言ってきた。
「いえいえ、お昼ご飯も頂いたのに晩ご飯までなんて!そんな!」
「遠慮しなくていいのに、ね?明里?」
「ママもこう言ってるし、やっぱり直樹晩ご飯食べてく?」
「えっと…いやぁご迷惑をかけるわけには…」
母と娘からのプレッシャーにオドオドしていると
「愛菜、明里、直樹くんが困ってるじゃないか…晩飯はまた今度でいいだろう?」
と予想外の所から助け舟が出された。
「まぁそうね、次来る時は晩ご飯も食べて行きなさいね、気合い入れて作っちゃうから」
「は、はい、ありがとうございます!では失礼します!」
ペコリと頭を下げて、リビングを出ようとするとパパさんから声が掛かった。
「またな、直樹くん」
「は、はい!バーベキュー美味しかったです!」
そう言って今度こそリビングを出て明里さんと玄関へと向かったのだが、愛菜さんも一緒に玄関まで来てくれた。
靴を履き「お邪魔しました!」と言うと愛菜さんが「パパ、直樹くんこと気に入ったみたいよ」と小さな声で囁いてきた。
「そ、そうなんですか!?嬉しいです!」
「次からは気兼ねなくいらっしゃいね!私も歓迎するわよ」
「は、はい!今日はありがとうございました!」
そう言ってもう一度お辞儀をして玄関を出ると、明里さん出てきてくれた。どうやら見送ってくれるみたいだ。
道に出ると「よかったね直樹!これでいつでも来れるよ!」と明里さんはキラキラした笑顔だった。
「うん!すっごい嬉しい!初めはドキドキしてたけど、認めてくれたみたいで安心したよ」
「次はデート!、と、その前の体育祭も頑張ろうね!」
「そうだね、リレー頑張るよ!じゃあまたね」
「気をつけてね!じゃあね!」
それからお互いが見えなくなるまで見送ってくれた明里さん。
俺の帰る足取りは嬉しさからか、驚くほど軽かった。




