74話
明里さんの部屋に入り、とりあえずラグに座った。
「ふぅ」
「大丈夫?疲れたよね」
隣に座った明里さんが俺の手をぎゅっと握る。
「大丈夫、緊張が解けてホッとしただけだよ」
最後の方はなんとかパパさんとも愛菜さんとも打ち解けれたとは思うんだけど。
「そりゃ緊張するよね、ありがとう直樹」
そう言ってコツンと俺の肩に頭を預けてきた。
バーベキューの煙の匂いがする。
「明里がプリン取りに行った時に、愛菜さんと剛志さんから明里をよろしくって言われたよ。俺のことを認めてくれたみたいで嬉しかったな」
「ママはともかくパパも!?」
バッと俺の肩から頭を離して驚いている明里さん。
「うん、健全な付き合いを心掛けるように、とも言われたけどね」
「…健全なって…どこまでが健全なのかな?」
「ど、どうなんだろう」
「その…あれかな…ゴニョゴニョ」
顔を真っ赤にして小さな声で何かを言っているけど上手く聞き取れなかった。
「今何て言ったの?」
「な、なんでもない!この話は終わりっ!…とりあえず今から何する?」
強引な話のそらし方だな…なんて言ったかめちゃくちゃ気になるんだけど…
「明里となら何でも」
「はは、それは嬉しいけど、特に何も考えずに部屋に来ちゃったからねー!どうしよっかな」
バーベキュー食べすぎてお腹パンパンだし、ホントはまったりイチャイチャしてたいんだけど…
「とりあえずご飯食べたばっかりだからちょっと休憩しよっか!その間になにかやりたい事決まるかもしれないし!」
願いが通じたっ!!
「…それでね、ちょっとお願いがあるんだけど…」
「うん?どうしたの?」
「えっとね…」となんだか言いにくそうな明里さんの様子に少し身構えた。
「この前直樹の家でゲームしたよね?」
「う、うん、スマブラだよね」
ん?スマブラがやりたいんだろうか…
「あの時の後ろから抱きしめてもらうやつ、またやって欲しいなーって…」
あぁ、手にアレが当たるやつね!おっけーおっけー……え!?
「…え!?いいの!?」俺としては嬉しい限りなんだが。
「いいも何も私がお願いしたいぐらいだよ!いいかな?」
「全然いいよ!」
「やった!」と言って明里さんがゴソゴソと移動を始めたので、足の間に座れるように体勢を整えた。
「じゃあ失礼します」
そう言って俺の足の間に座る明里さん。そのまま俺の胸に背中を預ける。
「ギュッてしてもらっていいかな?」
「う、うん」
いざ抱きしめろと言われると緊張しちゃうな。
両腕で肩あたりを抱きしめると、ポジショニングが悪かったのか、明里さんは俺の左腕を掴んでお腹の方へと動かした。
「こ、こんな感じ?」
「うん!これが好きかな!」
首元に明里さんの髪が当たってくすぐったい。炭の匂いの中に、なんだか甘いような匂いが混ざっている。
「ふふ、直樹すっごいドキドキしてる」
モゾモゾと体を動かしながらそう言う明里さん。
諸事情により、できればあんまり動かないでもらいたい…
「あ、明里?あんまり動かないで欲しいんだけど…」
「え?なんで…あ……」
瞬間的に耳まで赤くなった明里さん。…バレちゃったよなぁ。
「いや、あの…」
必死に弁解しようとしたんだけど
「しょ、しょうがないよ!生理現象だもん!」
と言ってお腹に回した俺の腕をさらに抱きしめる明里さん。
「私がして欲しいってお願いしたんだし、き、気にしないで!」と言って借りてきた猫みたいに大人しくなった。
しばらくそのままの格好でいると、少しこの体勢にも慣れてきた。
ちょっとだけイタズラしたい欲が出てきてしまった。
…ちょっとだけ腕を上げてみよう。
ドキドキとした緊張感の中、なるべく不自然にならないように少しだけ腕を上げた。
〝ふにょん″
例えるならそんな擬音がしそうな感触が腕に伝わって来た。
………………すごい……なんて柔らかいんだ…
〝ふにょん″〝ふにょん″
その柔らかい感触に夢中になってしまった俺。
「…んっ」と言う明里さんの声に我に帰った。
ヤバい!あからさまに触りすぎたか!
「…直樹」
「ど、どうしたの?」
「…さっきから何してるのかな?」
これはバレてるっぽい…
「いや、特に何も…」
とぼけてみるが、振り返った明里さんは「胸…触ってたよね?」と顔を赤くして言ってきた。
これは誤魔化せないと思った俺は正直に話すことにした。
「えっと…はい…つい出来心で…ごめんなさい」
「直樹も男の子だし?ま、まぁ興味あるのは仕方ないし…」
…あれ?特に怒ってはいないみたいだ。
「ごめん、もう触らないようにするよ」
「べ、別に触るなとは言ってないというか…」
なんか思ってた反応と違う気がするぞ?
「え?」
「…い、いや、今はまだダメ!その…恥ずかしいし…」
そう言いながらオロオロとしている明里さん。
怒られると思ってたけど、何だか変な方向に話が進んでる気がするぞ?なんとかうやむやに出来そうな気がする。
「う、うん、わかった」
とりあえずギュッと抱きしめてみた。
「そうそう!今はこれぐらいがいいかな!」
と言って力を抜いてまた俺の胸に身体を預けてきた明里さん。
「結局何するか決めてないね!」
「はは、そうだね…普段家にいる時明里は何してるの?」
「んー…スマホでYouTube見たり、SNS見たりとかかな」
「じゃあさ、オススメのYouTubeでも紹介してもらおうかな」
「いいよ!えっとね…」
そう言ってスマホを取り出し、明里さんのスマホで色々オススメのチャンネルや、最近ハマっている動画を一緒に見て過ごした。




