63話
スッと握られる俺の手。
「アルバム…見れて良かった、小さな頃の直樹も今の直樹も全部好き」
そう言って俺の肩に頭を預けてくる明里さん。
なんだか体が熱くなってきた。
「あ、ありがとう…お、俺も好きだよ」
キュッと握られる手。
しばらくその体勢のままの俺たちだったけど、明里さんがポツリと「…次私のアルバム見る?」と聞いてきた。
「う、うん…見てもいいかな?」
「もちろん」
と言って明里さんは手を離し、俺のアルバムをテーブルの端に寄せてバッグから群青色のアルバムを取り出した。
「直樹の写真見といてアレだけど、いざ自分の写真を見られるのってちょっと恥ずかしいね」
「俺も初めは恥ずかしかったよ」
「そ、そうだよね…どうぞ!」
と言って明里さんは表紙を開いた。
……なんだこれは…
写真を見た俺は目を疑った。
そこに写っているのは紛れもなく天使だった。
「………」
写真を見て何も話さない俺を見て、不安そうにする明里さん。
「え、な、何か変だったかな?」
「あ、ごめん!可愛すぎてビックリしちゃって…」
「もうー何も反応ないから心配しちゃったよー!」
と安心したような表情になる明里さん。
いや、スゴいな…可愛い人ってこんなちっちゃい頃からもうレベルが違うんだ…
そんなことを思いながら俺はページをめくった。
保育園時代の写真だろうか、可愛い。これはもうモテるだろうな…
小学生になるとすでに明里さんが完成されていた、はい可愛い。
可愛いしか言えない自分の語彙力の無さが腹ただしい。
まじまじと見ていると明里さんが1人の女の子を指差した。
「このころから望美と一緒に遊んでたんだ!ほら、この子が望美だよ」
おお!何となく伊勢さんの面影があるなぁ。
「ホントだ、これ何年生?」
「えっと、3年生かな!この年に初めて同じクラスになってね、後ろの席になった望美に私から話しかけたの!」
と嬉しそうに話す明里さん。
そこからちょくちょく明里さんと伊勢さんが一緒に写っている写真が増えてきた。ほんと仲が良いんだな。
そうこうしていると小学生時代の写真も終わり、アルバムの中の明里さんは中学生になっていた。
「私ね、中学に入ったときバッサリ髪短く切ったんだ、これ!」
と言って一枚の写真を指した。
うん、知ってる。この頃にはもう惚れてたから。
そんなことを俺が思っていることなど知らずに
「短いの変かな?似合ってない?」
と聞いてくる。
「全然変じゃないよ、ショートの明里も可愛かった。…実は俺、この頃からもう好きだったんだ」
「そうだったの?えへへ」と明里さんは嬉しそうに照れている。
さらにアルバムをめくっていくと伊勢さんの他に椎名さんも登場してくるようになった。
どの写真でも3人は楽しそうに笑っている。
アルバムも最後のページになった。
「ありがとう、どの明里も全部可愛かった」
「ほんとー?」
「ほんとだよ、いろんな人に告白されるのも分かるよ」
小さい頃からアレだけ可愛かったら周りは放っておかないだろうな。
「小学生の頃から男子にちょっかいかけられたりすっごく嫌だった」
そう言って当時を思い出したのか明里さんは少し怒った表情になっている。
「好きな子にちょっかいかけるやつだね」
「今思えばそうなんだろうけど、ホントに嫌でしかなかったの!」
「まぁこんなに可愛かったらね」
と言って俺はアルバムを小学生時代まで戻して改めて見た。
…ホントにスゴいな…周りの女子とは全然違う…
マジマジと見ていると急にアルバムが閉じられた。
「そ、そんなに見られると恥ずかしいよ…」
明里さんは胸にアルバムを抱いて顔が赤くなっている。
「ごめんごめん」と謝ると
「恥ずかしいけど…直樹に見てもらって嬉しくもあるし…」
と、モジモジしている。
くっ…可愛い…
今俺の部屋に2人っきりだし、抱きしめるぐらいしてもいいかな?…いいよね?
「あっ」
思い切った俺は明里さんが胸に抱いているアルバムをスッと引き抜き、テーブルの上には置いた。
そして自分から抱きしめるまでは勇気が出なくて、膝立ちになり明里さんの方に体を向けて腕を開いた。
一瞬ポカンとした明里さんだったけど、俺がしようとしている事に気づいたのか、開いた腕の中に勢いよく飛び込んできた。
後ろに倒れそうになったけど、なんとか堪えて正座になった。
ギュッと背中に回される明里さんの腕。
俺も明里さんの背中に腕を回して抱きしめた。
「どうしたの?」と俺の胸元から声が聞こえる。
「いや、つい抱きしめたくなったんだけど、急に抱きつくのは嫌がられるかと思って」
「好きな人に抱きしめられて嫌なわけないよ…嬉しい…」
と言って腕の力を強くする明里さん。
そして「えい!」と言う言葉と共に俺は強く後ろに押し倒された。
ラグが敷いてあるから特に痛みはないけど、びっくりした。
気がつくと俺の上に明里さんがのしかかっているような体勢になっていた。
「えへへ、押し倒しちゃった」
そう言って明里さんは俺の胸元から上目遣いで見上げてくる。
明里さんのショートパンツから出ている生足が、俺の
足と触れ合ってスベスベの感触が伝わってきた。
ドクンドクン
とうるさいほどに胸が高鳴る。明里さんにも聞こえているかもしれない。
まずい…理性が……
俺は片腕を明里さんの背中に回して抱きしめながらなるべく痛くないようにして、ゴロンと転がった。
「きゃ…」と小さく声が聞こえた。
今度は俺が明里さんを押し倒しているような格好になった。
「な、直樹?」
下から真っ赤になった明里さんが俺の名前を呼んだ。
「……明里」
名前を呼んでゆっくりと顔を近づけると、明里さんは真っ赤な顔のまま目を閉じた。




