60話
誰も何も言ってこないけど、さっきの見られてなかったんだろうか。
涼也達を見ても特に変わった様子は無いみたいだ。
はぁ…良かった…見られてたら絶対に揶揄われてたよな。
一安心していた俺に明里さんが
「私飲み物取ってくるけど、直樹のも入れて来ようか?」
明里さんにそう言われてグラスを見ると、ほとんど空になっていた。
「あ、いや、俺も一緒に行くよ」
「わかった!じゃ行こ!」
と言って席を立つ明里さんに続いて俺も立った。
「ちょっと飲み物おかわりしてくるねー!」
「はーい」
「いてらー」
「直樹もいくのかー、ついでに俺のも頼む!」
と、ドアを出る前に、涼也から空になったグラスを渡受け取った。
「コーラ?」
「あぁ、コーラで!」
「了解」
涼也との短いやり取りを終えてドアを出ると明里さんが待っていてくれていた。
「ごめん!待たせちゃって」
「全然!気にしないで!」
そう言って2人でドリンクバーへと向かった。
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涼也の分のコーラを入れ終わり、自分グラスにコーラを注いでいると明里さんに話しかけられた。
「打ち上げが終わったあとってちょっと時間ある?」
「えーっと、うん、大丈夫だよ、どうしたの?」
「近くに行きたい所があるの、2人で」
「どこ行くの?」
「内緒!後のお楽しみってことで!」
どこだろう。この辺りに何か特別な所なんてあったかな…
「う、うん、わかった」
「ありがと!じゃ戻ろ!」
そう言って自分のグラスを持って嬉しそう部屋に戻る明里さんだった。
「そろそろロシアンたこ焼きやらない?」
部屋に戻って涼也にコーラを渡すと、ワクワクとした顔で提案してきた。
そういやそんなの注文してたっけな。完全に忘れてたわ。
「いいねー、誰がどれ取るかどうやって決める?」
「とりあえずじゃんけんでよくないか?」
「いいぜ!」「うちもー」
「「いいよ」」
「よし、じゃあじゃんけんな、いくぞー!」
「最初はグー、ジャンケンポン!」
結果、明里さんが最後に選ぶ事になった。
「えー!私ジャンケン弱くない!?」と言って俺の事を揺さぶってくる。
「残り物には福があるって言うよ?」
「でも選ぶ楽しさもあるじゃん!」
「まぁ…そうだよね」
「直樹ー選んでくれー」
「あ、うん…じゃあこれにするよ」
と言って俺はジャンケンで優勝したから6個ある中から1つ選んだ。
最後の明里さんがたこ焼きを取って準備は出来た。
「皆んな持ってるよなー、せーのでいくぞー!」
「せーの!」
一口でたこ焼きを口に入れ、恐る恐る噛む。
もぐもぐと味わうと特に辛い味はしなかった。セーフだ。誰が当たりだ?
「ゴホッ!うわっ!辛!ガハッ!やばいヤバい!」
どうやら瑛太だったみたいだ。ゴクゴクと飲み物で流し込んでる。
その様子を涼也がゲラゲラとお腹を抱えながら笑っていた。
瑛太は「クソほど辛いってー!」と言いながら、グラス片手に部屋を飛び出して行った。
「やば!」「あんなになるほど辛いんだね、当たらなくて良かった!」「あんなんうち無理だったわー」
と、女子3人は自分達が当たりを引かなかったことに安堵の表情を浮かべていた。
しばらくして瑛太が帰ってきて、右手にソフトクリーム、左手に1枚お皿を持っていた。
「あれ?瑛太それなに?」
「はは、これな…リベンジだぜ!」
コトリとテーブルに置いたお皿の上にはたこ焼きが1つ乗っていた。
「え、まさかそれ辛いやつなの…?」
恐る恐る椎名さんが聞くと
「おうよ!さっきフロント行ってきて直接注文してきた!もう一回やろうぜ!俺だけ当たりって悔しいじゃん!」とニヤニヤしている瑛太。
「でも1つでジャンケンで決めるのー?」と椎名さん
「いや、今回はカラオケで食べる人決めようぜ!」
自身ありげな瑛太に涼也が
「点数が1番低い人とか?」
それならまた瑛太が食べる事になるんじゃ…
「点数ならまた俺になるだろー!違うって、一曲をみんなで順番に歌うんだ、1フレーズごとにな!それで最後のフレーズを歌った人がこれを食べるって事にしよう!これなら公平だろ?」
と自身満々の瑛太。
「いいぜ!面白そうじゃん!」「まぁ当たる確率6分の1だし私はいいよ」「また藤岡くんになるかもよー?」
「大丈夫大丈夫!流石に2回連続は無いって!直樹と西條も乗ってくれるか?」
「まぁ、さっき負けた人の提案だし、俺もいいよ」
「んー、じゃあ私もいいよ!」
一応これて全員が参加することになったか。あの辛さ明里さんや伊勢さん達は大丈夫か?
「おーし!じゃあ適当にみんな知ってそうな曲入れるからなー」と言ってデンモクでパパッと曲を入れた涼也。
「俺から時計回りでよろしく!」
瑛太の言葉の後に曲が流れ出した。
「う、嘘…」
ガックリと肩を落とす瑛太。
まさかの2連チャン罰ゲームだ。
「残念だったねー!頑張れ瑛太!」
「はっはっは!また瑛太じゃん!」
「頑張れ藤岡くんー」
「どんまい瑛太」
「が、頑張って!」
みんなに応援されて意を決したのか、瑛太は「おしっ!」と言って口にたこ焼きを放り込んだ。
「や、やっぱり辛ー!」と言ってソフトクリームを口にかきこむ瑛太だった。
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その後もしばらくカラオケを楽しみ、気づけば夕方になってきていた。
いい感じに疲れてきた頃、そろそろお開きにという流れになった。
「あー楽しかった!私しばらく勉強したくない!」
「俺も俺も!」
「次の行事は体育祭だねー」
「頭使うより体使う方が楽だわ」
「そろそろ種目決めだね!」
と話しながら店を出た俺たち。
「じゃお疲れー!」
「おつかれー」
「またねー」
「バイバーイ」
「おつかれ!」
「またねー!」
と、店の前で帰る方向が同じ人達で別れて、俺と明里さんの2人になった。
「じゃあ、言ってた所にいきまーす!こっちだよ!」
と言って俺の手を握って歩き出した明里さんに歩調を合わせてついて行くのだった。
そして、少し歩いて着いたのはゲームセンター。
「ゲーセン?」
「そうだよ!付き合って初めてのプリクラ撮りたかったの!」
そう言いながら入り口のドアを開け入った。
ゲームセンター特有のガヤガヤとした雰囲気の中を歩きお目当てのプリクラエリアにたどり着き
「どれにしよっかな…」
とウロウロする俺たち。
その間台の違いが分からない俺は黙っていた。
明里さんは少し悩んだあと、一台のプリクラ機の前で止まって
「これにするね!」
と言って手を引きヒラヒラした暖簾みたいなやつを開けて入る俺たち。
「ここは俺が出すよ」
「私が言い出したんだし、私が払う!」
と明里さんがお金を入れようとしたので、俺は慌ててお金を入れた。
「あ、ありがとう!」
「いいよいいよ、あとは任せるから」
「任せて!」
とぽちぽちとボタンを操作して撮影が始まった。
「こ、恋人同士の初プリだから、イチャイチャしてるとこ撮りたいの…いい?」
と、モジモジしている明里さんを見てドキドキしてきた。
「…い、いいよ、ど、どうしたらいい?」
「う、後ろからギュッてして欲しいな…」
お、俺から抱きしめるってことか!い、いいの?
いきなり難易度が高めの要求にオロオロしていると
5、4、3、とカウントダウンが聞こえてきて覚悟を決めた俺は後ろから明里さんを抱きしめた。
腕に明里さんの柔らかい物が当たっている感触にドキドキがさらに加速する。
〝カシャ“というシャッター音が鳴り、前の画面に俺が後ろから明里さんを抱きしめている写真が映し出された。
2人とも顔が真っ赤だ。
「はは、この格好めっちゃ照れるね…」
「うん…でも私は直樹にギュッてされるの凄く嬉しい…」
そう言って明里さんはまだ抱きしめたままだった俺の腕を優しく抱きしめてきた。
…なんだこの可愛さは…
と思っていると「次は横のアングルから撮りたいな」
と言われたので、横から撮れるように少し体を動かすと、5、4、と次のカウンドダウンが始まった。
ポーズはこのままでいいの?と思っていると、カウンドダウンが終わる直前にクルッと明里さんが体を反転させて、抱き合う形になった。
これはヤバい!
とある事情により慌てて腰を引いた俺。その瞬間〝カシャ“と言う音がした。
画面には少し腰を引いた情けない格好の俺が写っていた。
うわぁ…これはちょっと…
と思っていると「ふふっ、びっくりしたでしょ?」と笑う明里さん。
「そ、そりゃいきなりはビックリするよ!」
「ごめんごめん、次からは気をつけます!…じゃあ前に向いてちょっと屈んでくれるかな?」
これぐらいでいいのかな?
顔の位置を同じ高さぐらいにして前を向いた。
これでラストだよ!5、4、3、2、1、〝カシャ“〝チュ“
シャッター音の瞬間、俺の頬に柔らかい感触がした。
その感触に驚いて横を向くと目の前に顔を赤くした明里さんの顔があった。
「い、いま…」
「ほっぺにちゅーしちゃった!」
そう言われてバッと画面を見ると、俺の頬に明里さんの唇が当たっている場面が綺麗に写っていた。
その写真を見てアワアワしていると
「いやだった?」と言われたので俺は慌てて
「嫌じゃないよ!!その…またビックリしちゃって」
「ふふ、またビックリさせちゃったね!」
正直ビックリどころじゃ無いけどね…
そこから少しの間ふわふわしてよく覚えてない…
気づけば上機嫌の明里さんと手を繋いで店から出ていた。
「あぁー楽しかった!どれ待ち受けにしよっかなー!直樹も楽しかった?」
「う、うん、驚きの連続だったけど、楽しかったよ」
「良かった!…もうだいぶ暗くなってきちゃったね」
「そうだね、さすがに今日は帰ろう」
「うん、明日も会えるからね!」
と言って帰路に着く俺たちだった。
明日うちに明里さんが来るのか……




