52話
「あなたのことが好きです…俺と…付き合ってくれませんか?」
言っちゃったな…
まだ何も返事がない…
ダメだったのか…
そう思っていると、繋いでいる明里さんの手が徐々に震えてきてるのに気付いた。
慌てて明里さんの顔を見ても俯いていて、髪の毛でどんな顔をしているのか分からない。
「ご、ごめん、嫌だよね」
そう言って手を離そうとした。
「嫌じゃない…」
ギュッと握られた手。
「グス…う、嬉しい…の、…」
鼻を啜る音がする…泣いてる…のか?
「あ、明里さん?」
「…私も好き…グス、直樹くんのこと大好き!でもずっと不安だったの…私だけが好きなんじゃないかって」
「直樹くんに好きになって欲しくて、精一杯アピールしてた、いつも私に優しくしてくれてるけど、ウザがられてたらどうしよう…グス…とか考えちゃってた」
「前にね…私が彼女になりたいって言ったらどうする?って聞いた事あったよね、あの時返事を聞くのが恐くなっちゃって冗談って誤魔化したの」
一言一言を聞き逃したくなかった俺は真剣に聞いていた。
「グス…良かった…嬉しい!」
そう言ってガバッと抱きついてきた。
いきなりのことに俺は反応出来ず、後ろに倒れ込んでしまった。
「私からもお願いするね……私と付き合って下さい」
「もちろんこれからよろしくお願いします」
俺の上に乗っている明里さんをギュッと抱きしめた。
「えへへ…これで恋人だね!」
涙も止まって、俺の胸の上で微笑む明里さんはとても綺麗だった。
しかし、この状態は色々とまずい…何がまずいかは言えないけども!とにかくまずい!
ただでさえ女の子との触れ合う機会なんてないし、ましてや明里さんが上に乗ってるなんて…嬉しいんだけど、何とか体勢を変えないと!
そう思った俺はゴソゴソと起きあがろうとするのだが
なかなか上手くいかなかった。
「…?どうしたの?」といまだ抱きついている明里さんだが、何かに気づいたのか急に真っ赤になって離れてくれた。
「ご、ごめんね!急に抱きついちゃって!あの、わ、私は気にしないから!」
そう言ってアワアワとしている明里さんを見て気付かれてしまった、と俺は悟った。
あぁ…最悪だ…
「と、とにかく!今日から私たち恋人ってことだね!」
顔は赤いが、なんとか気をつかってくれている明里さん。
「う、うん、よろしくね明里さん」
「こちらこそよろしくお願いします、直樹くん!」
お互い向かい合って座っていた俺たちは、2人で微笑むのであった。
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告白が成功して友達から恋人になった俺たちは、とりあえず勉強は終わりにして明里さんの親が帰ってくるまでマッタリと過ごしていた。
「さっき地主神社の話したでしょ?あの時のお願いがやっと叶ったよ」
俺の腕に自分の腕を絡めながらそう話す明里さん。
「一回で石まで行けたってやつだよね?」
「うん!一回で行けたらすぐに願いが叶うって言い伝えなの!あの時直樹くんと付き合えますようにってお願いしてたから」
「そうだったんだ…ありがとう。じゃあ神様にも感謝だよ」
「きっと神様が同じクラスにしてくれたんだね!」
楽しそうだな。ニコニコと笑う明里さんを見てると俺も嬉しくなる。
「あ!そういえば、お願い聞いてもらう権利!まだ使って無かった!」
そういえば伊勢さんの家で勉強会した時にそんな話してたな。
「なにか俺にして欲しいこと思いついたの?」
「名前!私のこと明里って呼んで欲しいな!…これが私のお願い」
呼び捨てかぁ…結構ハードル高いんだよなぁ。
「あ…明里」
なかなか恥ずかしいけど、なんか嬉しいな…
「なーに?直樹」
そう言ってさらに強く腕を抱き締めてくる明里さん。
さらっと俺のこと呼び捨てにしてる…
本当に恋人になれたって実感が湧いてきた。と同時にハッとした。
…もし学校で付き合ってるってバレたら大変な事になるんじゃ…
「ち、ちょっと聞きたいんだけど」
「どうしたの?」
「えっとね、俺たちが付き合ってるってこと、学校ではどうするの?」
やっと学校で普通に話せるようになったところに、付き合ってるってなるとどうなることか…
想像しただけでブルっと体が震えた。
「私は付き合ってる事堂々としてたい!学校でも…その…い、イチャイチャ…したいし…」と言って上目遣いでモジモジしている。
…この子が俺の彼女なんだよ!最高だろ?好きだ!!
「そ、そうだね、俺も、い、イチャイチャしたいって思ってるけど…」
と、言いにくそうにしていると
「いきなり公表するのは流石にまずいよね…しばらくは内緒にする?」
「そうだね…そうしよう」
「じゃあ…2人きりの時だけ名前呼び捨てになるのかー」
「学校ではとりあえず普段通りってことで」
「わかった!でも望美と千晴には言ってもいいよね?」
「うん、仲のいい人には言っておいた方がいいと思う」
「直樹も渡辺くんと藤岡くんには報告するの?」
そうだなぁ…仲の良い人ってあの2人ぐらいだし…
「うん、言おうと思う」
「じゃあ4人の前でなら恋人としていれるんだね!…今は2人だから思いっきり甘えるからね!」
そう言って抱きついてきた明里さん
まぁ恋人になった訳だしな。
俺も抱きしめ返して、思う存分明里さんの感触と匂いを堪能したのだった。
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「もうちょっとでパパ達帰ってきちゃう…」
あれからしばらく手を握ったり、腕を組んだり、幸せな時を楽しんでいると、あっという間に時間が過ぎていたようだ。
まだまだ一緒に居たいけど、流石にお父さんお母さんに会うのはまだ早いよな。
「じゃあそろそろ帰るよ」と言って、テーブルの上に置かれていた勉強道具をバックに入れた。
「いつかちゃんとあ、明里のお父さんお母さんにも挨拶させてほしい」
「ママには彼氏ができたこと言っておくね!次は私が直樹のお家にお邪魔させてもらうから、その時にご挨拶させてもらうね!」
そうだった、うちに来る約束してたんだった。
「うん、分かった、俺も親に言っておくよ」
名残惜しいが、組んでいた腕を解いて立ち上がり、2人で部屋を出て玄関へと向かった。
「じゃあまた月曜日にね!」
「うん、またね、今日はありがとう」
靴を履いて玄関を出ようとすると「待って!」と言われて振り向いたら明里さんが腕を広げていた。
「も、もう一回ギュッてして欲しいな…」
「う、うん」
ゆっくりと近づいて俺は明里さんの身体を抱きしめた。
「好き」
「俺も好きだ」
ずっと抱きしめていたい衝動をなんとか抑えて離れた俺。
「じゃあ帰るね」
「うん、じゃあね!」
そう言って手を振る明里さんに手を振り返して玄関を出た。
はぁ…夢みたいな時間だった…俺が明里さんと恋人になれるなんて…
ニヤニヤと笑いそうになる顔を必死に抑えながら家に帰るのであった。




