48話
明里さんの家に行く日まで今日を含めてあと3日となった水曜日。
土曜日が近づくたびに毎日ドキドキが高まってしまう。
あの勉強会の帰り道から、明里さんと話すたび、いや、もう顔を見るだけで挙動不審な感じが出てしまうほどだった。
仲良し作戦が成功?したのか、今ではクラスの中だと話していてもザワザワするとこも減って来た。
今日も一緒に登校して、朝のホームルームが始まるまでのちょっとした時間でも、最近は俺の席まで明里さんが来てくれていた。
「来月体育祭だよね、今年は楽しみだなぁ!」
「う、うん、テスト明けぐらいに出る種目決めるって、昨日ホームルームで佐々木先生が言ってたね」
「直樹くんはやっぱり選抜リレー選ばれるよね!去年あれだけ走るの早かったし」
そういや去年の体育祭で俺のこと知ってくれたんだよなぁ。
「どうかなぁ、新山たちのグループって運動神経いい人達多いし、今年は選抜出れるか微妙なんじゃないかな」
「えぇー…今年は直樹くんが走るとこ、ちゃんと応援出来ると思って楽しみにしてるんだけど、去年はクラス違ったし!」
そりゃ俺だって明里さんにちょっとでも良いところ見せたい気持ちはあるけど…
「あ、ありがとう、まぁ、もし出れれば応援お願いします」
そんな話をしながらでも、俺の頭の中は違うことを考えていた。
…あれから明里さんは特に緊張した様子もないし、俺が家に行く事そんなに気にしてないんだろうか。
今だって普通に話しかけてくるし、俺だけが舞い上がってる気がする。
キーンコーンカーンコーン
予鈴が鳴った。
「あっ、先生来ちゃうから席に戻るね!またね!」
そう言って自分の席に戻る明里さんを見送る。
「いいよなー直樹は…すげぇ青春してるよなぁ…」
今週から時間があればテスト勉強に勤しんでいる涼也が話しかけて来た。
「涼也だって青春してるだろ?部活に」
「それはまた違うじゃん?ジャンルがさー、しかもテスト結果が悪いと練習メニューが鬼ハードに変わるから、最近ずっと勉強してばっかりだし…」
「それは仕方ないって、あと1週間だし、がんば!」
俺はとりあえずガッツポーズをして励ます。
「はは、めっちゃ適当だな」
そう言って笑う涼也に俺も笑い返して前を向くと、
ちょうど先生が教室に入って来た時だった。
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「じゃあホームルーム終わるぞー、っと、まだ連絡事項あったわ、昨日伝え忘れてたんだけど今日の放課後、美化委員は掃除あるからなー!…よし、じゃあホームルーム終わり!」
そう言って佐々木先生が教室から出て行った。
ボーッと話を聞いていた俺は、テスト前でも掃除があることにビックリしていると、ポケットに入れているスマホが震えた。
ポケットからスマホを取り出し開いてみるとLINEの送り主は明里さんだった。
《今日放課後清掃だったんだね!》
《テスト前でもあるもんなんだね》
《そうそう!私もそれ思ったよ!でも今日一緒に帰れるね!やった!》
そのLINEを見てドキッとした俺はそっと明里さんの方を見るとバッチリ目が合い、とても嬉しそうな顔だった。
なんか俺だけドキドキさせられている気がしたので少し攻めた返事を返してみた。
《俺も一緒に帰れて嬉しい》
返事を送ってすぐに既読が付いたので明里さんを確認すると、なにやらアワアワしている様子が見えたので、どうやら反撃は成功したみたいだった。
ーーーーーーー
それからいつも通りの時間が過ぎた。最近は当たり前のように昼休みなど時間がある時は明里さん達と居た。
放課後清掃の時間になって俺たち2人の持ち場である校舎裏に着いた。
「これだけ頻繁に掃除してるとゴミなんてほとんど無いよね!」
ホウキを手に取り、辺りを見渡しながら言う明里さん。
「もう少し掃除の頻度少なくしても大丈夫だと思う」
「だよね!…でもこの時間はこの時間で好きだから減っちゃうと嫌かなー、ほら、学校で2人になれる時間って意外と少ないし」
まったく、明里さんはまた俺をドキドキさせにきたか。そんなんでドキドキなんてしないよ。
「そ、そうだねっ」
嘘です。簡単にすぐドキドキします。
好きな子にそんなこと言われて平然としていられる訳が無い。
照れているのを誤魔化したくてゴミなんてほとんど落ちていないのに、ホウキをシャカシャカと動かしていると、俺たちに近づいてくる女の子が見えた。
「せんぱーい!暇なので来ました!」
咲希ちゃんだった。コンビニで話して以来か。
「久しぶり、暇だからって持ち場離れちゃダメなんじゃないかな?」
「まぁちょっとした用事を済ませたら戻るんで、大丈夫ですよ」
「…用事?何の用があるのかな?」
…あれ?咲希ちゃんが来る前までは機嫌良さそうだったけど、明里さん、何だか少し雰囲気がピリッとしているような…
「お邪魔してすいません西條先輩、用事はですね…これです」
と言ってポケットから二つ折りにした紙を取り出して俺に渡してきた咲希ちゃん。
紙を開いてみるとLINEのIDが書かれていた。
「ん?これってLINEだよね?」
「はい!連絡先交換して無かったので、これを渡そうと思って来たんです、では!」
そう言って去っていく咲希ちゃん。
「…連絡先ってどういうこと?直樹くん」
振り返るとピリッとした雰囲気どころか、ビリビリと赤黒いオーラが身体から滲み出していると錯覚するほど不機嫌な明里さんが立っていた。
怒ってる!これは完全に怒ってる!!
「い、いや、前に借りてたDVD返しに行った時にTSUTAYAで会いまして「会う約束してたの?」た、たまたまです!そ、その時に暇な時遊んで下さいって言われまして」
必死に弁解するけど、事態は悪くなる一方だ。
「へぇ…遊ぶ約束ね…で、連絡先を渡しに来たってこと?」
「そ、そうみたいです」
「まぁ可愛い子だし、直樹くんはあの子と遊びたいの?」
「いや、別に遊びたい訳じゃないよ」
「じゃあその時に断れば良かったんじゃない?」
「それが強引に約束させられたといいますか…いや、ごめんなさい」
全く収まらないこの修羅場をどうにかしようと、俺はもう思い切って正直な気持ちを言うことにした。
「俺は……遊びたい、一緒に居たいって思うのはキミだけだよ!一緒に居てドキドキしたり、嬉しいって思うのも明里さんだけだ!」
「ま、待って!」
「それに」「ちょっと待って!大丈夫!わかったからっ!」
今までにないほど真っ赤になってしまった明里さんを見て言葉を止めた。
「…もう怒ってない?」
「あの子と直樹くんが遊ぶって考えて心配になっただけだから!もう大丈夫!」
「よかった…あの子と遊ぶのはちゃんと断るよ」
「ごめんね、彼女でもないのにめんどくさいこと言っちゃって」
「いや、俺が悪い」
「いや、私が悪いよ」
とお互いが言っていると
キーンコーンカーンコーンと清掃終了のチャイムが鳴った。
もうそんなに時間経ってたのか…なにか忘れているような…
「あっゴミ!」
塵取りにほんの少し乗るぐらいしか集まっていないけど、一応集積所に持って行った方がいいのか?
と、悩んでいると
「まぁ今回はもう良いんじゃないかな?明日の昼の掃除の人が片付けてくれるよ!」
そう明里さんが提案して来たので、その案で行く事にした。
「そうだね、今日はもう帰ろうか」
「うん、帰ろ!」
良かった、いつもの明里さんだ。
なんとか機嫌を直してくれた明里さんと帰路に着くのだった。




