46話
ようやく起き上がれた頃に、顔を赤くした明里さんと伊勢さんが部屋に戻ってきた。
「だから、足が痺れちゃってふらついたのを助けてくれただけなんだって!」
「一応ここウチの部屋だからねー」
「私が押し倒したわけじゃないの!」
「はいはい、わかったわかった」
「絶対納得してないでしょ!」
「あ、三津島くん、飲み物お茶でよかった?」
明里さんの言葉をスルーしてコップにお茶を注いで渡してくれた。
色々あって喉渇いてたからほんと助かるわ。
未だに顔が赤い明里さんは、隣に座って「うぅ〜」と唸っている。
俺も今までで1番の衝撃だった。
今も感触が鮮明に思い出せる……ダメだダメだ。落ち着け。
そんな事を考えていると伊勢さんが「じゃあ勉強再開しますかー」と言った声で我に帰った。
「どうする?各々したい教科する?それとも、私が問題出すからクイズ番組の早押しみたいに答える?」
「せっかくならクイズで!」
「クイズの方がいいかな」
「了解ーちょっと考えるから待ってねー」
よかった、これなら何勉強するか悩まなくて済むな。
「第1問いくよー、社会から出題です、ヨーロッパの火薬庫と言われた◯◯◯◯半島といえば?」
「はい!」「はい」
「ちょっとだけ明里が早かったかなー」
「バルカン半島!」
「正解」
「えへへー、1ポイント先取だね!」
「ポイント制だったんだ」
「もちろん!」
明里さん勝負ごと好きだなぁ。
「第2問、理科から、木と木を擦り合わせて火を起こしました、何エネルギーから何エネルギーに変わったでしょう」
「はい」「はい!」
「はい三津島くん」
「運動エネルギーから熱エネルギーに変わった」
「せいかーい」
「同点だね、明里さん」
「譲ってあげたんだよ!」
「第3問、国語から、漢字書いてもらうから2人ともノート出してね」
漢字かぁ…苦手なんだよな。
「奥の細道とは〝誰が“〝どこを出発して“〝何をしながら“旅をしたでしょう。さっ、漢字で書いてねー」
「うわぁ、答えは簡単なんだけど、漢字かー」
「名前の漢字が出ない…」
伊勢さん地味にいやらしい所問題で出してくるな。
ひらがなでもポイントくれないかな?
「はい、答えをどうぞー」
「せーの!芭蕉 江戸 俳句」
「芭しょう 江戸 俳句」
「明里正解!三津島くんは惜しかったねー」
「よかった!私も芭蕉の蕉ちょっと悩んだんだ!」
「ちなみに伊勢さん?惜しかったからポイントはあり?」
「無しだよ、国語だからねー」
「また勝負してるんでしょ?明里リードだねー、勝ったらまた押し倒しちゃう?」
「もう!まだ言うの?あれは事故だったの!ね?直樹くん?」
「そ、そうだね」
初めは事故だったけど、最後の方は明里さんが体を預けて来たような…
「も、問題!問題出してよ望美!」
「はいはい、続きだすよー」
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「じゃあとりあえず次でラストねー、ラストは3ポイントあげちゃおうかなー」
「わかった!」「わかった」
「じゃあ理科ね、熱の伝わり方から、フライパンを加熱したら持ち手まで熱くなった、何と言う現象?」
よし!分かるぞ!
「はい」「はい!」
「熱伝導!」
「はい正解、3ポイントねーでは結果発表ー、明里6ポイント、三津島くん……7ポイントで逆転勝利!」
最後の3ポイントに助けられたー
「俺の勝ちだね、明里さん?」
「うぅ…負けた…じゃあ1つお願い聞くよ…」
え?そんな条件は無かったと思うんだけど、いいの?
「いいの?勝負はしてたけど、初めに条件付けてなかったのに」
「う、うん、いいよ!私にできる事なら何でも言ってね!」
何でも……明里さんに何でも……待て待て俺!常識の範囲内だろ!
「わかった、何か考えとくね」
クイズも終わり、キリ良く3人で休憩していると
コンコン
とドアをノックする音が聞こえて、伊勢さんがドアを開けると伊勢さんのお母さんがひょっこりと顔を覗かせた部屋に入ってきた。
「そろそろ甘い物でも食べない?ケーキ用意してるんだけど」
「食べる食べるー」
「わぁーいただきます!」
「え、いいんですか?」
俺が遠慮ぎみに言った言葉に
「いいのいいの!男の子が遠慮なんかしちゃダメよ?」
とパチンとウインクが返ってきた。
「準備するから、えっと…明里ちゃんに手伝ってもらおうかしら」
ニコニコと笑っている伊勢さんのお母さん。
「わ、私ですか!?」
「うん、色々聞きたい事もあるし、さっ行きましょ!」
有無を言わさず明里さんの手を引っ張って出て行った。
そうして伊勢さんと部屋に残されたのだが、微妙に気まずい。
何が話題は無いかと思っていると
「ねぇねぇ、答えにくかったら言わなくて大丈夫なんだけど、正直明里のことってどう思ってんのー?」
「え、いや、その…」
いきなりの明里さんの話で、顔を赤くしてワタワタしていると
「まぁ、その反応で大体わかるんだけど、大丈夫ーうちこう見えて口は硬いし、本人には絶対言わないから」
と、言われましても…そりゃ好きだよ、でも実際口に出して言うのは恥ずかしいですよ!
「それに…手伝える事もあるかもしんないよー?」
…言っちゃおうかな。
伊勢さんが味方になってくれるとかなり心強い感あるよな…よし!
「あ、明里さんのこと……好き…です…」
「…だよねー!分かってたんだけど、本人から直接聞くとスッキリするわー」
「俺ってそんな分かりやすい?」
「うん、周りにはモロバレって感じかな?あっ、安心して!明里は多分気づいてない感じだから」
「よ、よかった…」
「おけおけ!ちゃんと聞けたし、そろそろ準備出来てるだろうから、リビング行こっか」
そういって2人で部屋を出たのだった。




