45話
各自ローテーブルに教科書とノートを出して勉強を始める俺たち。
「さて、明里は国語得意よね、三津島くんは得意教科なにー?」
「いや、あの、全体的に苦手…です」
「「…え!?」」
…2人ともそんな驚いた顔で見ないで下さい。
「そういう伊勢さんはどうなの?」
いつも軽い感じだし、どうせ俺とそんな変わらんだろ。
「うち?うちは全教科できまーす!」
え?まじ?
「え…意外、まじで??」
「うん、2年の期末テスト学年トップ10入ってるし」
「望美って昔から頭いいよね!」
「まぁそうだねー予習復習ちゃんとやってるからねー、とりあえず数学からやろっか、聞きたいことあれば何でも聞いて」
「はーい」「わかった」
そう言って数学の教科書を広げて中間テストの範囲を見ても、さっぱり分からない。
チラリと隣に座る明里さんを見てみると、真面目に数学の勉強に取り掛かっていた。
…一先ず自分なりに勉強してみよう。
しばらく教科書と睨めっこしていると
「2人ともー今回の中間テストに出そうな問題で軽くテスト的な物作ったからこれ解いてみて」
俺と明里さんに伊勢さんから紙を渡された。
「直樹くん!勝負だね!また勝った方が負けた方に1つお願いできることにしようよ!」
「えぇ…それ圧倒的に俺が不利でしょ」
「そうかなー数学は私苦手だよ?」
それならいい勝負になるのか?
「まぁいいよ、前は負けたけど今回は勝つよ」
テストにざっと目を通すと基本的な問題から応用問題まであってしっかりした作りになっていた。
「制限時間は20分ね、よーい、スタート!」
よし、勝つぞ!
何とか基本の問題は解ける!問題は応用の方だ。
隣からは順調にシャーペンを走らせるカリカリという音が聞こえる。
応用問題も一応解き終わったところで伊勢さんの声がした。
「はいストップ、終わりでーす、採点するから2人は休憩してて」
俺は肩に入っていた力を抜き「うぅーん」と背伸びをしてリラックスする。
「どうだった?出来た?」
「あんまし自信ないかな、そっちは?」
「出来たとは思うんだけど、ちょっと微妙かも」
お?これはいい勝負になるんじゃないか?
と、期待していた時期が俺にもありました…
「明里10問中9問正解!、三津島くん10問中6問正解!勝負は明里の勝ちー」
また負けた…ガックリと肩を落とす俺と、嬉しそうに喜ぶ明里さん。
「また勝っちゃった、今回は何をお願いしよっかなー!」
前は2人でプリクラだったな…
「お、お手柔らかに…」
「前回は何お願いしたん?」
「それがねー、プリクラ撮ったんだ!えへへ…」
ちょっと待って!言っちゃうの!?恥ずかしいって!
なんとか話の流れを変えないと!
「あ、あのー、そろそろ勉強の続きした方がいいんじゃ…」
俺の言葉にハッとした2人
「そ、そうだね!勉強しに来たんだもんね!」
「ごめんごめん、じゃあこのテストで間違ってるとこの解説していくねー」
その後の伊勢さんの解説はとても分かりやすかった。
しばらく集中して勉強していると、気づけば1時間ほど経過していた。
「ちょっと休憩しよっか、うち飲み物取ってくるからゆっくりしててー」
そう言って部屋から出る伊勢さんを見送った。
2人きりになった俺たち。
「ちょっとお手洗い行ってくるね」
「あ、うん」
立ち上がった明里さんだが、なにやら様子がおかしい気がする。
「座りっぱなしだったからちょっと足痺れちゃった」
そう言って歩き出したが一歩目でふらついてしまっていた。
危ない!
俺はとっさに立ち上がり明里さんの体を支えようとしたんだけど、俺も足が痺れてた。
「うおっ!」
「きゃっ!」
バタン!
せ、背中、いったぁ……あれ?この重さはまさか…
倒れる恐怖と痛みにギュッと閉じていた目を恐る恐る開けると、心臓が止まるかと思った。いや止まってると思う。
なにせ視界に映る景色全てが明里さんの顔で埋め尽くされていたんだ。
「だ、大丈夫?怪我はない?」
「う、うん直樹くんが庇ってくれたから…」
あ、あれ?明里さん、俺の上から降りる気配がないぞ?
「あの、明里さん?」
「ごめん、まだ足痺れてて…もうちょっとだけ…このままでいい??」
「う、うん…」
すると俺の返事を聞いた明里さんがさらに顔を近づけてきた。
え!?え!?こ、これは!?まさか!?
淡い期待を抱いていると
明里さんの顔は、俺の顔の横を逸れて行き、お互いの頬と頬が触れた。
「ありがとう…」
その言葉が俺の鼓膜を震わせた。
思わず明里さんのことを抱きしめそうになったとき
ガチャ
「お茶で良かったよ…ね…」
バッとドアの方を向くとお盆にお茶のペットボトルとコップを乗せた伊勢さんが立っていて俺たちの事を見ていた。
「ありゃ、もしかしてうち、ミスった?……別の飲み物取ってくるねー」
と言ってまた出て行った。
それを見た明里さんがシュタッと立ち上がり
「ま、まって望美!足が!足が痺れたのー!」
と慌ただしく部屋から出て行くのを見送る事しかできなかった。
1人残された俺はしばらくの間起き上がる事が出来ないのであった。




