36話
階を移動してクレーンゲームや色々なゲームの筐体がたくさんあるアミューズメントフロアに着いた俺たちは、とりあえずクレーンゲームでもやろうかという話になった。
4人でクレーンゲームを見回っていると、「見て見て!!このぬいぐるみ瑛太に似てるー」と椎名さんが指差した方を見ると
フォルムはデフォルメされているが、顔だけが厳つい犬のぬいぐるみがあった。
「ほら!この顔!瑛太っぽくない??」
「ふふっ確かにちょっと藤岡くんっぽさは分かるかも!」
キャイキャイしている女子2人を他所に
「なぁ…俺ってこんな感じなん??」
と聞いてくる瑛太。
「えっと、まぁ…うん、瑛太の顔ってまぁまぁ恐いよね」少し悩んだが正直に答える。
「まじかよ…」
と少しショックを受けた様子の瑛太を見て『もうちょっとオブラートに包んだ方が良かったかな』と思っていると
「私これ取る!なんか可愛く見えてきた」
そう言ってお金を入れ、クレーンゲームをプレイしだす椎名さん。
「んー…可愛い?のかな?」
と苦笑いする明里さんを気にせず真剣にクレーンを操作している。
1回目は失敗したが、2回目で取る事に成功した椎名さんは、取れたぬいぐるみを抱きしめてながら「ほらー!似てるっしょ?」と瑛太の元に来て見せてきた。
自分に似ていると言われたぬいぐるみを抱いて嬉しそうにする椎名さんを見て少し照れている様子の瑛太。
「そ、そんな可愛いか?これ」
「えー分かんないかなー私的には可愛いんだけどなぁ」と言いながらぬいぐるみの頭をヨシヨシと撫でる
のを見てさらに照れて顔が赤くなる瑛太だった。
俺たちも居ることを忘れているのか、なにやら甘い2人の空間を作っている瑛太と椎名さん。
「なんかイチャイチャしてるね」
「これは直接千晴に聞くまでも無さそうだねー」
ウンウンと頷きあう俺たち。
そこで明里さんが明らかに良い雰囲気の2人に
「そこでイチャイチャしてるお二人さーん!わたし喉乾いたから、さっきの罰ゲームのジュース買ってくるよー何が良い??」
と割り込んでいた。
イチャイチャしているという言葉に我に帰ったのか、瑛太と千晴は
「こ、コーラで!」「わ、わたしは緑茶かな」と恥ずかしそうに言ってきた。
「おっけー!そこのベンチで待っててー、じゃあ直樹くん行こっか」
「うん」
そう言って自動販売機へと向かう俺達だった。
しばらく歩いていると自動販売機を見つけた。
「あったあった、じゃあ買って戻ろうか」
明里にそう言ったけど、明里さんは自動販売機とは反対の方を見ていた。
「どうかした?」
気になって声を掛けると
「早速なんだけどお願い聞いて貰おうかなー」
そう言って俺の手を引っ張って歩きだした。
「ちょ、ジュースは!?」
「まぁすぐ済むから」と言ってドンドン歩く明里さん。
少し歩いて目的地に着いたのか立ち止まり
「これ、一緒に撮ります!」と指を差した先には
〔男性だけでの入場禁止〕と注意書きのあるプリクラゾーンがあった。
「え!?プリクラ!?瑛太達待たせちゃうんじゃ」
「あの感じだったら大丈夫だよ!」
そう言って明里さんは俺を一台のプリクラの中に引っ張り込んだ。
…中って思ったより狭いんだ…
「え、えっと、こ、こういうの初めてで…」
プリクラなんて撮った事が無い俺は中を見渡しオドオドしてしまう。
「初めてなんだ…じゃあ私が直樹くんの初めて貰っちゃうね!」
少し赤い顔の明里さんが嬉しそうに微笑んで、お金を入れ操作していく。
「何枚か撮るからあの奥のカメラに目線合わせてね!」
そう説明を明里さんがしていると
〝3・2・1・カシャ“という音がして画面に写真が写し出された
「直樹くん!硬いよほら笑顔笑顔!」
「そう言われてもッ」
狭い空間で明里さんの肩が腕に触れてドキドキが止まらなくなり、笑顔を作る余裕など無いが、俺はなんとか笑顔を作ることに成功する。
そのまま何枚か撮った後に
〝次がラストだよー“と音声が流れて3・2・1とカウントダウンが流れてきてカメラがシャッターを切る直前に
ギュッと俺の腕に自分の腕を絡めてきた明里さん。
その行動に驚いて明里さんの方を向いた瞬間に〝カシャ“と言う音がしてシャッターが切られた。
〝これで終わりだよー!外で落書きして遊んでね“という音声が流れているが、なぜか腕を離す気配のない明里さん。
明里さんの胸がひじに当たっている感触にドキドキが止まらない。
「あ、明里さん?終わったみたいだけど…」
と声を掛けると「あっ!お、終わったね!外で何か書こうか!」
と言って俺の腕を解放した明里さんは耳まで真っ赤だった。
「どれにしよっかなー」と写真を選ぶ明里さんの耳は未だに赤い。
「ふふっ、直樹くんめちゃくちゃ緊張してるね」
「そりゃ、初めて入ったからね!」
初めに撮った写真を見ながら楽しそうに笑う明里さん。
「3枚選べるから、記念すべき初めての1枚は決定としてあと2枚!次は直樹くん選んで!」
「じゃあこれで…」
なんとか笑顔で撮れている写真を選ぶ。
「ふむふむ、じゃあ2枚目はこれでー」
3枚目はどうするのかと思っていたが、パッと最後の写真を選んだ明里さん。
「よ、よし!あとは文字書いて終わりだね!」
そう言いながら1枚目に〔祝!初プリ!〕と書いて
「あとはこのままがいいかな」と言って終了ボタンを押す。
完成したプリクラを筐体から取り出しプリクラコーナーの真ん中に置いてあったハサミで二等分して「はい!直樹くんの分」と渡されたプリクラ。
…おぉー…これがプリクラ…明里さんと腕組んでる…
と興味深く見ていると、明里さんの上擦った声が聞こえてきた。
「あ、あのね!す、スマホの裏に貼る!!ここまでがお願い権の範囲だよ!!」
…スマホに貼る!?俺と撮ったプリクラを!?
「え!?スマホに貼ったら誰かに見られるかもしれないよ!?」
「カバーを外して裏に貼ったら大丈夫!それなら2人だけしか分からないでしょ?」
「わ、わかった!」
「ふふ、よろしい!帰ったら画像送るね!じゃあジュース買って千晴達のとこ戻ろっか!」
とても嬉しそうな顔の明里さんと共に、本来の目的である飲み物を買って瑛太達の所へ戻るのだった。
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その後ジュースを買って瑛太達のところに戻ると
「おかえりー遅かったけど、何かあった?」
と椎名さんに聞かれた明里さん。
「い、いや、自動販売機なかなか見つからなかったし、けっこう混んでて!ちょっと遅くなっちゃった」
アワアワと椎名さんに言い訳をする明里さんを見て、先ほどの事を思い出して顔が赤くなる俺。
「直樹?顔赤いけど大丈夫か?」
それを見て心配してくれる瑛太に
「ちょ、ちょっと暑いだけだから!全然大丈夫」と俺もアワアワとするのであった。




