23話
電話を切った後も西條さんの声が耳に残り、遅くまで寝付けなかった俺は朝なかなか起きれなかった。
9時前にやっと起き、用意されていた朝食を食べ終わり出かける準備に取り掛かる。
服はこの前姉ちゃんに貰ったやつでいいかな…
服を着替えて、最近すこし慣れてきた髪のセットを終わる頃には10時を少し過ぎたぐらいだった。
財布やスマホをポケットに捩じ込み部屋を出ると、廊下で姉ちゃんが待っていた。
「あんた、その様子を見るに今日明里ちゃんと会うんでしょ?」
「う、うん、そうだけど…」
「優しい姉から1つアドバイスしてあげるわ、女の子に会ったらまず服装の感想言ってあげなさい。思ったことを伝えるのが大事よ。」
「それ…実際言うの難しいよな」
「はぁ?好きなんでしょ?それぐらい頑張りなさいよ」
「てか、最近やけに親切じゃん、なんで?」
髪を切りに行ったり、服を買いに行ったり、アドバイスまでくれる姉を不思議に思う。
「昔はもっと明るい子だったのに、最近のあんたは暗かったじゃん?また昔みたいな感じになればいいかなぁって姉として心配してんのよ!」
「そう…だね、まぁ頑張ってみるよ。ありがとう姉ちゃん。」
「思ったこと言うだけでいいのよ、大丈夫よ、あの子なら」
そう言って姉ちゃんは自分の部屋に戻って行った。
よし!待たせたら悪いし少し早めに公園に行っておこう。
今から家を出ると、待ち合わせの時間より30分ほど早く着くが、待たせるよりかは良いかと思い、家を出る。
楽しみだなぁ…最近はよく話すようになったから緊張することも減ってきたし。
しばらく歩いていると、だいぶ早い時間に待ち合わせ場所の公園に着いた。
早く来すぎたな…とりあえずベンチに座ってスマホでも弄ろう。
なだらかな坂を登り、頂上にあるベンチに座る。
ネットを見ながら今日のカラオケで何を歌うか考えていると
「あれ!?三津島くん!!」
声が聞こえたほうを向くと、坂を登り切った西條さんの姿があった。
「三津島くんだいぶ早いねー待たせちゃってごめんね!」
「いや、ちょっと前に来たとこだよ。西條さんも早いね!」
「楽しみで早めに家でちゃった、三津島くんがもう来てるとは思わなかったけどね!」
そう笑いながら隣に並ぶ西條さん。
…ここだっ!姉ちゃんからのアドバイス!
「今日の私服、西條さんにすごい似合ってるね。」
よし!詰まらずに言えたぞ!!
白いトレーナーにプリーツスカートというシンプルな服装の西條さん。
顔も可愛くて、スタイルも良いからきっと何を着ても似合うんだろうな…
「あ、ありがとっ、三津島くんに褒められるのすっごい嬉しいな!…み、三津島くんも、その…カッコいいよ!」
2人とも顔を赤くし、なんとも言えぬ甘い空気が周囲に流れる。
「ありがとう。あんまりオシャレとか分かんないから不安だったんだ…」
俺は赤くなった頬をポリポリと掻く。
「えー!じゃあ今度一緒に服も見に行く?私も新しい服ちょうど欲しかったんだ!お互いの服選びっこしようよ!!」
ニコニコしながら提案してくる西條さん。
また一緒に出掛けれるってこと!?
と、西條さんの提案に驚く。
「俺が西條さんの服を選ぶの!?それは流石にまずいんじゃ…」
「んーなら、私が何個か選ぶから、その中から三津島くんの好きなやつを選ぶって感じにしよっか」
「それならまぁ大丈夫かな?」
「やった!約束!絶対行こうね!」
じゃあ指切りしとかなきゃ、と小指を出してくる西條さん。
「ほら!三津島くんも!」
急かされた俺は西條さんの小指と自分の小指を絡ませる。
「せーの「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます、指切った」」
そしてお互い小指を離す。
「ふふっ、じゃあそろそろ行きますかっ!」
楽しそうな西條さんが歩き出したので、後を追い隣に並ぶ。
「まずはお昼だね!今から行くカフェずっと気になってたから楽しみで!三津島くんはカフェとか喫茶店って行くの??」
「いや、全然!ほぼ行ったことないぐらいかな。カフェって男の人は入りずらいイメージだし。」
「確かにそうかも、いつもはカフェって千晴たちと行くけど、店内って女の人がほとんどかも!あとはカップルが多いかなー」
「なんか緊張してきたなぁー」
そんな話をしながらしばらく歩いていると、目的地のカフェに着いた。
「ここだよ!さっ入ろっ!」
そう言って店へと入っていく西條さん。
お洒落な店だなぁ
と思いながらあとを着いていく。
店に入ると店員さんが迎えてくれた。
「何名様ですか?」
「2人です」と言うと
「現在混み合っておりまして、普通の席だと少々お待ちいただくことになりますが、カップルシートですとすぐにご案内できますが、どうされますか??」
「じゃあカップルシートの方でお願いします。」
と西條さんが言う。
それを聞いた俺はギョッとした。
え!?!?!?カップルシートって2人の距離がめちゃくちゃ近いと噂のカップルシート!?!?!?
「三津島くん?大丈夫だよね??」
待つのも嫌だったので「う、うん、大丈夫だよ?」と返事を返す。
「ではご案内いたします。」
案内の店員さんに着いていく俺たち。
「こちらです。ご注文が決まりましたらボタンを押して下さいね。」
席に着いた2人にそう言って帰っていく店員さん。
「思わずカップルシートって言っちゃったけど、いざ座るとすごい距離感だね。」
と言い西條さんが少し体を動かすともう肩や肘が当たってしまう距離だった。
「お、俺とカップルシートなんて大丈夫だったの??嫌じゃない??」
「思ったより近くて恥ずかしいけど、気にしないで!三津島くんとなら私は嫌じゃないよ!」
俺とならって…どういう意味なんだろうな。
「なら良かった。とりあえず何頼むか決めよう?」
テーブルに置かれているメニューを開き、どんなものがあるのか確認する。
「私もう決まってるよー!」
「え!?早くない!?」まだメニューを見ていないのに何を頼むか決めていた西條さんに驚く。
「このお店SNSでけっこう有名で、お昼ごはんここにしようって決まった時から色々リサーチしてたんだよ」
「季節のパンケーキってのがオススメらしくて、私はそれにしようと思う。」
「ほらっ」といいながらスマホの画面を俺に見せる西條さん。
「ホントだ、みんな写真撮るんだねー、SNSやり方わかんないから触ってないんだよね。パンケーキの他にオススメあるの?」
「台湾カステラってのも人気あるみたいだよ!フワフワでプルプル?らしい!」
「そんなのあるんだね!じゃあそれにしようかな。」
未知の食べ物に興味が湧いた俺は台湾カステラにすることにした。
呼び出しボタンを押ししばらくすると店員さんが注文を聞きに来た。
「季節のパンケーキとレモンティーお願いします。」
「台湾カステラとアイスコーヒーお願いします。」
「かしこまりました。では少々お待ちください。」
「落ち着いた雰囲気だけど、お客さんのほとんどが女の人だね。」
店内を見渡しながら言う。
「そうだね、男の人はやっぱり恋人と来てる人っぽい人たちが多いね!…カップルシートに座ってるし、やっぱり私たちも恋人として見られてるのかな??」
赤い顔をした西條さんがそう聞いてきた。
「そ、そうだね、周りから見たらそう見えてるとおもうよ」
そうなれれば嬉しいんだけどね…
「三津島くんは、か、彼女とか欲しい??」
西條さんが横目でチラチラと見てきている。
「そ、そりゃ、欲しいけど、俺なんかに彼女なんてできるかな…」
「できるよっ!三津島くんがいい人だってことは私は分かってるよ!」
グッと顔を近づけて話してくる西條さんに、「あ、ありがとう。」と少し後ろに仰け反りながら返す。
ここで西條さんに「彼氏欲しい?」とは怖くて聞けないヘタレな俺だった。
そんな話をしていると、西條さんが頼んだ季節のパンケーキと、2人の飲み物が運ばれてきた。
いちごやさくらんぼ、キウイにマンゴーなど色とりどりなフルーツとバニラアイスが綺麗に盛り付けられたパンケーキを見て、西條さんの目もキラキラと輝きが増していた。
「みて!めちゃくちゃ可愛いーよ!」
そう言いながら色々な角度で写真を撮る。
写真を撮っている時に、俺が頼んだ台湾カステラも運ばれてきた。
1つのお皿にカステラと生クリーム、バニラアイスが盛り付けられていて、シンプルだかとても美味しそうな一皿。
「三津島くんのも一緒に撮るよ??」
そう言って2つのお皿を近づけて写真を撮る西條さん。
何枚か撮影して、「ありがとう!じゃあ、食べよっか!」
パンケーキを一口大に切り口へと運ぶ。
「うっわ!めっちゃ美味しい!これは千晴たちとも来なくちゃ!」
美味しそうに食べる姿を見て
西條さん楽しそうでよかった。
と一安心する俺。
「三津島くんのはどう??」
そう言われてフォークでカステラを切ろうとするとプルプルの感触に驚いた。
「おぉ!すごいよ西條さん!こんな感触なんだね!」と言いながら一口食べる。
口の中に入れるとちょうどいい甘さとプルプルなのにフワッとした不思議な口溶けに思わず笑顔になる。
「美味しいよ!あと、口の中が面白い!何個でも食べれそう!」
「うわー気になるー私もそれにするべきだったかなー」
と悩ましい表情の西條さん。
「よ、良かったら反対側ひと口食べてみる??」
我ながらなかなか大胆な提案をしてしまった。
「い、いいの?せっかくだしひと口だけ」と言って自分のフォークで切り取り口に運ぶ西條さん。
「ホントだね!不思議な触感!これはこれでアリだね!」
ニコニコする西條を見て俺は笑顔になっていた。
昼ごはんここにして良かった…こんな楽しそうな西條さんが見れるなんて…てか、これって普通にデートだよな…
他の男子には冷たいのに俺には優しく明るい西條さん。
西條さんにとって俺ってなんなんだろう?
3年生で初めて同じクラスになって、こんな短時間で隣に座って、笑い合えるほどの距離感に普通なるものなのかな?西條さんも俺のこと……いやいや、それは無いだろう…
好きな子と同じ時間を過ごせることは、とても嬉しいことなのだが、まるで西條さんも自分のことが好きであるような錯覚を起こしそうになる。
モグモグとパンケーキを食べる姿を横目に見ながらそう考える。
「どうしたの?三津島くん全然食べてないよ??」
俺は考えごとをしていて手が止まっていたみたいだ。
少し気持ちが暗くなりかけてたのを誤魔化すように慌てて
「いや、カラオケで何歌おうかなーって考えてた。」
「この前三津島くんはみんなの前で歌ってたから緊張してないかもしれないけど、私、千晴と望美の前でしか歌ったことないから、めちゃくちゃ緊張してるんだよ!」
西條さんと2人っきりでカラオケなんて俺も緊張してるよ!
「そ、そう言われると俺も緊張してきたよ」
自分のカステラを食べ出すが、緊張で味が分からなくなってきていた。
2人とも食べ終わりそろそろ店を出ることになった。
「じゃ、じゃあそろそろいきますか。」
そう言って伝票を持ち席を立つ。
「そ、そうだね。」
西條さんも席を立ち俺に続く。
レジでお金を払おうとすると、自分の分のお金を払おうとする西條さんを慌てて止める。
「いやいや、ここは俺が払うね。」
元々今日かかるお金は全部自分が出そうと思っていた俺、普段から滅多に出かけることが無いので、中学生にしてはお小遣いは溜まっている方だ。
「ここに来たいって言ったのも私だし、出してもらうのは悪いよ!」
「初めて一緒に来れたから今日は出させて欲しいな。」
あまり支払いに時間をかけても他の人に迷惑だと思い、さっと料金を払う。
「後でちゃんと返すからね!」と言う西條さんの耳元に顔を近づけ、「なら、また今度一緒に来た時に出して」と囁く。
急に耳元で囁かれた西條さんは、「ひゃっ、は、はい…」と体をビクッとさせ顔を赤くして俯いた。
「ありがとうございましたー」
店を出て近くのカラオケ店まで歩いて、ようやく少し落ち着いた様子の西條さんから
「あ、ありがとう、ごちそうさまです。また行こうね」と言われて「俺でよければいつでも行くよ。」と返す。
そんなやり取りをしているうちにカラオケ店に着いた。




