21話
自分達のコートに帰ってきた。
次は同じクラスの新山たちとの試合だ。
この前のことがあるから新山は苦手だなぁ。
西條さんと仲良くしていたことを責められた俺は新山のことが苦手になっていた。
「おっし、次勝てば決勝だな!頑張ってこうぜ!」
チームメイトを鼓舞する涼也。
「せっかくだからな!ここは優勝目指そうぜ!」
勝負事に真面目な瑛太も気合を入れている。
「うん!」「頑張ろうや。」「足引っ張らないようにするよ!」
他のチームメイトもやる気を上げる。
西條さんも応援してくれたし、ここは負けたくないな。
「俺も精一杯やるよ。」
みんなで頑張ろうと話し合っていると、試合が始まることに。
初めのジャンプボールのとき、背の高いからと選ばれた俺と新山が並ぶ。
「はっ、ちょっと見た目がマシになったと思ってお前みたいなのが調子のんなよ」
試合開始直前に新山に挑発される。
集中を崩さないように何も反応せずにボールが投げられるのを待つ俺。
ピー
試合開始と同時にボールが上に高く投げられる。
2人同時にジャンプして、先にボールに触れたのは俺だった。
「クソっ」
自分がボールを奪えなかったため悪態を吐く新山。
転がっていったボールを拾った瑛太がドリブルをしながら相手コートに攻め入る。
新山チームはクラスでも比較的運動神経の良いメンバーで構成されているため、すぐに瑛太の元へボールを奪いに来るが、囲まれる前に涼也へパスする。
そのまま素早くゴール近くまで行きシュートしゴールを決める涼也。
「なにやってんだよ!ちゃんと止めろよ!」
先制点を取られたことにイラつき自分のチームメイトへ怒鳴っている新山。
次は自分たちの攻める番になり、まだ自分達のコートへ戻りきれていない涼也たちの横を抜け速攻を仕掛ける新山たち。
俺たちはなんとかボールを奪おうとするが、そのまま綺麗なパス回しで翻弄され、新山にゴールを決められてしまう。
そこから点を決めたり決められたりで、新山チームのリードだがそこまで点差が開いていない状態で前半が終わる。
前半15分、休憩3分、後半15分の1試合。
途中の休憩になったが、チームメイトの1人の息が前半でかなり上がってしまっていた。
「はぁ、はぁ、ご、ごめんね、もうバテちゃって」
「大丈夫大丈夫!みんなでカバーしたら良いだけだろ?気にすんな!」
息を切らしたチームメイトに優しく声をかける瑛太。
「そうだな、前半頑張ってたじゃん!よかったぜ!」
新山のチームと違い、自分達のチームメイトを攻めることがない俺たちBチーム。
「まだまだチャンスあるよ!」
「チームワークで勝負だね!」
「後半全力だして頑張ろう!」
休憩が終わり後半戦が始まった。
なんとかパスを繋いで点を取って行く俺たち。
新山チームも疲れが見え始めたとき、コートの外から応援の声が聞こえた。
「頑張れー!」
「いけー瑛太ー!」
「三津島くん!」
応援に来てくれた西條さんたちの声だった。
声がした方を見ると、胸の前でギュッと手を握りしめてこっちを見ている西條さんが見えた。
西條さん達来てくれたんだ…
「いけー直樹!」
涼也からのパスをセンターライン受け取った俺は、そのままドリブルしながらゴール付近まで行き、レイアップシュートしようとするが、そこに新山がブロックしに来た。
「くそっ!なんで俺じゃなくてお前なんだよっ!」
西條さんから声援を俺が受けた事に対して嫉妬心を燃やす新山。
ジャンプして空中にいる俺に強引にぶつかって来た新山。
空中で体をぶつけられて無理な体制で着地してしまう。
すぐに立ち上がるが、なにやら足首に違和感を感じた。
ズキっとした痛みに顔をしかめていると、涼也が心配そうな顔で駆け寄ってきた。
「直樹!ヤバそうな体勢だったけど足大丈夫か???」
「ちょっと痛むけどなんとか…、後半もあとちょっとだからとりあえず我慢するよ。」
「わかった!でも無理はすんなよ!この試合終わったら保健室いくぞ!」
「わかった。」
足を負傷し庇いながらの俺と、もう体力が尽きた1人のチームメイト、涼也や瑛太、残りのチームメイトも奮闘するも、ズルズルと点差が開いていきそのまま負けてしまった俺たち。
試合が終わり、保健室に行こうとした時に新山から声がかかった。
「はっ、俺らの勝ちだわ、ダセェダセェ、負けたやつは隅っこで大人しく見とけよ!」
その挑発に「あ?お前のしたことはどう考えても反則だろうが!まずは直樹に謝るのが普通だろうが!」と瑛太が新山の胸ぐらを掴もうとするが涼也がそれを止める。
「瑛太、そんな奴相手にすんな、まずは直樹を保健室連れて行く方が先だろ」
「くそっ」
新山のニヤニヤした顔を背に3人で保健室に向かった。
保健室につき、養護教諭の先生に足を見てもらう。
「んー軽い捻挫かな、とりあえず湿布貼っとくからしばらく大人しくベットで横になっときな。他の子達はもう体育館に戻ってなさい。」
保健室の先生にそう言われた涼也達。
「はい、じゃあ俺たちは戻るなー!安静にしとけよー!」
「くそっ、新山のせいで!また来るわ直樹!」
「ありがとう、西條さんたちのバレー応援してきて。」
そう言って保健室を出て行く涼也と瑛太。
それからしばらくすると「ちょっと職員室に行ってくるから大人しくしてるのよー」と言いながら先生が保健室から出て行った。
負けたなぁ……西條さんが応援してくれたのに…くそっ…悔しい…
そう思いながらベットで横になっていると、ガラガラと保健室のドアが乱暴に開いた音が聞こえた。
「三津島くん!!」
思いの外大きな声に身体がビクッと跳ねて思わず「はい!」と返事をした。
シャッとカーテンが開けられた先には少し息の上がった西條さんの姿が。
「さ、西條さん!?どうしてここに!?試合は??」
驚きながらそう聞くと
「私らあのあとすぐに負けちゃって、三津島くんが怪我して保健室にいるって渡辺くんから聞いて走ってきたの!怪我は?大丈夫なの!?」
「先生が言うには軽い捻挫だってさ、湿布貼って安静にしてたら大丈夫だって、わざわざ来てくれてありがとう」
そう言われた西條さんは「ハァー」と息を吐き
「よかったぁ…めっちゃ心配したんだよ…あ、でも捻挫なら良くはないよね!」
とりあえず安心したような西條さん。
「ごめんね、心配かけちゃって、西條さんはまだ戻らなくて大丈夫なの?」
「うん、負けちゃったし体育館いても応援する相手もいないしね。」
そう言いながらベットの脇に、近くにあったイスを持ってきて座る西條さん。
「大丈夫?まだ痛むの??足。」
心配そうな顔で、横になっている俺を覗き込んでくる西條さん。
「だ、大丈夫だよ、もうほとんど痛みもないし」
距離感の近さにドキドキが止まらない。
「無理しちゃダメだよ?」
そう言って元の位置に戻る西條さん。
「そうだ、ありがとうね三津島くん、1試合目のとき応援来てくれて。三津島くんのお陰で頑張れたよっ!ちゃんとお礼言いたかったんだ。」
笑顔でお礼を言う西條さん。
「ごめんね、せっかく応援来てくれたのに俺たち負けちゃって」
「ううん!バスケしてる時の三津島くん凄いカッコよかったよ!」
顔を赤くしてそう言う西條さんにつられて俺も顔が熱くなった。
「あ、ありがとう」
赤くなっているだろう顔を見られるのが恥ずかしくて、少し布団を顔の方まで上げた。
「おい…これ今入っていいのか?」
「待て待て、流石に今はダメだろう…」
「とりあえず一旦体育館戻った方がよくない??」
「こんな雰囲気邪魔しちゃだめだよ……」
と涼也たちであろう声でコソコソと話し声が聞こえてきた。
何か言おうかと思っていると
「君たち揃って何をしてるのかな??」
職員室に行っていた先生がちょうど帰ってきて、声を掛けられた4人。
その声を聞いた西條さんはパッと椅子から立ち上がり保健室の外に向かった。
「千晴たち何してるの?お見舞いに来たなら入ってきたらよかったのに!」
「いやぁ…」「今から入ろうとしたよ?」と言う涼也と椎名さん。
「お前ら、なんか良い雰囲気だったから入りづらくて。」「瑛太!それはしーだよ!」
「もう!へんな事言わないでよ!」
と焦ったような西條さんの声が聞こえた。
保健室に入って来た涼也が「そろそろ閉会式みたいだけど直樹行けそうか?」と声を掛けて来た。
「軽い捻挫だったから歩くぐらいなら大丈夫だと思う。」
俺はそう言ってベットから出て足首の感触を確かめる。
うん…大丈夫そうだな。
「オッケー、特に痛みもないから行けるよ。」
そう言って保健室から出ようとすると先生から「大丈夫だと思うけど、もし痛みが増したらちゃんと病院で検査してもらうようになー」と言われ、「わかりました。」と返事をして保健室を出る。
そのまま6人で閉会式があるグラウンドへと向かう。
涼也たち4人が前を歩き、俺と西條さんは隣に並んで後ろからついて歩く。
「大丈夫??ほんとに痛くない??」
隣を歩く西條さんが心配そうに聞いてくる。
「うん、大丈夫だよ、心配させちゃってごめんね。」
「ううん、無理はしないでね」
「ありがとう。」
西條さんが心配してくれることが嬉しくなって、つい、笑みが溢れてしまった。
西條さんは「ふぁ」と声にならない言葉を吐き、顔を隠すように下を向いてしまった。
なんとも甘い空気が流れる2人。
そうこうしているうちにグラウンドに着き、閉会式が始まる。
式の途中で優勝したチームの表彰式があったが、三津島達に勝った新山チームは決勝戦で負けたため、表彰されることは無かった。
その後も何事もなく閉会式が終わり、今日はこれで解散という流れになった。
制服に着替え終わり帰ろうとしたのだが、
「直樹ーこの後暇ー?」
涼也から声を掛けられた。
「特に用事はないけど、どした??」
そのまま家に直帰しようとしていたため特に予定の無い俺は涼也にそう返事をする。
「伊勢から帰りに6人でファミレスで打ち上げしようってLINEきたんだけど、行けるー?」
「うん、行けるよ。」
二つ返事で返す。
「おっけ!瑛太にも声掛けてくるわ!」
そう言って瑛太の元へ駆け寄って行った涼也。
最近6人で一緒にいることが増えて来たなぁ…
ぼんやりそんなことを考えながら涼也の帰りを待った。
その後すぐにカバンを背負った瑛太と共に戻ってきた涼也。
「瑛太も大丈夫だったわ、じゃあ伊勢達のとこ行こうぜ!」
自分のカバンを持ちながら伊勢さん達3人が待っている西條さんの席へと向かう涼也。
「俺たちも行こうぜ!」
そう言われた俺も瑛太と共に涼也の後を追う。
「よーし、メンバーも揃ったし…打ち上げ行きましょー!」
と、元気よく言う伊勢さんを先頭に教室を出る6人だった。




