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19話

しばらく歩いていると、目的のクレープ屋に着いた2人。

周りには中学生や高校生達で賑わっていた。


「最近できた店でね、この間千晴たちと来たんだー、前も混んでたけど今日も混んでるねー」

「凄い流行ってるね」

そう言って注文するために列に並ぶ西條と三津島。


列に並びながら三津島は辺りを見回すと、女子の多さに驚く、中には男子もいるのだが、そういう人は恋人同士で来ている人ばかりなのに気づいた。

『これ…2人で並んでると俺も彼氏だと思われてるのかな??』

そう思うと凄くドキドキしてきた三津島。


「注文決めとこうよ!三津島くんどれ食べる??」と言いながらスマホでクレープ屋のサイトを開け、2人で画面を見るために肩と肩が触れるぐらいの距離まで近づいてきた西條。

『わわ、わ、ち、近い!』

おどおどする三津島と違い、「前はキャラメル系だったからチョコ系にしようか…むむむ…悩ましい!!」

と真剣に画面を見ながら悩む西條。

「結構いろんな種類があるんだね。西條さんオススメとかある??」

「前に千晴と望美とで来た時に食べたキャラメル系のクレープ美味しかったよ!」

ニコニコした顔で話す西條に

「じゃあそれにしようかな」

自分では決めきれないと思い、西條のオススメにすることに決めた三津島。


「んーじゃあ私は今回チョコ系にしようかな!」


2人が何を食べるか決めたところで、ちょうど三津島たちが注文する番になった。


2人とも何にするか決まっていたため、西條がパパッと注文を済ます。

できたクレープを受け取り、お金を払うときに「誘ってくれたし、俺が払うよ」とサッと2人分の料金をまとめて払う三津島。


「えぇ!悪いよ自分の分は自分で払うのに」

「いいよいいよ!お礼って事で気にしないで。」

そんなやり取りがあったあと、どこか落ち着いて食べれるところを探す2人。


「あそこの席空きそう!いこっ!」

そう言って指差した先で、ちょうどカップルが立ち上がったところだった。


席を確保した2人は早速出来立てのクレープを食べる。

「じゃあありがとう三津島くん、いただきます。」

そう言ってクレープを食べ出す西條。

三津島は思わず西條の食べる姿を見つめてしまい、「そ、そんなに見られたら恥ずかしいかな…ほらっ三津島くんも食べて!美味しいよ!」顔を赤らめた西條に言われ、我に帰った三津島も「いただきます。」とクレープを食べる。


『おぉ!このクレープ美味しいな』

「すごく美味しいよ西條さん!」

「でしょ!キャラメル系のクレープも美味しいよね!こっちのチョコ系のも当たりだよ!」

「一口食べてみる?」といたずらっ子な顔をした西條が自分が持っているクレープを三津島の方へと差し出しながら、とんでもないことを言ってくる。


『そ、それって間接キスってこと!?!?えぇ!?』

思春期真っ只中、それも好きな相手からの言葉にもう大パニックの三津島。

「ほら、あーん」

口元まで来てしまったクレープと西條の顔を交互に見て、意を決して『一口だけならいいかな…』と覚悟を決めて食べようとした時


「あれ直樹じゃん!こんなとこで何してんの?」

と声をかけられた。

その言葉にハッとなり、声の方に振り向くと、姉である優子とその友達の姿があった。


「ね、姉ちゃん!?」

「え!?三津島くんのお姉さん???」


「こんにちは、直樹の姉の優子です、ごめんね!いいところだったのに声かけちゃって!」


本当は直樹が食べる直前に「嘘!あーげない」と言ってイタズラする予定だった西條だが、その直前に声をかけられたことにより、側から見たら完全に恋人同士のやり取りになってしまった西條の顔は真っ赤になってしまった。


「だから邪魔しちゃダメって止めたのに!無視して優子が行っちゃうから!!彼女ちゃん、弟くん、ごめんね邪魔しちゃって」と申し訳なさそうに謝ってくる姉の友達の瀬良せら 真希まき


「彼女………いえ、そんな気にしないでくださいっ、それと、三津島くんとは、な、仲のいいクラスメイトでして…そんな、彼女だなんて…」

彼女と言われた西條は直樹をチラチラ見ながら照れと恥ずかしさでアタフタする。


「いいところだったのにごめんね!」

そう悪びれた様子もなく謝る優子。


「ほら!もう邪魔しないのっ!」

まだちょっかいをかけそうな優子を引っ張って行こうとする真希。

「直樹のことよろしくね、じゃ!」

そう言って引っ張って行かれそうになる優子に

「西條です!私西條明里と言います!これからよろしくお願いします!!」

初めて会った三津島の姉への自己紹介が謎の形になってしまう西條。


「明里ちゃんね!直樹って自分から遊びに誘ったりしないタイプだから、どんどんいろんなとこ連れ回してあげてね。」

「はい!私で良かったらいくらでも誘いますね!」

グッと胸元で拳を握る西條。

「姉ちゃん!もういらん事言わんでいいから!」


「ごめんね2人とも、優子!行くよ!」と今度こそ真希に連行されて行く優子であった。



嵐のような優子の襲撃が終わり、なんだかドッと疲れた2人。

食べかけのクレープを完食し、「そろそろ帰ろっか」とベンチを立つ西條。

「ごめんね、騒がしい姉ちゃんで」

謝りながら西條に続く三津島。


「ううん、ちょっと恥ずかしかったけど、優子さん楽しいお姉さんだったね!」

「まさかこんな所で会うとは思わなかったよ。」

そう言ってため息を吐く三津島


クレープの包み紙を近くのゴミ場に捨てて帰路に着く2人。

もう少しで西條の家に着く頃に

「土曜日楽しみにしてるね!早速三津島くん連れ回しちゃおー!」

ウキウキとしながら上機嫌の西條が言う。

『緊張するなぁ…実質デートだよな…』

「お、俺も楽しみにしてるよ、西條さんと出掛けるの…」

「良かった、2人でいっぱい楽しもうね!」


そんなやり取りをしていると、西條の家の前に着いた。

「じゃまたLINEするね!三津島くん!」

「うん、今日は誘ってくれてありがとう。」


西條と別れ自分の家に帰る三津島だった。



その日の夜、自分の部屋でベットに横になっていると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。


「なにー??」

返事をすると、優子が部屋に入ってきた。


「今日会った明里ちゃん…だったっけ?あの子が前に一緒の傘に入ってた子よね??あの時は顔まではみえなかったけど、めちゃくちゃ可愛い子じゃない!!」

部屋に入るなりテンション高めで聞いてた優子。


「そ、そうだね、あの時の人が今日会った西條さんだよ。」

気になっている人というのは姉に知られているのでもう正直に答える直樹。


「あんなに可愛い子とあんな雰囲気なんてちょっと信じられなかったわ…側から見たら完全にカップルだったってのに、あれでまだ付き合ってないんでしょ??」

弟の恋愛事情に鼻息荒く興味深々の姉。


「付き合うなんて…俺じゃ無理だろ…」

ボサボサの髪を切り、ダサいメガネをコンタクトに変え、外見はイケメンに変貌した直樹、心は少しづつ明るくなってはきているが、まだまだ根暗な自分のままなため自分に自信がない。


「はぁ…あんたね、あれだけ可愛い子よ??当然別の男子から告白ぐらいされてるでしょうに!そんなウジウジしてたらポッと出てきた男に取られるわよ!!」


たしかに、西條はよく告白されているみたいだ。

今は3年生になったが、まだ西條が2年の時は上の学年、下の学年問わずに告白されていたと噂で聞いたことがある。


もし西條が他の誰かと恋人になるかもしれないと想像するだけで胸の奥がキュッと苦しくなる三津島。

「自分に自信が持てたら西條さんにちゃんと話すよ…」


「はぁ……私は直樹なら大丈夫だと思うけど、もう中学も最後なんだからしっかり気合い入れなさいよ。」


そう言って部屋を出て行く優子、その背中に

「うん、自分なりに頑張ってみるよ。」

そう言う事しかできなかった。


『ありがとう姉ちゃん…でもいいところで邪魔はして欲しくなかったかな…』




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