111話
何かちょっかいを掛けてくると思ったけど、本当に静かで大人しくしている明里さん。どうやら寝てしまったみたいだ。
昼ごはんも食べて、涼しい部屋で毛布に包まっていると眠くなるのも分かる。
壁に掛けてある時計の秒針が進む音とエアコンの風が出る音、そして明里さんの静かな寝息。
起こすのもアレだし、俺もちょっとだけ寝てしまおう…
そう思ってベットにもたれながら目を閉じた。
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「…………り」
…ん…
「明里!」
…誰の声?
「もう、全然起きないわね…直樹くーん」
あれ?愛菜さんの声が聞こえる気が。
「2人ともー起きてー」
「おわ!」
バッと目を開けるとすぐ近くに愛菜さんが立っていた。
「おはよう、もう7時だけど大丈夫?」
「あ、え、おはようございます?7時?」
時計を見ると本当に7時を過ぎていた。
慌てて起きあがろうとするけどいつの間にか明里さんが抱きついていて立つことが出来ない。
「明里起きて!」
「うぅーん…」
声を掛けても身を捩るだけだ。
「明里!俺そろそろ帰らないと…」
「…直樹?」
身体を揺すりながら声を掛けるとやっと目を開いた。
「えへへ、直樹ー」
寝ぼけているのかそのまま俺首に腕を回して抱きついてきながらキスをしてきた。
「あらあら」
微笑ましそうにその様子を見ている愛菜さん。
「ちょ、待って待って!明里後ろ!」
「なに〜?………」
俺の言葉を聞いて後ろに振り返ると固まってしまった明里さん。
「おはよう、若いっていいわよねぇ」
「な、なんでママがいるの!?」
明里さんはそう言って毛布を頭から被って「うーうー」と唸りながら貝になった。
「なんでって、もう7時なのにラインしても返事無いし、部屋見にきたら2人とも寝てたから起こしてたのよ」
「え!?もうそんな時間なの!?」
次は毛布を跳ね除けて時計を見る明里さん。
潜ったり出てきたりと忙しいな。
「本当だ!ちょっとだけ寝るつもりだったのに思いっきり寝ちゃってたー、ママありがと!直樹時間大丈夫!?」
「親に何も連絡してないからそろそろ帰らないと」
「じゃ、二度寝しないようにするのよー」
そう言って部屋を出ていく愛菜さんだったんだけど、部屋のドアを閉める前に
「明里ー直樹くーん、とりあえず健全なお付き合いにしなさいよー」
とニヤニヤしながら言ってからドアを閉めた。
「ちゃんとまだキスしかしてないもん!」
明里さんは真っ赤になりながら、もう閉まったドアに向いてそう叫んでいた。
…それを親に向かって言うのもどうかと思うんだけど。
「えっと…大丈夫?俺そろそろ帰るよ?」
顔を赤くしてハァハァと肩で息をしている明里さんにそう告げる。
「う、うん」
「服、着替えるね」
パパッと置いてある制服に着替える。
今回は初めから後ろを向いてくれていた。
「服預かるね!」
そう言って脱いだTシャツとハーフパンツを持つ明里さん。
「全然持って帰って洗濯してまた持ってくるけど…」
「だーめ!ウチでやるから!」
服をギュッと胸の辺りで抱え直した。
「あ、ありがとう」
「外まで送るね」
抱えていた服をベットの上に置いて部屋のドアを開ける明里さん。
その後をカバンを持って着いて行き玄関へと向かう。
靴を履いてドアを開けると、夕暮れを過ぎて薄暗くなっていた。
ムワッとした空気を感じながら外へ出ると、ちょうど剛志さんが仕事を終えて帰ってきた。
「おかえりパパ」
「お、お邪魔しました!」
「…暗くなってきてるから気をつけてな」
一言言ってから家へと入っていった。
剛志さんって厳ついけど言葉から優しさが滲み出してるよなぁ。
「じゃあまたね!」
「うん、明日も頑張ろう」
軽く触れるだけのキスをし、明里さんに見送られながら自分の家を目指した。
…遅くなっちゃったな、母さんに何も連絡してないから怒ってるだろうなぁ。
家に着いてリビングに入ると
「遅かったわね、こんな時間になるならLINEぐらい送りなさいよね、ご飯冷めちゃってるわよ」
「ごめん、明里の家で勉強してた」
…実際はほとんど寝てたんだけど…
「まぁ次からは一言連絡入れなさいよ」
「気をつけます」
そんなやり取りがあった。
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テスト2日目
国語で少しつまづいたけど、残りの音楽と家庭科はまぁ特に問題なく出来た気がする。
涼也も今日は昨日ほど落ち込んでなかった。
テストが終わって放課後になったんだけど、今日は珍しく明里さんと一緒に帰れなかった。何やら伊勢さんと椎名さんと用事があるらしい。
…ちょっと本屋にでも寄って帰ろう。そろそろ漫画の新刊が出てるはず。
明里さんが隣に居ない久しぶりの1人タイムに少し寂しさを覚えながら本屋へと向かった。
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汗だくになりながらも本屋に着いた。
店に入ると空調の効いたヒンヤリとした空気が気持ちいい。
…あぁ、涼しい…夏なんて無くなれば良いのに…
シャツの首元をパタパタしながら漫画コーナーへと向かう。
…お!出てる出てる。
お目当ての漫画を手に持った時、後ろから女の人に声を掛けられた。
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