110話
「よかった、サイズ大丈夫そうだね!」
戻って来た明里さんが着替え終わった俺を見て安心したようにそう言った。
「うん、ピッタリだよ、ありがとう」
「えへへ、じゃあ早速お勉強開始しますか!」
机の上に明日のテスト教科の国語、音楽、家庭科の教科書とノートを出す明里さん。
「何からやる?」
「音楽と家庭科はまぁ大丈夫だろうし、とりあえず国語からやろうかな」
「はいこれ、国語のノートと教科書」
「ありがとう」
ノートを開くと見やすいように綺麗に整理されている。
…これが勉強できる人のノートの取り方なんだろうなぁ。
「じゃあ私は音楽やろうかな、聞きたいことがあればなんでも聞いてね」
よし、真面目に勉強頑張ろう。
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それからしばらくの間は集中して勉強出来ていたんだけど、エアコンの効きが良くて寒くなって来た。
「明里?」
「ん?分からないところあった?」
「いや、それは今の所大丈夫なんだけど、ちょっと寒いかなぁと…」
「エアコンの温度上げようか?…あ、ちょっと待ってね」
そう言って立ち上がった明里さんは自分のベットから薄い毛布みたいなのような物を取ってきた。
「ついでにちょっと休憩しようよ!これ持って立ってくれる?」
…?
言われた通り毛布を貰って立ち上がると、俺の前に明里さんがきた。
「このまま座って後ろから毛布で私ごと包んでくれる?」
足の間に明里さんを入れるってことかな?
近くにあったクッションをパッと取り、座った瞬間に自分の股の前にセットした。
「いいよ」
足の間に明里さんが座って俺に身体を預けた。
…これで毛布で包んだらいいんだよな。
毛布を広げて、自分の体と一緒に明里さんの体も包む。
普段寝る時に使っている毛布なんだろう、とても良い匂いがする。肌触りがとても気持ちいい。
「寒い部屋で毛布に包まれるって凄い気持ちいいよね!」
「それわかるなぁ、背徳感?みたいな物もあるよね」
お互いに薄手の服装なのもあって明里さんの感触がダイレクトに伝わる。
太ってるわけでも無い、むしろ痩せてると思うんだけど不思議と柔らかい感触で癖になる。
身長差でちょうど俺の鼻の下辺りに明里さんの頭が来るせいで、息を吸うだけで明里さんの匂いでクラクラする。
「あ、な、直樹!ちょっとまって!私汗かいたから!」
無意識に俺の鼻息が荒くなっていたのか、俺の腕の中で急にアワアワしだした明里さん。
「全然臭く無いよ?むしろいい匂いだと思うんだけど…」
そう言って暴れないようにギュッと抱きしめてから首に顔を埋めて深呼吸してみた。
「きゃっ!だ、だめっ!」
恥ずかしがる仕草がめちゃくちゃグッと来てしまった。
…座る時にクッション挟んでおいて正解だったな。
何がとは言えないけど大変なことになってきた。
しばらく匂いを堪能した後に腕の力を緩めると、明里さんはぐたっとして息も荒くなり、耳まで真っ赤になっていた。
「も…もぉー…だめって…言ったのに…」
「はは、ごめんごめん好きな匂いすぎて」
「うぅ…ばか…」
そう言ってまた俺の体に背中を預ける明里さん。
………やば!ちょっと拗ねた明里さんもめっちゃ可愛い!
数分の間お互い無言の時間が過ぎた頃
「お返しだからね!」
と声が聞こえたかと思うと、前を向いていた明里さんが身体を斜めにして俺の首に顔を埋めてきた。
「ちょ!」
急な行動に反応出来ずに固まる俺。
さっきとは逆の形になってしまった。
ちろ…
「おっふ」
首になにやら暖かい物が当たった感触と明里さんの髪の毛がくすぐったくて変な声が出た。
「な、何を」
「ちょっとしょっぱい…かな?ふふ、倍返しだよ!」
…な、舐めたのか!?いやいやいやこれはダメだって!
「倍返しってそれはちょっとやり過ぎじゃない!?」
顔が熱い…
「えー、だってやめてって言ったのにやめてくれなかったのは直樹でしょ?」
そう言ってまた俺の首に顔を埋める明里さん。
ちろ…ちろ…
「明里!?待って待って!うぅ…そうですね…ごめんなさい…と、とにかく汗かいた後だから!もうそれはやめよう」
肩を持って体を前に向けようとするけど抱きついてきて離れない。
「ふーんじゃあ汗かいて無い時なら良いんだー」
やっと離れたかと思うと、俺の顔を覗きながらニヤニヤしている。
「い、いや、そう言う訳では…」
ドキドキしながらもなんとか言葉を発するけど、モゴモゴとしか言い返せない。
いつもよりやけにグイグイ押してくる…完全に明里さんのペースになってしまった。
今の格好でも色々とヤバいのにこれ以上されるとどうにかなってしまう…
「べ、勉強!勉強しないと!」
慌てて咄嗟に出た言葉が勉強だった。
「私まだ休憩してるー、大人しくしてるからこのまま居てもいい?」
「まぁ大人しくしてくれるならいいけど…」
なんとか空気を変えることに成功した俺は、集中なんてできないけどとりあえず家庭科のノートをペラペラとめくった。
…テストで負けた時が怖くなってきた。なんでも言うこと聞く権利でいったい何を言われるんだろう…
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