106話
「お、おはよ!」
「お、おはよう」
次の日、迎えに来てくれた明里さんはどこか挙動不審だった。
なかなか目を合わさずチラチラと俺のことを見てくるが、俺も昨日のことを思い出してしまって明里さんの唇に意識が持っていかれてる。
「行こっか!」
「そ、そうだね」
手を繋いで歩き出した俺たち。
隣を歩く明里さんの首元に昨日俺がプレゼントしたネックレスが見えた。
「あ、ネックレス、着けてきてくれたんだ」
「もちろん!こうやって制服の中に入れておいたら見つからないだろうし」
そう言いながら制服の胸元にきちんと入れると、確かに普通に見るだけでは分からなくなった。
…あげたプレゼントを着けてくれてるのって普通に嬉しい。
「あと1ヶ月だねー」
…えっと夏休みかな?
「夏休み?」
「うん!今年は夏休みが楽しみで仕方ない感じ!」
「はは、俺もだよ」
去年までは飯とゲームと寝るぐらいしかすることなかったし。
「今年、みんなで海とか行きたい!」
「海かぁ…俺釣りぐらいでしか海行ったことないんだよね」
…しかも小さい時に家族と。
「そうなの!?ふふ、じゃあ今年は行かなきゃだね!その前にまずはテストだけどね!」
「そうだね、勝負の件忘れないでよ」
「もちろん!何頼むか決めとかないと」
「いやいや、まだ明里が勝つとは決まってないからね」
やいのやいのと話しながら登校するとあっという間に学校に着くのだった。
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昼休み
「あーテストめんどくせぇなぁ…」
給食も食べ終わりガヤガヤと煩い教室の中で、机に項垂れながら文句を言う涼也。
「3年からはテストの点数が内申点とかにも響くんじゃない?涼也サッカーの推薦狙ってるんだろ?」
「狙ってるー…ってそれマジ?」
「なんか誰かが言ってたような…気もする…」
勘違いだったらごめんだけど。
「マジだったらやべぇじゃん!サッカーの実力だけでイケると思って勉強する気全然無かったのに!」
「まだ1ヶ月あるし、間に合うんじゃない?」
「…そういや直樹って中間テストそこそこ点良かったよな?」
「まぁ悪くは無かったかな」
「勉強会やろうぜ!」
「別に良いけど…勉強会って言うぐらいならいつものメンバー?」
「そうだな、確か伊勢頭良かったはずだし…教えてもらおうぜ!」
そう言ってスマホをいじり出した涼也。
「おし、グループにLINE送っといたわ」
ヴァーヴゥーとポケットのスマホが震える。
《ヘルプ!頭いい人勉強教えて!勉強会しようぜ!》
《いつー?》
伊勢さんからの返信だ。
「そういや日にち決めて無かったな、いつにする?」
「放課後に図書室とかでいいんじゃない?」
「そうだな、テスト期間始まったら部活も休みになるしひとまずそれでいいか」
《テスト期間始まってから放課後図書室とかどうよ?》
《分かった》
《おけ!》
《りょ!》
《いいよ》
とりあえず瑛太以外は参加するみたいだ。
瑛太からの返事が無いので席を見てみると爆睡しているようだった。
「はは、どうせ瑛太も参加するだろ、あいつもテストヤバイはずだし」
それから5時間目の予鈴の後瑛太からも参加のLINEが来た。
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放課後になり、いつものように明里さんと下校する。
「渡辺くんから勉強会の提案なんて珍しいね」
「涼也ってサッカーの推薦で進学しようとしてて、テストの点数も内申点に響くんじゃない?って話したら焦っちゃって」
「ふふ、それで急に勉強会の話になったんだー」
「うん、みんなに勉強教えて貰いたいってさ」
「それなら望美に任せちゃお!教えるの上手いし、私は直樹に教えてあげる」
「ありがとう!これでテストは俺の勝ちだね」
「教える側だって勉強になるからね!」
キャッキャしながら帰る俺たちだった。
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勉強会の約束をしてから2週間がたった。
テスト期間へと入り、今日から部活は休みになる。
「よーし!じゃあ行きますか!」
「席空いてるかなぁ」
「空いてなかったらどうする?」
「えー、さすがに空いてんじゃね?」
6人でゾロゾロと図書室へと向かった。
図書室に着くとかなり混んでいた。
…普段はガラガラなのに皆んな考えることは同じか。
「えっと…6人が座れるテーブルは…」
「お!あそこ空いてんぜ!」
瑛太が指差した所を見ると、ギリギリ6人が座れる所が一箇所だけ空いていた。
「ラッキー」
テーブルを挟んで男女で分かれて座る。もちろん俺の前は明里さん。
涼也の前には伊勢さんが座った。
皆んなガチャガチャと勉強道具を机の上に並べて教科書を開く。
「で、涼也は何教えてほしーの?」
伊勢さんが涼也にそう聞くと
「えっと…できれば全部…」
静かな図書室でもギリ聞こえるで話す涼也。
「え…マジ?」
「うん、マジ…」
「…はぁ…今日だけで全部は無理だから、とりあえず数学から教える…もっと普段からちゃんとやるよーに」
「はーい、先生ー、よろしくお願いしまーす」
そんなやり取りがあったあと、伊勢さんによるスパルタ授業が始まった。
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