68.帰国③
【人物】
藤原夏良 主人公 31歳。 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は桓武天皇。養父が藤原冬嗣。藤原北家。良岑安世の名をもらう。妻は雪子、桜、京子。子は長松、宗貞、豊晨姫。
817年 弘仁8年4月
大明民さんを連れて、平安京の大極殿に藤原夏良と羽栗馬長とで参上した。
太極殿の帝専用の執務室にて、嵯峨天皇が待っていた。
羽栗馬長は、初めて嵯峨天皇と会うので、藤原夏良こと良岑安世と帝の顔が同じ事に驚きを隠せないでいる。
「あ、すみません。理解が追いついていないです」帝と藤原夏良の顔を交互に見比べている。
「あ、そうか、嵯峨天皇の弟の良岑安世と申します」藤原夏良は改めて挨拶した。
「帝と良岑安世様とはご兄弟だったのですか?」
「育った環境が違うだけかな。兄は天皇になるべく教育を受け、私は兄を補佐する官僚になるべく育てられたと言うことかな」
「全く知りませんでした。お兄様を補佐するために左大臣になられたのですね。そして渤海と唐へ行かれるとは驚きでしかありません」
横には冷静な大明民さんが様子を見ていた。
「こちらが大明民さんです。現皇帝の再従姉妹と聞いています」藤原夏良が説明した。
「初めまして、現渤海王大明忠の再従姉妹で帝補佐の大仁秀の妹になります。現皇帝の直系尊属は病弱な者が多いので心配です」流暢な日本語で話したので、帝は驚いた顔をした。
「日本にいたわけではなく、そんなに流暢な日本語を話せるのには理由が?」驚く嵯峨天皇は質問した。
「日本語を教えてくれた先生が良いのです」
羽栗馬長の方を見る大明民さん。
「私は普通にお教えしただけで、大明民様の覚えが驚異的なだけかと思われます」羽栗馬長は答えた。
「病弱な王が続くと国民は不安ではないのか?」疑問をぶつける帝。
「兄が長年政務を務めているので安定しております」
「なるほど、渤海に使節を送り、親密にしたいと考えているが、どう思われる?」
「渤海離れた身としては渤海と倭国が親密になる事は嬉しい事です」
「現在は日本と称しておるので慣れてほしい」
「申し訳ありません」
「遠い所まで疲れたであろう。ゆっくりされよ」
そう言われたので、皆で下がっていった。
「謁見が無事終わって良かった。大明民さんのお宿は決まりましたか?」
「はい。彦兵衛さんが手配してくださいましたので安心です」
「何か足りない事がありましたら高橋彦兵衛に申してください」
「高橋?」
「ええ、今回の遠征で姓を賜りました」
「おめでたいことですよね?」
「そうですね。官位ももらいましたから大変喜ばしい事です」
「なんで教えてくれないのかしら」
「どうしましたか?」
「いえ。お気になさらずに」
太極殿を出て朝堂院の所に彦兵衛が待っていた。
「お疲れ様でした」
「ありがとうございます高橋殿」
大明民さんが嫌味っぽく言う。
「どうしたんですか?」藤原夏良の顔を見ながら大明民さんを見る。
「姓を賜った事を良岑安世さんから聞いたので少しイラッとしているだけです」大明民さんが
少し声を荒らげていた。
「どうも、こういう事には慣れていなく、申し訳ない」
「はて、こういう事とはどんな事であろうか?」藤原夏良が思わず聞いた。
オドオドする2人である。
「実は」
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