64.渤海④
【人物】
藤原夏良 主人公 31歳。 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は桓武天皇。養父が藤原冬嗣。藤原北家。良岑安世の名をもらう。妻は雪子、桜、京子。子は長松、宗貞、豊晨姫。
817年 弘仁7年10月
渤海遣唐使と藤原夏良の一団は長安の街を確認できる場所まで来た。
渤海遣唐使は宮中へ向かい、藤原夏良達は城下で金大明氏捜索である。
「遣日使を探している。金大明氏と言う。」
「分からないなー」知る人はなく、なかなか見つからない。
「新しいお酒の話はないですか?」
「越州で新しいお酒があると言う噂ぐらいですねえ」
「越州って?」
「膠澳(コウトウ:今の青島市のあたり)の南の方にあります。」遣唐使ルートである。
「よし、膠澳へ向かおう」
帰国準備隊が準備する方へ向かう藤原夏良。
817年 弘仁7年11月
港が見えてきた。
大きめの渤海船が停泊してあるので、遠目でもわかった。そのまま船に向かう。
船の周辺には誰もいない。
「誰もいませんね」雇った通訳が不安げに言う。
近くの漁船で網を治している漁師に船員がどこにいるか聞いた。
「西南への道を少し行った先にある宿屋におるはず」
「ありがとうございます」藤原夏良は礼を言って向かった。
宿屋に到着し、宿屋の中に入ると、彦兵衛がいた。
「ご主人様、ご無事で良かったです」
「皆無事かい?」
「はい。大丈夫です。渤海船もお約束通り来てくれました。金大明氏は見つかりませんでした」
「越州で新しいお酒が出来たという噂があるので、行ってみたいと思っています」
着いてきてくれた通訳の李さんがお酒と聞いて、「越州には昔から有名な黄酒がありますよ」
と教えてくれた。
「何というお酒ですか?」
「紹興酒と言います。もち米から作ったお酒で、強いお酒です」
「帰国したら酒蔵を造ってると思うので、越州に金さんがいる気がしてきました。特に、遣唐使の航路ですしね」
「見つかるといいですね。では、私はこれで帰ります。ご無事に帰れることを祈っています」
「ありがとう」と言いながら藤原夏良は謝礼を渡し、李さんは帰って行った。
唐の言葉だろうか、羽栗馬長と李さんが言葉を交わしていった。
数日準備したあと、渤海船は越州へ向かった。
20日後越州に着く藤原夏良一行。
今までの中でも最大の港である。湾全体が港のようになっていて地形が港に適している。
「金さんがいるといいですね」羽栗馬長氏が港を見ている藤原夏良に声をかけた。
「日本から持ってきた交易品は全て交換していきましょう」彦兵衛が頷き、船倉へ向かっていく。
817年 弘仁7年12月
数日が過ぎ、日本への帰国準備と金さん捜索が続く。近くの酒造蔵を総当たりしている。
従者の一人と羽栗馬長氏が早足で来た。
「金さんを知ってる人がいるようです」
荷車に酒樽を載っけ、全員で歩いていく。
酒蔵の横にある事務所らしき建物に入っていく。
金さんが近づいてきたが、若くて雰囲気が若干違う。
唐の言葉で何か話す。
「金さんの息子さんです」
「おお、初めまして」合掌挨拶した。
「金大明さんは」
「昨年亡くなりました。藤原さんが来られるかもと、父から書と荷物を預かっています。」
藤原夏良はその場で崩れ、嗚咽した。
「間に合わなかった。金さん申し訳ない」
息子さんの金大仲氏の案内でお墓に酒を献上した。
「一緒に酒を呑みたかった」墓前で項垂れている藤原夏良。




