6.正七位上
【人物】
藤原夏良 主人公 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は藤原冬嗣。藤原北家
伊治 呰麻呂 生没年不詳は、奈良時代の人物。姓は公。官位は外従五位下・上治郡大領。
8世紀後半に陸奥国の族長で、朝廷から官位も授けられていたが、宝亀11年(780年)に宝亀の乱(伊治呰麻呂の乱/伊治公呰麻呂の乱)と呼ばれる反乱を引き起こした。
「すまん、律令制を作った藤原家と聞いて頭に血が登った」
剣を収めた伊治呰麻呂は深い息を吸った。
二郎丸鷹森も小刀を収めた。
「隊長、打ち合わせにない行動をされると困ります。」
「まあまあ、臨機応変にね」
「隊長?ますます分からんな」会話を聞いた伊治呰麻呂は徐々に力が抜けてきたようだ。
「理解できないのは、私も同じなので気にしないでください」二郎丸鷹森が助言する。
「農民の生活向上について話したいが、稲作に詳しい者はいないか?」藤原夏良が尋ねる。
「農家の者がほとんどだが、二平がいいんじゃないかな?呼んでくれるかい?」伊治呰麻呂が従者へ依頼すると、従者が下がり、二平を連れてきた。
「何か用ですかい?」
「二平殿、確認ですが、稲作の方法は種籾からで、種籾はどのようにして植えていますか?」
「そんなの、田んぼに入って、指でさしたとろに種籾入れてほい次にという感じだね。」
二平も皆んなも普通だという感じで聞いている。
「問題があるのかね?」伊治呰麻呂は聞く。
「京近辺の農家では選別して植え直します。そうする事で成長が均一になり、収穫出来るんです。しかし、これは手間も時間もかかるので、おすすめしません。」
「どうすれば?」「まずは夏前に苗を作ります」
「苗?」
「4-5月に種籾から一定程暖かい場所で成長して力を蓄えたものを苗と言います。6月に入ると苗が1尺程に成長しているので、小分けにして田んぼに植えていきます。この時、1つ1つの感覚は1尺程です。綺麗に並べて植えると日光が十分に行き届くので計りながら植えることが肝心です。」
「分かるか二平」伊治呰麻呂が聞いた
「言うことは分かるが、やった事がないので分からん。しかし、言われた事をする方が良い事は分かる。手間はかかるが、小さい時に過保護にする方がその後の育成が良いのはどんなものにも共通するということかの。ところで苗というのはどんな字じゃ?」
「草冠に田んぼです。以上が稲作の劇的な向上ですが、更に税金面で向上させる事を考えてますがどうでしょう。」
爽やかな顔になった伊治呰麻呂。
「言う事は正しいようだ。取り急ぎ全軍を胆沢城まで下げよう。ここ伊治近辺を君の言う通りの稲作をしてくれれば、そのままにしておく。」
「伊治城は?」
「蝦夷軍の総大将は阿弖流爲で副将は母礼である。我はご意見番のようなもの。胆沢城でしっかり待つので、大将に伝えといてくれ。」
そう言うと、二平を残して伊治呰麻呂らは去っていった。
屋上に登った二郎丸鷹森は旗を下ろして戻ってきた。
翌日、先遣隊である岡崎隊に鈴鹿疾風と一緒にやってきた。
「どうなっている。蝦夷の軍は何処に?」
「伊治を藤原夏良氏に任せるとの事につき、胆沢城に下がりました。」二郎丸鷹森が答える。
「無血開城ということか。」
「ご理解の通りに」
少し考える時間があった後、
「藤原夏良よ、任せて大丈夫か?」
「はい。2年様子を見てください。」胸に手をやり、応える藤原夏良
「延暦19年10月まで猶予を与えるのと、位をとりあえず正七位上ぐらいにしとかないと。まだ若いので、上げすぎても藤原夏良が困ると思うし、帝に許可が必要な位になってくるのでな。まあ、征夷大将軍に一旦、説明に戻ってくれないか?誰か、馬車を渡してやってくれ、ここまで早足で来たのだろうからとりあえずはゆっくり戻りなさい。」
「分りました。ありがとうございます。」
二郎丸鷹森隊は鈴鹿疾風の配下に組み込まれることになり、偵察隊は一旦解散することになった。
「二郎丸鷹森殿、ありがとうございました。また、お逢いしましょう」握手して分かれる二人。
幸三や半蔵も笑顔で手を振っている。
あまり話すと辛くなりそうなので、事務的にした。
ちょうど与えられた馬車の所に彦兵衛が来た。
「やっとお会いできました。良かった。どんどんと北に来ることになり、不安になりました」
「申し訳ないが、一旦京都に戻ります。」
「えっ」驚きと落胆の顔をする彦兵衛。
「帰りは一緒に馬車で帰ろう」
「ありがとうございます」
馬車と徒歩で疲れたのであろう。流石に断らない彦兵衛であった。
次回エピソードの更新日は 2024年11月21日 00時00分 です 宜しくお願いします




