50.正三位④
【人物】
藤原夏良 主人公 27歳。 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は桓武天皇。養父が藤原冬嗣。藤原北家。良岑安世の名をもらう。
813年 弘仁4年10月
藤原夏良はこれから降る雪を利用した雪室蔵を造る為に蝦夷に来ている。
仙台地区は雪が積もりにくいので、仙台地区の北側。広瀬川の上流に造る。
収穫したお米等の長期保存方法として雪室の利用を考えていたのである。
まず収穫した米を積上げ、板で囲む。少し離した場所に同じように米を積上げ、周辺を板で囲む。
このような米の山を幾つか作り、米山層の間に降った雪を固めて、天井に屋根を張るという感じにする予定。
氷雪柱で出来た柱に囲まれた蔵という感じとなる。これにより、秋に収穫した米を1年間程度の間、保存が出来るのである。
「仁平殿に雪室の管理をお願い出来ないでしょうか。」藤原夏良は雪室蔵作りを見ていた仁平に訪ねた。
「初めて見るので、是非ご教授いただければありがたい」
「では、雪の降った2ヶ月後再度集まりましょう」
今年は豊作の年であったので想像以上に米の収穫があった。不作時の対策のためにも試験的に作成することを考えていたのである。
814年 弘仁5年1月
雪が深くなっており、仁平と一緒に蔵へ向かっていた。
「もっと下流で良かったね」
「試験的なもんだで、まずまずでないかい?」
仁平の部下がおおよその形を造っていた。雪を板で叩きレンガのように固めていく。
「天井の上にも雪をのせ、雪で蔵を囲うようにしてください。そして、藁で周囲を囲います。」
説明をしながら周囲に藁をひいていく藤原夏良。
大きな雪かまくらが藁で囲まれていき出来上がっていく。
藁で周囲を囲んでいくと、直接日光が当たらないため、溶けにくいのである。
記憶だと夏まで冷えてもつはずなのだが、何月までいけるのだろうか。
814年 弘仁5年4月
苗床の育成を見てから、養父の藤原冬嗣の家に訪問した。
「従三位おめでとうございます」
「ありがとう。子供に追いついてきたぞ」
「すぐに追い抜きますからご安心を」
出来たてのどぶろくを差し出した。
「美味しいなこの酒」
「豊作だったので、良い米を厳選しているので美味しく出来上がってます。追加注文も間に合わないぐらい人気ですが、今日はお祝いなので沢山持ってきときました」
養父の従者が近づき、「荷馬車一台分のお酒をいただきました」
「官僚よりも商売人の方が合っているのではないかな」
「自分でもそう思います」
一日中笑いの絶えない藤原冬嗣邸であった。




