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藤原夏良  作者: m@ho
嵯峨天皇
43/76

43.従三位②

【人物】

藤原夏良 主人公 22歳。 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は桓武天皇。養父が藤原冬嗣。藤原北家。良岑安世(よしみねのやすよ)の名をもらう。


嵯峨天皇 生没年:786-842 日本の第52代天皇(在位:809年5月18日〈大同4年4月1日〉- 823年5月29日〈弘仁14年4月16日〉)。 諱は神野(賀美能・かみの)。嵯峨源氏の祖に当たる。


多治比高子 生没年:788-826 大同元年(806年)に肥前介に任じられた従五位下多治比氏守の娘で、神野親王(後の嵯峨天皇)に寵愛され、嵯峨天皇即位後の大同4年(809年)に橘嘉智子(のちに皇后)とともに夫人となった。弘仁元年(810年)には従三位に叙せられている。

809年 大同4年4月

藤原夏良邸にて、藤原夏良と藤原冬嗣が帰ってきた。

「帰りました」

義母の藤原雪枝子が出迎えてくれた。


「高子がご迷惑をお掛けして申し訳ありません。言い聞かせますのでお許しください。」

「言い聞かせるとは?何を言われているのですか?」

「嵯峨天皇の所に嫁ぎに行きたいと。ご主人様のいる身分で何を言っているのか」

「わかりました。皆を広間へ呼んで頂けますか?」

「もちろんです。かしこまりました」義母が走って行く。


藤原冬嗣と夏良親子は黙って広間へ行く。

どぶろくを注いで待っていると、泣く高子を連れて三人が入ってきた。

広間には藤原冬嗣、夏良、雪枝子、雪子、桜、高子の六人が集まった。

高子は真っ赤な目であるが泣き止んでいる。

「まずは隠していたことを謝らないといけない。」

心配そうな顔の三人であるが、続ける夏良。

「私は嵯峨天皇の双子の弟になります。藤原冬嗣は養父であり、桓武天皇が父、平城上皇も兄となります。」

放心状態の三人はそのままで、続ける。

「今日、兄の嵯峨天皇から高子さんを妃にくれないかとお願いされました」

歓声を上げて喜ぶ高子。雪子と桜も喜んでいる。

「皆さんはそれで良いですか?」

「ご主人さまの思うままに」三人が答えた。


「一つ条件があります。」

冬嗣を含む全員が夏良を見た。


「何があっても兄の味方をしてください。世継ぎの為に兄を突き放すのも貴方の役目です。また、兄である平城天皇へ譲位を返す事を考えると思いますので、この国の為にも帝を守るように説き伏せてください」


養父の藤原冬嗣が続いた。

「私からも一つ提案が。このまま夏良からの籍を入れると対外的には問題が多いので、一旦、叔父さんの多治比氏守氏の娘として入り、嫁ぐ事でどうでしょうか」


流石の知恵者である。『一緒に来てもらって良かった』そう思う藤原夏良。


「ありがとうございます。早速、叔父の多治比氏守へ連絡し、相談します。おそらく断る理由もなく、問題ないものと思います。天皇家と親戚になる事を断る理由はありません」義母の雪枝子が答えた。


早い方が良いので、数日後、多治比氏守邸へ行く牛車を見送る四人。


809年 大同4年6月13日

多治比高子の輿入れが決まった。高津内親王が妃(後に廃妃)、橘嘉智子(後に皇后)と多治比高子は夫人(後に妃)となった。

『六月丁亥、無品高津内親王授三品、是日立高津内親王為妃、橘朝臣嘉智子、多治比真人高子為夫人』(日本後紀九巻より)

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