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藤原夏良  作者: m@ho
嵯峨天皇
42/76

42.従三位①

【人物】

藤原夏良 主人公 22歳。 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は桓武天皇。養父が藤原冬嗣。藤原北家。良岑安世(よしみねのやすよ)の名をもらう。


嵯峨天皇 生没年:786-842 日本の第52代天皇(在位:809年5月18日〈大同4年4月1日〉- 823年5月29日〈弘仁14年4月16日〉)。 諱は神野(賀美能・かみの)。嵯峨源氏の祖に当たる。


高岳親王(たかおかしんのう) 生没年:799-865 平城天皇の第三皇子。嵯峨天皇の皇太子に立てられたが、薬子の変により廃された。のち復権され四品となるが、出家して真如入道親王しんにょ にゅうどうしんのうとなる。空海の十大弟子のひとりで、仏法を求めて老齢で入唐し、さらに天竺を目指して旅立ったのち消息を絶った。異母兄に阿保親王、甥に在原業平がいる。

809年 大同4年4月1日

『夏四月丙子朔、~略~ 天皇自従去春寝膳不安、遂禅位於皇太弟、~(日本後紀より)』

神野皇太弟は一旦は譲位を断ったが渋々受ける事になった。

平安京太極殿にて嵯峨天皇の即位礼がなされた。

高岳親王(嵯峨天皇の子)を皇太子とした、政治的な考慮が多くなされた譲位である。

譲位と同時に位が上がった者がいた。

藤原夏良従三位、藤原冬嗣従四位下である。


色々なお祝ということで、藤原冬嗣、藤原夏良の一家が太極殿にてお祝いの席に招かれた。

我が家からは、妻三人の藤原雪子、桜、高子もお呼ばれした。

雪子と桜はピタッと藤原夏良にくっ付いていたが、高子だけは離れて歩いていた。

嵯峨天皇が近づき挨拶する藤原夏良。三人の女性は嵯峨天皇の顔を見た瞬間固まった。

「同じお顔ですが。」雪子が藤原夏良に耳打ちした。

さすがに一緒に住んでいれば直ぐに分ったのだろう。

「帰ったら三人に説明しますね」高子はずっと嵯峨天皇を見ている。

藤原夏良とは違う何かを感じているようだ。


「お初にお目にかかります。旧姓多治比高子と申します」

「初めまして、麗しき藤原夏良のご夫人方ですね。高子さんとはどこかでお会いしましたね。」

「覚えていらっしゃるのですね。ご主人様にお会いしたときに何も言って下さらなかったので、忘れられたのかと思っていましたが、嵯峨天皇殿であられましたのですか」

「確か、藤原内麻呂邸での歌遊びの時でしたね」

完全に三人は置いてきぼりなので、そっとしておいた。

意気投合している二人。高子の顔は家では見ない満面の笑みである。

笑顔の高子は雪子と桜と変わらなく美人であるので、男性からは好意を受けやすいが、藤原夏良の妻ということで嵯峨天皇は遠慮がちである。

「夏良、少しいいか?」涙目の高子が姉妹の所に戻ってきたときに、嵯峨天皇から呼ばれた。

「なんでしょうか」

「結婚して間もないが、多治比高子殿とはもう、その、何だ。男女の関係になったのか。」

「いえ。雪子と桜だけで、未だ高子とはこれからでしたが、どうしたのでしょうか。」

「私の妃にくれぬか」

「帝で、兄のお願いと言われても、そればかりは、家族で話させていただけないでしょうか。」

「もちろんだ。探していた思い人がこんな近くに居ようとは思っても見なかった」

「探していたのですか?」

「ああ、歌遊びでの会でお話をして意気投合したのだが、名を聞く時に急病人が出て急遽解散となり、それ以降、会えずにいて今に至るのだ。」

「事情は分りました。家に帰り義母も含めて相談させてください」

「もちろんだ」


そのあとのお祝いは滞りなく和やかな会で終わった。

父親の藤原冬嗣と相談した。

「それは家長の貴殿が決めることだ。離したくないなら断れば良い。」

「わかりました。この後家族で話すのですが、父さんも来てくれませんか。女性ばかりなので、味方も欲しいかと。」

「ははは、情けないな。分った、行ってやろう」

太極殿を出て家路に向かう二人。泣いていた高子と姉二人は先に帰っている。

「どうしたものか」独り言を言う藤原夏良。

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