39.正四位上④
【人物】
藤原夏良 主人公 21歳。 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は桓武天皇。養父が藤原冬嗣。藤原北家
多治比雪子 生没年 789-880 宣化天皇の三世孫多治比王を祖とする多治比家最後の娘。官位は正四位下。夫は 良岑安世。
808年 大同3年4月
養父の藤原冬嗣と一緒に平安京内の天皇家寝殿である大内裏を歩いている。
神野皇太弟の寝殿へ来る。
警備のものは上司の藤原冬嗣を見て当然顔パスで、一緒の藤原夏良も何も聞かれずに入っていく。
「失礼します」重厚な扉を開けながら入っていく。
広間で書物を読んでいた神野皇太弟が入って来た二人を出迎えた。
「婚約おめでとう。三人の娘と婚約って夏良らしいな。今回はお祝いの事ではなくてだな、貴殿の調査能力を見込んで教えて欲しい」
「何なりと」
「平城天皇の状況をどう見る?」
「病気を助長させる芥子の実の香料で幻覚を見ていながら政務を取り行っている状態です。正常な判断が出来ない状態と思われますが、周囲がそのように見せないように偽装しています」
「どうすれば良い?」
「病気の改善は運動と緊張の解放です」
「具体的には?」
「一番悪いのは帝の業務です。皇太弟への譲位と狩や乗馬による遠出でしょうか。おそらく譲位する事により、病状は改善するので改善時の対応も必要です。改善時に譲位を返礼するのか。です」
難しい顔の神野皇太弟。
「兄のためにも譲位はやむを得ないのか」
「皇太弟の廃位については諦めたようですので人事面は安泰ですが、帝の健康面と各種政策面でも問題が山積みです。」
「どんな事だ」
「河川氾濫の対応、不作の対応、疫病の対応、貨幣の流通、蝦夷への継続的な治世と問題は山積みですが、神野皇太弟が譲位を受ければ全て解決します」
「譲位を受けても、今の私のままでは同じ状況になると思うので、なんとか対策を考えないとダメだな」
「1年で下地を作りましょう。まずは治水と教育をさせるべく、空海和尚と弟子達を派遣します」
「空海?」
「遣唐使として唐から仏門と薬事、治水を持ち帰っている和尚ですが、京への帰還命令が滞っています。
正式には譲位を受けてから命令ください。
不作の対応、貨幣の流通、蝦夷対応は私が直接行います」
「1年で下地が出来れば安泰だけど、1年で出来るかな」
「やらないといけません。特に病気への対応は避けて通れません。麻疹は空気感染するので感染しやすく、潜伏期間も長いので危険です。対応については、隔離して葛根湯による治療です」
「分からない言葉は空気感染と潜伏期間だな」
「すみません、感染者のくしゃみや咳により病気の素が飛散して病気の素を他のものが吸い込む事により麻疹となります。熱などの麻疹の症状が出るまで10日ほどかかるので、知らず知らずのうちに他人へ病気の素を渡す事を言います」
「なるほど、それでは対策のしようがないわけか」
「唯一の対応は、一度麻疹になった人は二度と麻疹にならないので、麻疹経験者が治療する事で拡散は防止できますし、麻疹の症状が出た場合には症状のあるなしかあ変わらず接触した人、特に家族全員が隔離対象です」
「分かった。対応可能な者を増やせば良いな」
「はい。麻疹にかかって治った者を選び抜き、治療従者として雇いましょう。そのようにすれば病気は抑え込めます」
「しかし、夏良の知識の多さにはいつも驚かされる」
全員が笑顔になる。
家に戻ると、牛車が玄関前に来ていた。
「帰りました。あれ?どうしましたか?」
家の玄関に女性が立っていた。
「会いたくて来てしまいました」
笑顔で答える多治比雪子。
「ありがとうございます」メロメロの藤原夏良。
『笑顔が可愛い』
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