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藤原夏良  作者: m@ho
平城天皇
38/76

38.正四位上③

【人物】

藤原夏良 主人公 21歳。 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は桓武天皇。養父が藤原冬嗣。藤原北家


藤原冬嗣 生没年 : 775~826 藤原北家

平安初期の公卿。藤原内麻呂の子。 嵯峨天皇の信任が厚く、弘仁元(810)年の薬子の変の際に設置された蔵人所の頭に任ぜられた。また、天長2(825)年、桓武朝以来空席となっていた左大臣に就任、藤原北家隆盛の基礎を築いた。興福寺南円堂を創建する。

808年 大同3年4月

養父である藤原冬嗣から呼び出された藤原夏良

自宅にて情報を整理してから彦兵衛とともに夕飯時に養父である藤原冬嗣邸に向かった。

向かうと言っても2区域程しか離れていないので直ぐに到着する。家の前には籠と従者が待機している。お客さんだろうか。

「ただいま帰りました」


玄関で叫ぶと、女従が出てきて、案内してくれた。

「ここまでで大丈夫、先ほどの準備しておいて」

彦兵衛にお願いをした。

土間に案内されると、父である藤原冬嗣、従者二人、若い女性とその母親らしき年配の女性、従者が三人控えている。

「こんばんは。お客さまでしたら、伺い直しましょうか」

「いや、お前様へのお客様だ」藤原冬嗣が静かに答えた。


「初めまして、多治比縄主が妻、多治比雪枝子、その子多治比雪子です。以後お見知り置きを」


多治比雪子氏が会釈をした。

一瞬の笑顔であるが、夏良が今まで見た女性の中で段違いに顔が小さく、可愛らしい人だ。

この当時の美人は顔が大きく、ふくよかな顔立ちであることが求められており、その基準からすると悪い部類になるが、

微笑まれるだけで心惹かれる事は初めての経験であった。


「初めまして、藤原夏良です。」

「お見合いの場として来てもらった。どうですかね」多治比雪枝子氏へ聞く藤原冬嗣。


「どうも何も、当方は藤原冬嗣様にお声をかけていただくだけで有り難く思っております」

「是非お進めください」多治比雪子さんの声だが、はっきりとは聞こえなかった。


「お前はどうだ?」

「申し分ございません」

「では、婚礼の儀はこちらで進めさせてもらうぞ」

「多治比家に私から出向き許しをいただくのが通例ですが、省きますか?」藤原夏良が確認する。

「当主を亡くし、男子不存の当家でありますので、お心遣い不要かと思います」

母親ではなく、娘の多治比雪子が答えた。


『気に入った!!』と心で思う藤原夏良。


「夏良よ。婚礼の儀も不要では?」

「いや、それでは多治比家に申し訳ないのでは」

「多治比家の方が大きな家だからそのまま家ごといただいたらどうだ」

「娘さんはお一人なのですか?」

「あと、娘が二人おります」母親が答えた。


「ちょうど良いではないか」

「え、ですから、多治比家の立場があると、それと妹たちと一緒というのは多治比雪子様がお嫌かと」


「藤原夏良殿、何の問題もありません、ただ、姑である私だけ世話係の一人として一緒について行かせていただくお許しのみいただけると幸いです」母親が話す横で笑顔の雪子嬢。

「母の言う通りです。問題ありません、また、家のことですが、隣地の家が3軒が空き家のままですので、譲り受けして大きくすることにも問題ないかと。大きな問題点は、こちらから少し遠いことでしょうか」

「遠いとは?」

「当家は上京にあります」

「ああ、そう言うことですね。左京のこことは確かに少しありますが、朝堂院に近いのでありがたいです」

平安京の北側が上京、東側に左京地区となっている。


「少し二人で話せるでしょうか」

「二人だけでですか?」母親が驚いて答える。

「あ、すみません、少しで終わりますが」

女従として働く以外に結婚前の男女が二人きりになる事はない時代。

「では、少しだけ我々が席を外しましょう」

藤原冬嗣が提案した。


部屋を出ていく二人に従者も続く。

残るは藤原夏良と多治比雪子のみとなった。


「どうかしましたか?」多治比雪子嬢が質問した

「いえ、姉妹と一緒にお嫁に入って大丈夫なのか、本心を教えていただきたい」

「大丈夫ではないです」

「えっ、先ほど問題ないと」

「妹たちの方が美人なので、毎日私と一緒にいてもらえないと思うと女性として嫌なのはあります」

「そう言う事ですね」

「それでは、毎日貴方といて、貴方が嫌な時だけ妹さん達といれば良いのでは?」

「嫌な時があるのでしょうか?」上目遣いされた藤原夏良は撃沈である。


「家のことは帝に断りを入れるので、父上に話してくる。今日は疲れただろうから、はよ帰れ」

「はあ、かしこまりました」

出口で待っていた彦兵衛。

「おめでとうございます」満面の笑みとはこの事か。

「三人の女性と結婚とは大丈夫なんだろうか」

「体ですか?」

「おいおい。まだ若いんだぞ。そうじゃなくて、今後の戦略に専念できるだろうか。

「そのようにするのも当主の役目です」

彦兵衛珍しく意見を言った。

「ありがとう。婚礼のお祝いの言葉として受け取っておく」


「でしゃばりまして、申し訳ありません」

「では、移転の準備で、この家はそのまま、二口の寮にして欲しい。対外的には両替商と米問屋で」

「全て考慮済みですか」

「もちろん」今思いついただけなのだが、まあ良いでしょう。

婿に入るような気のする藤原夏良だが、実情は家の吸収に他ならない。


翌朝、帝の許可を得たと報告が来た。

朝堂院の執務室に入るまでにお祝いの言葉を多くもらう。

皆早耳だ。

「おめでとうございます」

藤原貞嗣が入ってくるなりお祝いを言う。

「ありがとうございます。増貨幣は順調ですか。」

「ええ、貨幣の追加造成は問題ないのですが、貴族が貯蔵してしまう事が問題のようです」

「蓄銭叙位令が廃止になって8年も経つのに、貯蓄したら安心な感情は未だ残っていると言う事?」

「米を等価で交換できる安心感の方が強いかと」

「議論しましょう」

その後解決策が出ないまま平行線である。

藤原冬嗣が入って来た。

「神野親王がお呼びです」

皇太弟の親衛隊長の藤原冬嗣であるが、従者を遣わさない理由はなんだろう。

「何かありました?」

「行けばわかる」

また胸騒ぎがする。


年末年始は不定期にアップします!すみません。

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