34.正四位下⑨
【人物】
藤原夏良 主人公 20歳。 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は桓武天皇。養父が藤原冬嗣。藤原北家
伊予親王 生没年:780-807 桓武天皇の第三皇子。母は右大臣藤原是公の娘・藤原吉子。官位は三品・中務卿、贈一品。平城天皇に対する謀反の罪により母とともに幽閉され、飲食を絶たれて自殺した。
806年 大同元年11月
朝堂院の執務室にいる藤原夏良。
平城天皇の激怒により、藤原宗成と伊予親王が幽閉されたと、連絡があった。
左近衛大将は藤原内麻呂で、冬嗣の父であり、夏良の祖父である。右近衛大将は坂上田村麻呂なので、神野親王にお願いすれば罪は軽減されるだろうが、相手の策にどっぷりはまった藤原宗成。
伊予親王への提言については間違いないので、罪はないが、伊予親王はもらい事故である。
藤原貞嗣が入ってきた。
「藤原貞嗣入ります」
「お疲れ様。大丈夫かい?」
藤原貞嗣は藤原南家で、藤原宗成とは従兄弟同士であるが、性格は正反対である。
「遅かれ早かれと言う感じですが、藤原仲成の横暴が明らかなのに何も出来なく、悔しいです」
「ご助言しても良いですか?」
「はい、お願いします」
「彼らは自分で自分の首を絞める事になりますが、もう少し先です」
「どのくらい待てば良いですか?」
「申し訳ないが5年後です」
「それと、不思議なのですが、腹違いとは言えご兄弟で何故あそこまで嫌う事ができるのでしょうか」
「ここだけの話で良いですか?」
「はい」
上部の天井を見るが、間者は居なそうだ。
「平城天皇は心の病を患っています。伊予親王は桓武天皇のご寵愛を受けていました。平城天皇は年長と言うのもあり、いつも叱責されていたので、きっかけがあればこうなります」
「藤原仲成は分かっていたのでしょうか」
「恐らくですが、ここまでとは思っていなかったでしょう。しかし、本人に忠告したのですが、聞き入れてもらえませんでした」
「どう言う事ですか?」
「藤原仲成と会っていた事を知り、今まで会った事のない者から都合のいい話があっても信じないように、無視しろと言ったのですが、駄目でした」
「この間、仲成が来ていた時ですね。お気遣いいただき感謝します」
「いえ、気にしないで下い。職務ですから」
珍しく神野親王が執務室に入ってきた。
「ご苦労様」
藤原貞嗣は驚き、下がっていく。
「伊予親王の件、事前報告に感謝する。今回の件は、静観する事で良いかな?藤原葛野麻呂殿からは助けられないかとの話だが、今回は難しいだろう、流刑は免れない」
「異論ありません」
「他に気になるところはあるか?」
「はい、藤原薬子が情報操作をしているので、正しい情報が帝に届きません。遣唐使が帰国しているのにも関わらず京へ上がれない状態です」
「橘氏と一緒に帰ってきたそうだね。」
「はい、報告した通りです」
「猜疑心が凄くなってきており、執務が出来ない状態になっている。」
「申し上げて良いですか」
「もちろん」
「今のまま病状が進むと、恐らく皇太弟の廃位と皇子の立太子を画策するはずです」
「対策は?」
「心因性には心理戦ですね」
「ありがとう。任せていいか?」
「大丈夫ですが、神野親王になって大内裏に入って良いですか?」
「ああ、必要なら許可する」
「では、行ってまいります」
官服を脱ぎ、直衣で執務室を離れて行った。
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