33.正四位下⑧
【人物】
藤原夏良 主人公 20歳。 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は桓武天皇。養父が藤原冬嗣。藤原北家
藤原宗成 生没年:785-858 平安時代初期の貴族。藤原北家、左大臣・藤原永手の曾孫。参議・藤原家依の孫。従五位下・藤原三起の長男。位階は従五位上
806年 大同元年11月
藤原夏良と時継は来た時の道を逆に戻っていく。
門司港から壇ノ浦に渡り、壇ノ浦から山陽道を京へ向かう。
品治駅にて、預けていた馬を拾う。駅の役人が言ってたように、少し肥った体になっていた。
「ありがとうございます。お話いただいたように、肥えましたね」
「しっかり肥えたから、京までしっかりと走れるべ」
品治駅にて一泊して、翌日。
「さあ、京都まで行きましょう」時継に言う藤原夏良。
「はい」
滞りなく平安京に到着し、藤原夏良邸に着くのであった。
書斎に入り、少し休憩していると、彦兵衛が入ってきた。
「お帰りなさい。報告があります。」頷いた藤原夏良を見て続ける。
「まず、遣唐使の到着を伝えていなかったのは、平城天皇側です。と言うのも、内侍である藤原薬子が情報操作をしているようです。」
「やりそうなことですね」
「他に情報は?」
「藤原仲成氏が太宰府に出向いて調査をしているようです。空海和尚が信用出来る人材なのか、橘氏と関係があるのかの調査のようです」
「駅で交換した馬が藤原仲成氏の馬だったようで、、立派な馬なのでわかりました。太宰府にいるだろうと、警戒して移動したので我々の存在は分かっていないと思います。馬は連れて帰りましたよ。いい馬です」
「いいか悪いかはわからなくて、たまたま交換したのでしょうね。馬の価値が分る方とは思えないです」
「なるほど、確かにそうですね。分かっていれば置いてこないでしょう。他には?」
「太宰から戻った藤原仲成が藤原宗成に会っていました。」
「藤原宗成?誰?」
「藤原永手の孫になります」
「藤原北家って事?」
「はい」
「それって、何か悪巧み?仲成が絡むという事は女性問題か、陰謀かのどれかだが?」
「陰謀かと」
「まずいな、藤原宗成を朝堂院の執務室に呼んで」
「かしこまりました」
「他はないかな」
「目立ったところではないです」
「依頼が一つ。空海和尚の身代わり和尚を探して欲しい」
「それなら鈴星はどうでしょうか」
「蝦夷遠征隊の?」(エピソード2参照)
「はい、殺生し過ぎて仏門に入ると言っていました」
「ちょうど良い人選だね。合言葉は『豌豆瘡の治療をお願いしたい』ですのでお願いします。
「かしこまりました。鈴星も少し落ち着くでしょう」
翌日、朝堂院の藤原夏良執務室。
「こんにちは。お呼びしましたか?」
官服を着たチャラ男が来た。ため息しか出ないパターンだ。
「こんにちは、藤原宗成殿で良いかな?藤原仲成殿と会っていたと聞いて、心配になり来ていただきました。何を話してたので?」
「ああ、藤原宗成と言います。いやね、良い情報があると言うので会ったのですよ」
「今まで面識が?」
「いえ、初めてです」
「初めての方が良い情報と?」
「ええ、すごいでしょう?」
こいつは今まで良く詐欺に遭わなかったな。
「今後、藤原仲成氏には会わないように。色んな言い訳して直接は会わずにしてください」
「私にとっては重要な事のようですが?」
「ご自分の将来を捨てるのならお会いしてください。注意はしましたので、お願いします」
「分かりました」
納得いかないようだが、とりあえずは帰った。
出て行った後に藤原貞嗣が入ってきた。
「今のは、藤原宗成殿ですか?」
「ご存じで?」
「いえ、遠い親戚で知り合い程度です。話した事もありません。あまり良い噂を聞きませんし」
「そうなんだよね。何故藤原仲成殿と会ってたのかが分からないのです」
「危険な二人ですね。沸き立った水に焼石を入れるようなもの」
上手いことを言う。
火傷は必須と言うことか。
主要な藤原北家には伝令を送り、坂上将軍と神野親王には信書を送った。
藤原夏良は分からないと言っているが、実際は分かっている。
『伊予親王の変』が起きようとしているのだ。
下にスクロールしていくと、広告の下に評価を付ける【★★★★★】ボタンがあります。
本作を読んで面白いと思われた方、続きが気になると思われた方は是非とも応援をお願いいたします。
今後の継続のモチベーションにも繋がります




