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藤原夏良  作者: m@ho
平城天皇
32/76

32.正四位下⑦

【人物】

藤原夏良 主人公 19歳。 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は桓武天皇。養父が藤原冬嗣。藤原北家


空海 生没年: 774年ー835年 平安時代初期の僧。諡号は弘法大師こうぼうだいし。真言宗の宗祖。

日本天台宗の宗祖である最澄と共に、日本仏教の大勢が、今日称される奈良仏教から平安仏教へと、転換していく流れの劈頭へきとうに位置し、中国より真言密教をもたらした。能書家でもあり、嵯峨天皇・橘逸勢と共に三筆のひとりに数えられている。

仏教において、北伝仏教の大潮流である大乗仏教の中で、ヒンドゥー教の影響も取り込む形で誕生・発展した密教がシルクロードを経て中国に伝わった後、中国で伝授を受けた奥義や経典・曼荼羅などを、体系立てた形で日本に伝来させた人物でもある。

806年 大同元年10月

壇ノ浦に着いた藤原夏良と時継。

向かいの門司まで乗船して渡る。

時継に声を掛ける藤原夏良。

「太宰府には前世でも来た事がなかったな」

「前世ですか?」

「ああ。僕は未来から来たんだ」


「面白いですね。」

「ああ、これから会う空海が、これからのこの国を変える偉大な人物である事、日本で一番の書を書く人物である事も知っている」

「まだお会いしていないのに分るんですね。」


信じてもらえないだろう。そのまま触れずにいた方が良いと思った。

しばらく南へ下っていくと博多に近づいてきた。


「東長密寺にいるはず」

「はい。それも能力ですか?」

「ううむ。なんと言っていいのか」


博多村に入り、建築中の寺が見えてきた。

入り口の僧侶に声をかけ、空海に会わせていただきたい旨を伝えていただく。

僧侶は奥に消えていった。

宮大工が忙しなく働いているのを眺めていると、先ほどの僧侶が帰ってきた。

「空海和尚はいつでも良いとのことでした」

心の準備をする藤原夏良。

「親父に会う時以上に緊張するな」

笑顔で様子を見ている時継。

大きく息を吐く。


「よし」気合を入れて入る。

建築中の建物の横に簡単な囲いと屋根の建物があった。仮宿舎のようだ。

中には作業する大工の休憩所となっている。そのような中で宮大工を世話する一際オーラを放っている僧侶がいた。


誘導してくれた僧侶が話しかけてくれた。

「いらっしゃい。私が空海と言います。ご用と聞きましたが、初めてお会いしましたよね」

「お会いするのは初めてですが、良く存じ上げています」

「何かしましたかね?」

「いえ。これからです。ところで、京に来てお教えを請いたいのですが、どうでしょうか?」

「ありがたいが、何故か待機命令が解除されないので行けないんです」

「大丈夫です。替え玉は用意しますので、右大弁の私が保証します。右大臣には報告しておきますので懸念ありません」

「それなら、普通に解除命令をいただけたらいいと思うのですが」


「それなんですが、現在、平城天皇と神野親王と他の勢力との水面下の勢力争いが起きています。恐らくですが、橘家の者と帰国したので、平城天皇勢力が何らかしらの圧力をかけていると確信しています。しかも、太宰師は平城天皇側の藤原縄主殿なのです。」

「あなた方は?」

「我々は神野親王の派閥になります。坂上田村麻呂公、藤原葛野麻呂公が主な方です」

「藤原葛野麻呂公は唐で一緒でした。昔ながらの気風の方の印象ですね」

「ご理解の通りかと。あと、個人的なお願いなのですが。薬師の修行もされていると存じ上げています」

「私のことを良くご存じですね。驚きです。世間ではほとんど知られていないのに」

驚いた顔の空海和尚。

豌豆瘡(わんずかさ)、(今の天然痘)。の治療方法について、どの程度の知識を得てきましたか?」

「貴方は何者ですか?なぜ全てを見通しているのですか?」


「申し訳ありません。細かな説明は出来ませんが、千手千眼観音様がついていると言った方が良いでしょうか」

「なるほど。それなら理解しました。貴方の言うことなら信じましょう」

やはりこの当時、千手観音はあまり知られていない。阿弥陀如来全盛期である。

「私達と一緒だと目立つので、替玉和尚と交代で来ていただいて宜しいでしょうか。京からの見張りが来ているようなので、少し様子を見てから使いを出します。」

藤原仲成が来ている事は分っているので、直ぐに行動に出ることは避けたのだ。

「では、迎えには『豌豆瘡の治療をお願いしたい』という言葉を使わせるので宜しいでしょうか」

「はい。かしこまりました」


空海師匠がこちらについてもらえるとは、ありがたい。

歴史上では太宰府からしばらく離れられないはずである。日本にとってのマイナス面でしかない。

聞きたいことは多いが、長居すると危険性が増すだけなので帰ることにする。

「それでは、まお師匠帰ります」

「ははは、笑いしか出ないね。京でお会いしましょう」

藤原夏良と時継の二人は宿舎を後にして帰ることに。門まで来そうな空海和尚を止め、二人だけで帰る。

「さあ。帰りますか」


なぜ、空海が笑ったか?

空海の本名は佐伯真魚(さえきのまお)と言う。

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