28.正四位下③
【人物】
藤原夏良 主人公 18歳。 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は桓武天皇。養父が藤原冬嗣。藤原北家
西暦805年 延暦24年6月
対馬に遣唐使船が到着したと報告があった。
しばらくして、藤原葛野麻呂が家に帰ったと言う伝言と、葛野鋳銭所から在庫が届き、大量に銭貨作成に入れることを伝えられた。
馬にて急ぎ葛野麻呂邸に到着する藤原夏良。
従者へ取次ぎをお願いする。
「藤原葛野麻呂叔父が戻ったと聞き、お邪魔しました。」
「少しお待ちください」そう言うと従者は女中に何やら依頼をした。
しばらくして、案内された先に、藤原葛野麻呂が待っていた。
「お疲れ様でした。無事に帰ってこれて良かった。」
「ありがとう、なんとか帰ってきましたよ」
「ぜひ、お土産話を聞きたくてまいりました」
「いいでしょう。さて、出発後、船は2班が別々に到着してしまい、到着してからは、金さんのおかげで順調に長安に行けましたよ。
といっても、船で2ヶ月移動、一月準備して一月かかって陸路で長安まで二十三人無事に到着しました。
先行していた菅原清公氏らが待っててくれて、合流し五十人で天子へ献上しに行きました。
三日三晩天子は歓迎してくださったのですが、正月にお亡くなりになってしまい、葬儀に参列することに。
喪服は向こうでは白色の服が喪服なのですね。
白装束で参列し、二十七日間喪に服す事になり、外交的なことは何も出来ませんでした。
その後帰国せよと唐から勅令が出て、急ぎ帰国準備、すぐに出発して一月かけて移動し、一月準備して出発、出発の時には、金さんが用意してくれた錫鋼と中古の銭貨を船積みし、無事対馬へ帰ってきた次第です。」
「移動が大変そうですね。」
「許可を得ていても、他国ですし、言葉が通じないので大変でした。でも、金さんが本当に良くしてくれました。感謝です」
「唐の状況はどんな感じなのですか?」
「現帝と他の兄弟との関係が悪く、衝突している感じですね。他国との関係では、隣国の吐蕃と戦闘を行っているようでした。こんな土産話ですね」
「ありがとうございます。無事に帰ってくれて感謝しています」
帰りに葛野鋳銭所に立ち寄った。
鋳銭司が出迎えてくれた。
「材料の状況はどうですか?」「持ち込まれた錫鋼も銭貨も良い状態です。これなら良い状態の者が大量に生産できます」
「本鋳銭所が他の鋳銭所に移るという噂があるのですが、本当ですか?」
「いえ、私は何も聞いていないので、誤報だと思いますよ。やっと安定した供給が出来るというのに廃止するはずはありません」
「分りました。それを聞いて安心です」
家に戻った時、彦兵衛が報告してくれた。
「藤原葛野麻呂さまが従三位になられました」
「まあ、当然だね。良かった」本当に良かった。




