27.正四位下②
【人物】
藤原夏良 主人公 17歳。 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は桓武天皇。養父が藤原冬嗣。藤原北家
西暦804年 延暦23年4月
位が上がった時に下賜された山に登っていた。
清水寺と稲荷山の中間の位置にある。清水寺ほど立派ではなくても、お寺があるといいなとは思っているが、いい僧侶に出会えないものかと思っている。
平安京の東側に位置するため、森林があるのが良いであろうと言われている。気の流れの良い場所であり、生気の宿る場所でもある。
「すがすがしいね」そう話しかけた先の彦兵衛が横で頷いている。
「位が上がって、使用人も増えたのだから彦兵衛も部下を増やしたらいいんじゃないの?」
「任せられる者がおらんのどす」少し怒ったように話す彦兵衛。
「いやいや、部下を教育するのも大事で、今後家の事をしてもらう為にも色んな分野で働いてもらわないと行けない。特に、情報が大事なので、地方との連絡をしたりできる人かな」
「地方との連絡とはどのようなことで?」
「例えば、蝦夷地域との情報のやりとりとかかな。何に不満を持っているとか、貴族の腐敗なんかもね」
「なるほど、理解しました。さっそく人選します」
正確な情報により、未来を切り開く手段を考えねばならない。
この東の丘に情報の拠点を置くのが良いだろう。お寺をカモフラージュにすれば分らないだろうし、文章を書くのもお手のもの。
「彦兵衛、情報を集める者は、二人一組でと考えている」
「どのようにして二人と?」
「一人が基軸の情報集め。もう一人は、その者と京との間で行き来する。急ぐときは伝書鳩で報告するのがいいかな。全員からの情報収集は彦兵衛に一任する」
これで色々な情勢が早く分る。特に今後は政局がめまぐるしく動く。
兄の神野親王と安殿親王の争いが2年後に起こるはずであり、それまでにある程度の情報の蓄積が必要であると思っている。
「それと、各屋敷の情報も知りたいので、女従の懐柔も併せてしてほしい。沢山やることあるので、部下を使い、鍛えて欲しい」
「かしこまりました」
「僧侶がここで文字の読み書きを教える場も造りたいね」
「いいですね。農家の子も商人の子も字を覚えられれば、より深く物事を考えられますね」
「多くの人が文字を読める事が出るようになれば、知識欲も増えてくれば、貴族以外からも政治に入ってこないと全体が弱くなります。新しい風はいかなる場合も必要なんです」
「急激に変化をするとついて行けない人々も増えるのじゃないでしょうか」
「そうなんだよね、あまり急激に思想を教えてしまうと、反乱の種を植えてしまうことにもなるので注意が必要なんだよね。」
さあ、兄を助ける手はずを整えるぞ。




