24.従四位上③
【人物】
藤原夏良 主人公 15歳。 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は桓武天皇。養父が藤原冬嗣。藤原北家
壱志濃王 生没年 733-805 奈良時代後期から平安時代初期にかけての皇族。天智天皇の孫である湯原王の第二子。官位は正三位大納言。贈従二位。
西暦801年 延暦20年12月
平安京内の朝堂院に戻った藤原夏良
右弁官の管轄のひとつに大蔵省がある
税金は民部省が管轄なのに朝廷の銭貨・金銀・調・貢物の出納、保管や諸国・民間の度量衡や売買価格の公定などを大蔵省が管轄している
税金と銭貨を別にしているため、貨幣が流通しない原因の一つと言える。
税金を貨幣で納めれれば、遠隔の土地でも近くの土地でも共通の基準で収められるので良いのだが、部署が違うため、貨幣での納税を検討できていない。
貨幣だけ発行すれば良いと思っているようだ。
大納言の壱志濃王 に提言したが、50歳も下のものからの提言に納得するはずもなく、検討するとだけ言われ、足蹴にされた。
朝政会議には参議と呼ばれる者が参加する。参議は帝が任命し、参議または従三位以上の者を公卿と呼ばれた。15歳で公卿とは異例すぎて周囲の者は異端児を見るように藤原夏良を見ている。
藤原冬嗣の孫の孫の孫である藤原道長は後に有名になるが、同地位になったのは21歳の時である。
会議には桓武天皇と公郷が全員参加する会議であり、朝堂院にある大極殿にて開かれる。
会議の途中、壱志濃王が発言した。
「右弁官より、銭貨の流通について提言がありましたので報告します」
少し笑みを浮かべた壱志濃王。恥をさらすと思ったのだろう。
藤原夏良はそうとは知らず感謝していた。
「申し上げます」前に出た藤原夏良。顔には未だ絹を巻いているので、誰も神野親王の双子とは思っていない。
「発言を許す」
「ありがとうございます。現在、税を納める対価は米が主流となっております。これを統一すべき対価として銭貨にするべきと提言致します。」
「うむ。理由を教えてくれ」
「米は食べ物にて、人の手から手へと渡す物として不衛生であります。そして、米自体は劣化するものであり、新しいものか古い物かが曖昧になっておりますし、古くても新しくても価値が同じ物として扱われております。銭貨は古くはなりますが価値としては変化がありませんので、等価が可能であります」
「今まで何故浸透しないのだ?」
「役務の支払、資材支払の支払には支払われていますが、納税に使えないこと、流通が少ないこと、保存が利くため、貴族はため込んでしまうこと等が考えられます」
「どうすべきだと?」
「銅銭は唐からの輸入が大半ですので、輸入量を増やすべきです。そして、安定的な流通の為に納税を銭貨で可能とし、朝廷が銭貨を米に等価交換可能とするものです」
青銅の製造のうち、錫の産出は京都で産出されていたが、産出量は少なかった。
朝廷内がざわつく。
「意義を唱える者は」
壱志濃王が前にま出た。
「恐れながら申し上げます。いつでも交換できるように朝廷で米を大量に保管しないといけないようになりますが。」
「その通りです。問題があるのでしょうか。現在でも多くの米を生産されていると思われますが?どこに消えていますか?」
全員がハッとした。貴族が作っている米は納税を免れている。
「出挙の廃止、労役と租庸との選択制、貴族・寺院含めた納税義務の徹底です」
藤原夏良は大きく出たが、大半は認められないのは分っていて敢えて提言した。
騒然として、混乱する朝廷内。
「議題は上がった。明日再度議論するので集まるように」
全員散会したが、全員が藤原夏良を睨むように出て行く。
残った桓武天皇、神野親王、坂上田村麻呂が心配そうに見ていた。
「少し改革を急ぎすぎだな」
「はい。多くを提言して、一つでも出来れば良しと思いまして」
「そういう事か」
「全てを否定することは難しいので、出挙の廃止が出来るだけでも民の生活は安定します」
翌日の朝廷会議では予想通り、銭貨の納税許可と公出挙の廃止のみ決定した。
童話作成もしてたら、少し遅くの更新になってしまいました。




