18.正五位上②
【人物】
藤原夏良 主人公 14歳。 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は藤原冬嗣。藤原北家
藤原冬嗣 生没年 : 775~826 藤原北家
平安初期の公卿。藤原内麻呂の子。 嵯峨天皇の信任が厚く、弘仁元(810)年の薬子の変の際に設置された蔵人所の頭に任ぜられた。また、天長2(825)年、桓武朝以来空席となっていた左大臣に就任、藤原北家隆盛の基礎を築いた。興福寺南円堂を創建する。
「お帰り。大活躍を誇らしく思う。藤原家を更に強固なものにしてくれて感謝する」
丁寧すぎて怖いと思う藤原夏良。
「さて、帝には会えたのか?」
「いえ、神王にお会いしましたが、顔合わせはしておりません。顔を下げてただけです。」
「なるほど。よかったかもしれない。そろそろ話さないといけないとは思っていたのだが、分かってるとは思いますが」震える声で止まった
敬語?何か変である。
「貴方は桓武天皇の第二皇子。母は藤原乙牟漏様です。神野親王の双子のご兄弟です。まあ、26歳の男に14歳の子がいるんだから養子だろうなと分かっていたかと思いますが、見識が広い貴殿なら特に早めに分かっていただろうと思います」
「はい」とだけ応える藤原夏良。
「子供というより弟のつもりで今まで厳しく接してたかもしれない。すまんな。」
「とんでもない。ありがとうございます」
「親戚同士で仲が良く、皇后のお願いでしたのと、私なら怪しまれないと。帝は双子だった事は知らないので、会った時には親戚なので似ているのもあり得るというように応えるのが良いと思います」
敬語と平語が入り乱れて混乱していると思われる。
「しかし、この若さで正五位とは、経験を積むためにも早くに元服させたのが良かった。大人びているのであまり抵抗がなく世に出せて嬉しい限りだった」
「お願いがあります」
「何でしょう」
「今までと同じ様に父上として接しても宜しいでしょうか?」
「もちろんだ。戸籍上子供であることには変わりはない。母上には会いたいか?」
「いえ、私からは会いませんが、母上が会いたいと申された時には会って良いでしょうか」
「問題はないが、極力2人だけで会う様に」
「はい。かしこまりました」
「双子だった事を知っている人は?他には?」
「彦兵衛と坂上田村麻呂だけだな」
「将軍が?」
「ああ、先日会いに来てな。聞くと言うより、貴方の今後の行動によって危険な事もあるので、気に入っている貴方の行末を心配しての事だ。まあ、こんなにそっくりならおかしい事はわかる。ありがたいことに、理解頂いた。特に、帝と神野親王に対しては絶対服従のようだ。坂上将軍が今の位置にいるのは神野親王の後ろ盾があるようだ」
「なるほど、それで理解しました。神王との対面の時にあえて顔を上げさせる間合いを外しましたので、変だなとは思ったのです」
「神野親王の事で一つお願いがある。安殿の妃として入った藤原貞子だが、母薬子との不倫疑惑で廃妃となる。貞子の今後の事を考え、橘家に養子に入れる。妻の美都子の親戚でもあり、ご主人は亡くなっているから都合が良い。そこで、坂上田村麻呂ともお前に後ろ盾になって欲しい。」
「どこにお嫁入りに?」
「神野親王が幼少から仲が良くて、親王妃としてお輿入れする。橘家としても願ったりと言う状況だ」
「皇宮内は大丈夫ですか?」
「女性の成長の速さには分からないようだ。側近には別の者を入れ、前の側近たちは田舎に栄転させたので、誰も分からない」
「藤原家側は問題なし?ですか?」
「まあ、廃妃となって仏門に入り、自殺した事にしたので。疑わんだろう」
知略では勝てないと思う藤原夏良。