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藤原夏良  作者: m@ho
桓武天皇
14/76

14.正六位下②

【人物】

藤原夏良 主人公 14歳。 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は藤原冬嗣。藤原北家


鈴鹿疾風 生没年:768〜820

平安時代の武官。坂上田村麻呂が征夷大将軍を勤めた時に軍師として従軍。蝦夷征伐の立役者と言われている。正五位上


藤原長岡 生没年:786-849 平安時代初期の貴族。藤原北家、右大臣・藤原内麻呂の六男。官位は従四位上・大和守。  

年が明けた延暦19年(西暦800年)2月。

雪解けが未だ始まっていないため、溶けた雪が目立つ金大明が今治城に駆け込んできた。

「ふじわらさーん。いい場所見つけたよー」

金大明氏に田んぼの一大開発地域を探してもらっていた。


「ここまで着るまでのに候補はいくつかあったよ。でもね、一番の居場所は、多賀城の西ね。大きな川に沿って作るのがいいよ」


噂を聞きつけて農民が増えたので、多くの農民を多賀城へ移籍することが出来る。

「金大明氏と二郎を中心に多賀城西の川沿いに一大耕作地を作って下さい。」

胆沢城への攻撃準備もあり、衛士として多くの兵が集まってきており、軍事練習も兼ねて治水と耕作作業が可能であった。


金大明氏が息を整えた頃、ぞろぞろと兵士達が入ってくる。

先頭に来たのは鈴鹿疾風軍師である。


「ご苦労様です」立ち上がり席を譲る藤原夏良。

正五位上の鈴鹿疾風は目上となる。

普段は軍服だが、官服だと淺緋色になるので、想像が出来ないが、見てみたい気もする。


「衛士として派遣いただいたものには、軍事訓練として多賀城西の開拓をお願いしています。出陣はいつ頃でしょうか。」

「仏像の完成に合わせて建物の完成も終わりそうなので、おそらく来年の春には開始されると思われる」

「分りました。」

「それと、防人を事実上廃止したのに対して蝦夷討伐に切り替えるので、防人として配属予定だったものが来年にこちらに配属する予定。他の衛士や軍団も一時的にこちらへ送るので受入体制を整えてくれ。」


「弓はこちらで用意しますか?人数は?」

「四万だ」

集まっていた全員の驚愕の顔。この当時の軍隊は多くて1万。

4万の軍隊は聞いたことがなかった。


「は?四万ですか?お待ちくだいさい。四万人はこの地区の人数に匹敵しますが。それだけの人数を収容する人家も食料もありません。あ。作れということですか。」


「そうだ。今年で四万人分の食料を確保せよということだ。」


来年の蝦夷征伐用の軍隊設備と食料をこちらで確保せよということらしい。

「それと、事前に阿弖流為(あてるい)に会って降伏を促したいが、妙案が思いつかなくて悩んでいる」

「それが一番良いと思いますが、伊治呰麻呂氏との連絡も取れずにいますので、直接出向くしかないと思います。」


「無茶だと思うが、行ってもらえないか?」

「やはりそう言うことですが。」

「お主なら出来るはずとの将軍の意向だ」

「無茶を言いますね」思わず出た言葉に藤原夏良は続けた。「すみません。」


「いや。いい。素直な言葉を聞けて、安心した。」

全員がほっとした顔をしている。

「お願いがあります。」

「はて何だ?」

「1年間の祖税を全て免除していただけますか。公出挙も含めてです」

「陸奥国には無理を強いておるのでやむ得ない状況と思うが、酒の販売だけの税で許すことで帝には許可を得ている」

「すみません、ご理解痛み入ります」

流石にここまでのたたき上げの軍師には先を読まれている。

おそらく今回作成した冬のどぶろくの販売だけで十万文は超えていた。

1文だったものが10文でいいという貴族が増えたため、仕方なく小樽10升分を100文にしたのであった。

一千作った樽がなくなったので計算は単純だったが、この事を知るものはいないはずなのに、販売が好調な事は伝わっていたようだ。

「今年販売分では五万文は納められますが、五万文でよろしいでしょうか」

「いいだろう。」

下級文官が300文、最上級貴族で5万文のこの時代であり、全免を言い訳にするには十分な収益である。


「金大明氏以外にも文官が必要かと思い、大掾(だいじょう)を2名連れてきているので、指示すると良い」

坂上田村麻呂が陸奥守、その下を(すけ)の藤原夏良が補佐し、大掾(だいじょう)(すけ)の下につく文官である。

後ろから浅緑の文官が現れた。


藤原内麻呂(ふじわらのうちまろ)が六男、藤原長岡です」叔父であるが、年齢は一つ下で、藤原北家だ。

藤原巨勢麻呂(ふじわらのこせまろ)が十一男、藤原河合です」藤原南家で、あまり交流はない。


どちらも藤原であるが、坂上田村麻呂将軍の意図が分らない。

そう思っていると読まれていたのか、軍師が立ち上がった。

「介として運営がし易いようにとの将軍の配慮だ。帝も同じ意向との事だから安心せい」


「ありがとうございます」そう言う藤原夏良の肩に少し手を置いた鈴鹿疾風。

阿弖流為(あてるい)に会えたら、小競り合いはかまわないが、最終的には投降するように伝えてくれ」

出て行く軍師を見送り「かしこまりました」と小声になって応えた。


残された二人に指示をしないと。

「では、藤原長岡氏には金大明氏と多賀城西の統制をお願いします。藤原河合氏には伊治地区の統制、来年までの兵士の配分と住居の手配をお願いします。」

「かしこまりました」


これで、胆沢城(いざわじょう)対策に専念が出来る。

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― 新着の感想 ―
多賀城 869年の大地震で津波が起き崩壊します。 本当にここに一大稲作地帯作りますか?
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