12.従六位上⑥
【人物】
藤原夏良 主人公 13歳。 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は藤原冬嗣。藤原北家
今治田んぼのため池そばに、二平中心に長屋を突貫で作成した。
土壁に大きな扉を付けたことで、日中中にあった苗床を日差しに照らすように外に出す事ができる。
藤原夏良が長屋に来た時には、馬彦と五郎が苗床を外に出していた。
「ご苦労さまです」声をかける藤原夏良。種籾を植える間隔が分からないので、列ごとに間隔を変えて植え付けた。
水を浸した状態にするのか、乾いた方が良いのかも分からないので、両方作成して試す事に。
「どうですかね」馬彦に声をかけた。
「間隔は二つ指分が良さそうです。水に浸した方も乾いた方も成長は大きく変わらないですが、若干浸す方が早いですかね。乾かした方は根の成長が早いようですが、根同士が絡むので浸した方が良さそうです」
「それでは、種籾の植える間隔は2つ指分で、浸した状態での苗床作成でいきましょう。」
「多い分にいいので、多めに増産してください」
「わかりました」
「ところで、馬彦さんはあまり方言が無いようですが、今治の出ではないのですか?」
「はい。伊豆国から流れてきました。特に目的もなかったので、行き着いてしまいました」
「伊豆は住みづらかったのですか?」
「食いぶちがなかったのです。兄弟の食いぶちを増やすために出ました」
「なるほど。優しいですね」
「いえ、私だけじゃなく、多くの者がそうしています」
豊かにしないと。再びそう思う藤原夏良。
1ヶ月後の5月。田んぼに農民とため池を作ったメンバーと藤原夏良が集まっている。
「さあて、皆さんいよいよ田植えです。」
「種籾じゃないんだね、植えるのは」牛三朗が質問した。
「ええ、ここにある苗を植えていきます。全員が並んで、等間隔に植えていきます。ちょうど手を開いた分ぐらいの間隔です。そして重要なのですが、苗は3-4本を植えます。植える時は3、4本の指で持って、刺すだけで稲がちょうど立つようになるはずです。そうしてどんどん下がって植えていきます。実演しますね」
昨日、二平と練習していた通りに手際良く苗をさしていく。
「腰が痛くなるので、無理せずに植えていきましょう。」
「おおぉ」みんなが答えて、植えていく。
今回、藤原夏良が作った道具を生かしながら。
田んぼの端と端にある輪っかの上に一枚板で横に渡したもの。途中にもたわわないように輪をつけているが、等間隔に移動するように。板の下にはぐるぐると棒が回る。その棒が1周すると15cmぐらいの間隔になるようになっており、板の上には苗を置いて補充ができるようにしている。
全員で引きながら植えていくと等間隔で田植えができていく。
「便利ですね」彦兵衛が見守りながら声をかけた。
「これで秋には黄金の米ができるといいね」
藤原夏良の本音である。
次回は11/30を予定しています