『ASTRAL-BEAM standby, OK. Ready?』
港に着いた頃にはもうナディアの姿はなく、代わりに総数一二もの宇宙恐竜が群れていた。
宇宙恐竜の一頭が上空の人型に気付き咆哮を上げると、周りの宇宙恐竜達も一斉に喉を鳴らす。
「なんだよこの数……」
足元に映る天敵を見ながら、ソーマが渋い顔でこぼす。だがココは半眼のまま、
「だいじょうぶ。このくらいの数、アストラーデの敵じゃないよ」
ソーマに向かって言った。ソーマは操縦桿を握る手に力を込めて、
「……分かった。信じてるぞ、アストラーデ!」
目一杯にレバーを押し込む。『Lalalalalalalalalalalalalalalalalalalaaaaaaaaaaaaa!!』と画面に文字が走り、人型が急降下して宇宙恐竜に突撃する。
急降下からの蹴りが一頭の宇宙恐竜に炸裂し、赤い飛沫が舞う。
着地後間髪入れず回し蹴りで周囲の宇宙恐竜の脚を払うと、その後ろから別の宇宙恐竜が人型に跳び掛かる。
「アストラーデ! うしろ!」
ココの叫びに応じて背面装甲が開き、そこから十数発のミサイルが撃ち出される。弾頭を全身に浴びた宇宙恐竜は木っ端微塵に爆散した。
爆風を利用して夜空に跳ぶ人型。そして空中で半回転して宇宙恐竜の群れを正面に収めると、額の角の間に稲光を収束させる。
次の瞬間、ソーマの頭に『ASTRAL-BEAM standby, OK. Ready?』と女性の声が聞こえた。
「何だ今の!? 頭の中に声が響いたような……」
両手で頭を抱え困惑するソーマにココが、
「アストラーデが呼びかけてるんだよ。いっしょに叫んでくれって」
「叫ぶって……何を?」
「聞こえたとおりに。ほら、くるよ?」
視線を正面に戻すと、宇宙恐竜達が跳躍して迫ってくるのが見えた。ソーマは意を決して、
「信じるぞアストラーデ! 『アストロビ―――――――――ム!』」
肚の底から渾身の力で叫び、操縦桿の引き金を引く。
角の稲光が弾け、一筋の閃光となり宇宙恐竜達を呑み込む。直撃を食らった宇宙恐竜は見る影もなく消滅し、地上に居た残りの宇宙恐竜も爆風に飲み込まれ粉々に切り裂かれていく。
後に残ったのは千切れた宇宙恐竜の肉片と、パチパチと稲妻を放出する人型――アストラーデだけだった。