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プロローグ
それは悪夢と呼ぶにはあまりにも生々しく、凄惨で、現実だった。
町の至る所から轟炎が立ち上り、建屋は崩れ、あちらこちらに人の亡骸が転がっている。それも一〇や二〇ではない。軽く三桁は超えるだろう。
炎と血と亡骸の臭いが入り混じり、強烈な悪臭となって鼻腔の奥に貼り付く。
まさに死屍累々。阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。
その光景を作り出したのは、人ではない。一頭の恐竜――宇宙恐竜だった。
地を裂かん勢いで突き出された人の背丈以上の爪。そこから上に伸びる太い四脚が大山を思わせる巨体を支え、体表には鋭く尖った無数の鱗。背中からは三対の翼が天に張り出し、炎で赤く染まった地上に漆黒の影を落としている。
だが何より異様なのは、頭部が三つある事だった。
赤く濁った双眸と鋸のような牙を生やした口から、それぞれが断続的にあらゆる方向に高温の熱線を撒き散らし、町に殺戮と蹂躙の限りを尽くしたそれは、やがて天に三つ首を向け嘶くと、六枚の翼を羽ばたかせどこかへと飛んで行った。
そんな地獄のような光景を、少年は町の外から呆然と見ているしかできなかった。