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#13 夢


「夢を見るんです」

「夢?」


 仕事帰りに顔を見せた佐倉さんはそんなことを言った。

 夏という季節はいつまでたっても日が落ちず、午後六時を過ぎても空は明るい。早寝をするにしてもいささか眩しい時間だが夢とは。


「何処か知らない洋館の一室で子供が泣いている夢」

「へぇ」

「扉は鍵が掛かってて、私は必死に鍵を探すけど見つからないんです」


 つまりは悪夢の類なのだろうか。

 確かに悪夢は誰かに話すと正夢にならないというが、しかしこの場合話したところでどうにもならない気もする。

 佐倉さん自身も以前言っていたが、夜に聞く子供の泣き声というのはどうしてこうも不気味に聞こえるのだろうか。


「佐倉さんは部屋の中にいるの?それとも外?」

「外です。屋敷のいろんなところを探しても鍵は見つからず、男の子の泣き声ばかり大きくなっていって、いつもそこで……」

「目が覚める、と」

「はい」


 それはなんともまぁ不気味なことで。

 まぁ、無意識化の防衛本能だろうな。夢の中で鍵を探してはいるものの、本能的にその中にいる存在が危険であると理解しているから鍵が見つかる前に目が覚めてしまう。

 とは言え流石に、うら若いお嬢さんの寝室に押し入るわけにもいかず。


「そっか。今度からさびと一緒に寝な」

「八千種さん?」


 あの猫又なら何とかするだろう。

 不思議そうな顔をする佐倉さんに笑いかける。あの猫はすでに一度、そういう実績があるからな。あれが近くに居れば引き込まれることはないだろうし、もし夢を見ても途中で起こすなりの方法を起こすだろう。

 それにしても。もう少し警戒心を持ってほしいものだ。だからこれは。


「扉。開けなくてよかったね」


 ある意味脅しなのかもしれない。

 これで怯えてもう少し自分がそういう存在に好かれやすいと自覚してくれるならそれでよし。自衛の精神を持ってもらいたいものだ。

 別に俺だっていつだって助けられるわけではないのだから。


「わかり、ました……」


 佐倉さんが少し考え込む。

 思うところがあったらしい。素直なのは彼女のいいところだからね。まぁ、そこがああいうものが付け入る隙でもあるんだけど。

 しばらくの間考えたあと、佐倉さんが真っ直ぐにこちらを見た。


「じゃあ、今度からはもっと早く頼りますね」


 なんでそうなった。

 別にいいけど。


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