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再会だよ、グシャート君

 地下室を出た僕とサイルは、レナジェと合流して図書館を後にした。竜と合流するためだ。

 足早に先を急ぐ僕達の前に……突然の再会は訪れた。


「グシャート? それにレナジェもじゃないか? ここで何をしているんだ?」


 爽やかな声が僕の耳に届いたと同時に、僕の胸中に二文字が浮かんでくる。

 ――謝罪。


 声の主、テルスはパーティにいた頃と変わらない態度で僕に接してきたが、横にいるスセからは怒りと侮蔑の入った視線が無言で送られてくる。

 その気まずさを打ち破ったのは、以外にもサイルだった。


「グシャートたん。この人達、誰なのん?」


 サイルの純粋な言葉が突き刺さる。辛い。やめてくれ……。それは僕にかなり効く。思わず声を発せられない僕に代わって、レナジェがサイルに解説をしてくれた。


「この明るい金髪のぉ爽やか君がぁ勇者のテルスでぇ、横で怒った顔も可愛いのが聖女のスセよぉ。ほらぁ説明したでしょぉ? グシャートがぁ馬鹿して追放しちゃった子達よぉ」


「あ~! グシャートたん、ドンマイなのん!」


 明るく残酷なことを告げるサイルに、ますます僕が何も言えなくなっていると、テルスがゆっくりと近づいてきた。


「グシャート……あの夜は、ヒートアップしてすまなかった! いくら酒の勢いがあったとはいえ、勇者としての振る舞いではなかったな……。すぐに他のパーティーを結成したのもすまなかった! 未熟さが出てしまった! 本当に、すまない!」


 僕に向かって頭を下げるテルスに対し、スセが大きく反応する。


 「テルス様が謝罪することは全くございません! 全て! そこの愚者が悪いのでございます!!」


 僕への怒りと失望がこもった声に、僕は……。


「テルス。スセの言うとおりだ……。全ては僕の過ちだ。謝っても赦されるとは思っていないよ……。だから……僕を赦さないでくれ」


 これが僕に言える精一杯の思いを込めた謝罪であり、決意だった。そう、僕は赦されてはならない。


 だから、僕は二人とその後ろにいる新しい勇者パーティのメンバーに向かって宣言した。


「僕はただの騎士(ナイト)、グシャートだ。君達の活躍の……後方を守れる男になって出直してくるよ……。それじゃあ、また」


 僕のその言葉に、テルスとスセが目を丸くし、驚いていた。そりゃそうだろう。昔の僕からは出ない言葉だ。

 でも、それ故にか。

 テルスだけでなく、スセの表情も心なしか優しい表情へと変わった気がした。


「そうか。じゃあ、赦さない……。だから、グシャート! 後方は、頼んだぞ!」


 僕の思いをくみ取って、テルスはそう声をかけるとスセ達を連れて僕達から遠ざかって行った。


 その、曇りのないまっすぐさが勇者としての素質なのだろう。


 あぁ、全く……勝てないなぁ。

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