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第30話 スキル辞典リーノを救う逆転の一手

 

「ふ~、終わった終わった……堅苦しい場所は肩がこるぜ」


 ばさっ


 レグナー公主催の晩さん会が終わり、控室に戻ってきたランはソファーに豪華なマントを脱ぎ捨てると、大きく伸びをする。


「お疲れ様、ラン……って、ととっ!?」


 いつも通りのランに、思わずいつものノリで返してしまったが、相手はアルベルト帝国の皇位継承者様だった。


 慌てて床に膝まづき、最敬礼の姿勢を取る。


「おいおい……やめてくれよリーノ」

「確かにオレは成人をもって帝国の皇位継承者へ正式に指名されたわけだが、我が父上は世界最強に頑丈でな……皇帝になるのはまだまだ先の話だよ」


「そんな畏まった態度を取られると、悲しくなっちまうぜ?」


「予定した行事はすべて終わったし、いい時間だから……抜け出して繁華街行こうや」

「かわいい獣人ちゃんもいるいい店があるって大臣から聞いたぞ」


「マジで!? ……って、いいのか?」


 世界最大国家の皇位継承者になったのに、相変わらず軽いノリのランに困惑してしまう。


「アルベルト家の掟筆頭! 遊びも仕事も手を抜くな、ってな?」


 がしっ!


「ととっ……へへっ」


 いつものようにハイタッチを交わし、エリザちゃんに見つからないようこっそり部屋の窓から外に出る。


「獣人ちゃんのいるお店かぁ……楽しみだけど、しっぽモフモフはしないから!」

「モフモフはもう、金輪際ララとしかしないって誓ったんだ!」


「……なんだよその妙な誓いは」


 ランと言葉を交わしながらも、頬が緩むのを抑えきれない。

 頼れる相棒は最強国家の皇太子様だった……昨日までの関係は変わらざるを得ないだろうと半分諦めていたのだ。


 いつも通りに接してくれる最高の親友と一緒に、僕は夜の街に消えていくのだった。



 ***  ***


「つーことで、もろもろの手続きがあるから来週にいったん帝国に戻らなきゃなんねーんだけど……ああめんどくせー」

「マスター! モルトソーダ割、濃い目で」


「僕も同じのを……少し薄めに」


 からん!


 ウィスキーグラスとボールアイスが軽やかな音を立てる。

 ”夜のお店”を堪能した後、僕とランはおしゃれなバーで2次会としゃれこんでいた。


 冒険の苦労話、ララやエリザちゃんのことまで……日付が変わっても、たわいのない話題は尽きることがない。

 何杯目かのウィスキーを飲み干したとき、ふとランが真面目な顔になる。


「そんで、マジな話なんだが……リーノ、オレと一緒に帝国に来てもらいたいんだ」


「激動の時代に備え、ずっと暖めていたことがあって……異世界とつながりを持ち、帝国でも有数の使い手になったお前に手伝ってほしい」

「つまりは次世代の育成……これが大事だと思うんだ」


 ここ数か月、冒険の合間に難しそうな本や書類を読み、考え込んでいる場面を何度も目撃した。

 ”帝国”の後継者の座に就くにあたり、色々悩み、考えていることもあるんだろう。


「もちろん! 親友として何よりランの相棒として手伝わせてもらうよ!」


「へへ、サンキュ!」


 ちんっ!

 何度目かの乾杯を交わす。


 詳しい話はまだ聞いていないけど、頭のいいランが長年考えてきた事が悪い話であるわけがない。

 教育か……冒険者か兵士の訓練でもするんだろうか?


 僕が帝国での新しい生活に思いをはせていると、打って変わってニヤリと悪い表情を浮かべたランが僕の肩を叩く。


「それで……バルロッツィ家のことだけどな?」

「証拠も集めたし、帝国に戻ったらオレの名前でマリノ王国に書簡を送る……まあ見てろよ?」


「??」


 世界最大最強国家、アルベルト帝国からの正式な書簡。

 ソイツが何をもたらすのか、その時の僕はまだ分かっていなかった。


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