つくろう
しかしだ、窮地は未だに脱出できてはいない。
うんこ味のスカラベからカレー味のスカラベにランクアップしたので精神的にも救われている。
体力がついたおかげで瀕死の状態から脱出できたし考える余裕もできた。
しかしだ、怪我だって回復には程遠いから脱出も侭ならない。
心の余裕が出てくると焼きスカラベにだって飽きてくる。
なんか他の食べ方がしたいぞと。
そうなんか鍋とか欲しいよね。
うーーーん
ここはやっぱりあれに頼るしかないでしょ。
そう、*聖堂の肛門*に!!
高らかに俺は叫んだ!
「クリエイト!うんこ粘土!」
いや、判ってますよ。
そんなね あれなんですよ ちょっと変なテンションってやつですよ。
「うぉ、キタキター」
「ぼにゅびゃるびゃぐももーーーん」
なんと、こってりとしたうんこがひり出されたのだ。
おれは嬉々としてその粘土に取りつく。
農家の生まれだからな陶器作りなんて当然経験している。
うんこで陶器になるのかなんて知りませんよ。
だけどね「うんこ粘土」だから。
とにかくその黄色くて滑らかなうんこを手ごねする。
ろくろなんて無いからひも状にして盛り上げていく。
所謂縄文式土器ってやつだね。
そこではたと気が付く。
これってダンジョンに吸収されちゃうんじゃないかと。
「あー無駄なろーりょく使ったわ」とうん器を投げ出す。
土じゃないからうん器ね。
暫くじっとうん器を見つめる。
しかし一向に吸収されない。
ダンジョンに吸収されないのだ。
「もももしかしてっ!」わからん、全くわからん。
むーん・・・考える。
腕組みしていた手をほどき後ろに手を付く。
じゃりっと手を付いた場所のクリスタルの欠片が音を立てる。
「ん?」
「もしかして!」こうは考えられないだろうか。
ダンジョンに吸収されるのは有機物とかダンジョンに有益な物のみなのではないかと。
土器は粘土から出来ている、ダンジョンにしてみれば土や石と同じ吸収すべき有益な物じゃないと。
いまだ吸収されないうん器を見ながらそんな推論をしてみる。
だがまあいいや、事実吸収されないなら都合がいいしな。
「ディフュッ」
さてこのままじゃダメだ焼かなければならない。
焼く前に乾燥させなければならない。
幸い*黄色い燃料*は豊富に作り出せる。
あまり考えすぎてもいけないとりあえずチャレンジだ。
そして俺はうん器を何点か作り乾燥させた。
そして*黄色い燃料*をひり出しうん器の周りに山盛りに盛って火をつける。
ひたすら*黄色い燃料*を追加する。
「そろそろいいかな」俺は燃料の追加をやめて火が収まるの待った。
そしてうん器を取り出す。
何点かは割れていたが数点は割れずに焼け残った。
よし、水を入れてみよう。
なんかちょっと染み出てくる気がするがまあいい、何とか器が出来た、鍋の完成だ。
よし、さっそくスカラベクッキングタイムだ。
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まずはお水を入れます。
お鍋を火にかけます。
煮立ってきたらスカラベを入れます。
たくさん入れます。
水をつぎ足しながら待ちます。
たくさん待ちます。
なんか出来た気がしたら完成です!
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次は実食タイムだ!!!
「あちっあちっ!」湯気の立ち上る鍋からおもむろにスカラベを一匹取り出す。
羽をもいで首と胴体をもぎ取り湯気立つ胴体を口に入れる。
もぐもぐもぐ・・・・・・・・・
なんということでしょう!焼いたスカラベのクリスピーな食感が微塵も感じられないではないですか。
これは柔らかいと固いの中間のぐにょぐにょとした食感が楽しめます。
これが煮込んだ外骨格の食感なのですね。
そしてそのお味は水で薄めた、そうひたすらに水で薄めたカレー味。
そして後から虫味がガツンとやってきます。
「う・う・旨い~~~~~~~~!!!!」
と叫びながら必死に嚥下するのでした。
そう、涙目でえずきながらね。
つづく