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とうげ

何かもやもやしているようなしていないような、そんな不快感の中俺は目が覚めた。

極上のエアリーな掛け布団は俺を安眠へと導いた、だが釈然としないわだかまりが心の奥底じゃなく手で掬えるほどの表面にべっとりしている。

うんこバーガーのパティになった気分とでも言えばいいのだろうか、そんなハンバーガーを食べる奴はいないだろうがな、ははっ。


さてそんな事よりこれから峠を越えようと思う、わが身ひとつ軽装なのでそれほど苦労はしないはずだ。

キャラバン隊からの情報だと荷馬車でも一日で峠を越えることが出来るそうだ、山の高さは現在の標高が判らないから何とも言えないが見た感じでは森林限界は越えてはいない。

森林限界は高度が上がるにつれ平均気温が下がるから樹木がその寒さに耐えられない標高が一般的に森林限界となる。

だがそれとは別の要因で森林限界が決まる場合もある、活火山なんかがそれに当たる。

別に溶岩がどろどろ流れているからじゃない、土地に栄養が無いのだ、栄養が無いのに合わせて寒さで木が育たないのだ。

活火山だってしょっちゅう大噴火している訳じゃないからね。


そんな感じで一日で越えられる峠は標高1500mから2000mほどじゃないかと推測する。

これに盗賊の襲撃に備えなければならないとはなかなかにハードモードだ。


よし体調は万全山登りと行こうじゃないか。



**********************************



峠の麓は森の中で木々が生い茂っている、その中を馬車がすれ違える街道が上へと続いている。

馬車が無理なく登坂できるようそれほど斜度はきつく作られてはいない。

とはいっても坂道であることは変わりないので多少息が上がる。なんというか程よく暖機運転をしているような感じだ、もっともこれはそのようなペースで登っているからでペースを上げれば途端にきつくなるだろう。


木々の中を過ぎる風が汗がにじむ額に心地よい、虫の鳴声や鳥のさえずりを聞きながら無心で登っていく。

前方でガラガラと馬車の木の車輪の音が聞こえてくる、身軽な俺は前を行くキャラバン隊に追いついたようだ。

ここで無言で追い越してはいけない、こちらに向かい鋭い視線を飛ばしてくるキャラバン隊に挨拶をする、「おはようございます」


「おう!おはよう」馬車の後ろを警戒していた男が返す。

男は野営地で昨晩会っている顔だと分かると警戒を解き口元が緩む。


「お先に」一声かけて身軽な俺はキャラバン隊を追い抜いていく。

やはり追い抜くという行為はペースを乱すので息が荒くなる。

追い抜く都度に挨拶を交わしていく。


なんというか重力に逆らい自分の体を持ち上げていく行為が心地よい。

かれこれ2時間ほどだろうか登り続け木々の間からほんの少し覗き見ることが出来る場所から見る下界はかなり下になる。

だが街道の幅も整備状況も変わらずとても往来しやすい。

山は天気も変わりやすいし雨が続けば山肌が緩み地すべりだってあるだろう、だが街道の排水と道路の敷設は堅牢かつ適切のようだ。

しかもこの峠を利用する者は落石など見つけた場合は発見者が除去する習わしになっているそうだ。

合理的だなそうやって自助努力で街道の整備をする事は明日の自分の為になるからだ。


山襞によっては道の曲がりもきつくなったり緩くなったりするが、山頂に近づくにつれ山襞は深く短くなる、するとつづら折りの道も短く何度も折り返すようになりカーブの内側の斜度がきつくなる。

所謂難所になるのだが二足歩行の俺にとっての難所ではない。

馬にとっても難所ではないそれは馬車にとっての難所になる、馬車の車輪は車軸で繋がっているので急カーブだと内輪差で抵抗が大きくなるのだ、ガリガリと車輪を引きずってしまう。

さらにそこに斜度が加わると馬車を押し上げるのにかなりの力が必要になる。

そのせいでこの辺りのカーブには馬車の車輪が削れた木くずが道の端に溜まっていたりする。


「ほへー」俺は間の抜けた一声を発し街道を見つめる。

そして顔を上げ上を見ると木々の隙間から空が見える、おっそろそろ峠が近そうだ。



つづく

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