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002 飽きた1月

 2020年1月初旬。この頃、2月締め切りの小説コンテストなるものの存在を知ります。その記事を見つけた時の文字数は5万字足らずでした。他にも色々開催されていたとは思いますが、その時見たのは確か10万字か12万字以上に応募資格ありと明記されており、その10万という途方もない数字は、素人の意欲を削ぐには十分でした。

 なお、短編のコンテストの存在にはこの時は気づきませんでした。


 とにかく、世に問うのは10万字以上! そう思った私は、各話の飾りつけを豪華にして行きます。要は地の文を書き足して行きました。しかし、その程度では5万字を6万字にするのが精いっぱいでした。もっと話数を増やさねばならないのは明らかです。


 ここで初めて筆が止まりました。今から2倍……。10万字という途方もない数字に身がすくみました。

 今なら6万字だったら半分まで来ているなんて見方もできますが、当時はその6万字ですら苦労の末に辿り着いた未踏の地だったのです。今通り過ぎたマイルストーンが折り返し地点だったとは。マラソンを途中棄権する理由には十分でした。

 また、年末年始で娯楽もイベントも潤沢にあり、他に目移りしてしまう環境も悪い方向に作用します。こうして急速に小説への情熱が冷めて行きました。単純に執筆に興味を失ったのです。これ以上は今の自分には書けない、当時そう思いました。




 ここまでの話で違和感を覚えた方は、よく先月の内容を咀嚼しておられます。

 前回のエッセイとの温度差が尋常ではありません。作品を世に問うとか、そもそも言っていることがまるで前回と違います。

 愚かな私はこの時、作品の完成とコンテスト応募がない交ぜになっていて、書き始めの熱い想いは一時的にですが見失っていました。どうせ同じに書くのなら何らか反響を得たい、あるいは見返りを得たいと変心していたのです。


 今振り返って当時の気持ちを自己分析すると、誰かにこの史実を知ってもらいたいという欲求が、書いただけなのに昇華してしまっていたようです。どこかで、書いても誰も読んでくれないという内容のエッセイか感想を読んだのも影響しました。そうか、マイナージャンルだったら書いても読んですらもらえないのか、と。

 ここからたった半月ではありますが、完全に手が止まりました。一度止めたのです。




 そのまま放置しようと決め込んでから半月が経ち、突然いくつかのアイデアが沸いて出ました。この時のことは良く覚えています。

 漫画家の荒木飛呂彦先生がスタンドの構想を発明した際に、金脈を発見したと感じたそうです。偉大な先生と私が同じと言うのはおこがましいですが、それと同じ感覚だと思いました。話のネタの金脈を見つけたのです。

 これでネタに関しては無尽蔵になりました。しかし、物語の主人公が貫く信条が使える範囲を大きく狭めます。その使えなくなった部分はいずれ外伝として描けたらと思っていますが、さて。本編がまだ終わっていないのに外伝とは、どれだけ先になりますことやら。


 こうして新しいアイデアを得て、話数は初期の6話から一気に16話に急増しました。一方で完成話数がまるで増えていないのは、話数をいたずらに増やして冒頭部分を四方八方に書き散らかしていたからです。これによって物語の完成と発表は遠い未来へと延期されました。


 これは執筆開始からまだひと月の時点の出来事ですが、この頃は最初に筆を執った時の崇高な目標は二の次になっていました。

 純粋な願いに押される形で一念発起し、行き詰ったのであっさり止まり、読んでもらえないと知って諦め、話のネタを思いついたので奮起して完成に向かって邁進します。今回こうして文章にしたことで、よりはっきりと自身の浅はかさを自覚できました。これはもう噴飯ものです。


 ようやく初心を取り戻せたのはこの初期6話分が完成して一通り読んだ時でした。

 読んだら泣けました。とてもいい~お話です。それはそうです、元になった史実が良いのです。

 そうだ、これを誰かに知ってほしかったんじゃないかと、ようやく目が覚めた思いがしました。しかしその時はすぐには訪れず、少し先の3月にようやく思い至るのです。




 それにしても、自分で書いたフィクションの文章に感動して涙しているんですから、これでは完全に変な人です。いくら史実を元にしているとは言っても、自分で脚色した自分の書いた文章です。

 これって他の作者の方はどうなんでしょうか? そんなのは私だけなのでしょうか、それとも他の方も同じなのでしょうか。


 泣いたのは夜中の妙なテンションだったと一度は自らを慰めましたが、数日後に、今度は昼間に推敲していたらまた同じところで……。どうやら私は重症のようです。

 (※ 半年後でも結果は同じです。だめだこりゃ)


 それでも私は、例えフィクションであったとしても、それが嘘の話であったとしても、苦労してでき上がった作品には魂が宿ると考えています。

 読まれた方が同じように感じてもらえたらと、今から願って止みません。


 話数が大幅に増えたので、主人公はより多くの困難に立ち向かう破目になりました。それ自体は物語に厚みが生まれて大変結構なのですが、その困難は一緒に事態に立ち向かう私にも同じ数だけ訪れました。

 しかし、今は完成が遠のいた事実に否定的な考えを抱いていません。ほぼ毎日の数百字、数千字がゴールに一歩一歩近づいているのを教えてくれているからです。初心忘るべからずと、言い聞かせながらゴールを目指しています。初心こそが私の全てです。




 2020年1月終了時点のデータを示します。

 完成話数            1話

 総話数          6→16話

 増加文字数      80,566文字

 延べ文字数     114,459文字

 延べ日数           45日(書いていない日を含む)

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